ちょき☆ぱたん 紙の豆知識 (chokipatan.com)
10-8-2 黄ばみやすさ(機械パルプと化学パルプなど)
紙は日光にさらされると次第に黄色(茶色)っぽくなっていきます。周囲の湿度や温度などにも影響されますが、この変化を起こす主な原因の一つとして、原料のパルプ繊維中に含まれるリグニンという物質があげられます。リグニンが日光(紫外線)によって化学変化することで、紙の黄変色が起こるのです。日光が強いほど、また曝される時間が長いほど、紙の褪色は早く大きくなります。リグニンは酸化されやすく、紫外線によってさらに酸化が加速されるため、リグニンを多く含むパルプを使用した紙ほど変色、変質(劣化)しやすいのです。
リグニンの量は、パルプの種類や製造方法によって違いがありますが、木材をそのまますりつぶして作られる機械パルプに、より多く含まれています。そのため機械パルプが多く配合されている新聞用紙や中下級紙は、黄ばみやすいのです。これに対して、光と反応しにくいセルロースの純度が高く、リグニンがほとんど含まれていない化学パルプを原料としている上質紙などは、より褪色しにくくなっています(そのぶん製造コストがかかり高価になります)。新聞紙とデパートの包装紙(上質紙)を同じ場所に置いておいたのに、いつの間にか新聞紙の方だけ黄色くなっていた、ということが起こるのはこのためです。
またその他の変色の原因として、滲み止めに使われているロジン(松脂:製紙用サイズ剤)もあげられます。これが紙の水分中の鉄分と反応して、次第に酸化し黄褐色になっていくからです。
ところで、塗工紙は表面を塗料で覆われているため、非塗工紙と比べて紫外線の影響は少なく、褪色しにくくなります。しかし塗工紙の塗料に用いられる接着剤(合成ラテックスなど)が、紫外線や空気中の酸素の作用で黄変したり、固くなることがあります。
また、視感的な白さを増す目的で、蛍光染料や着色染料を添加することがありますが、これらの染料は光に弱いので、やはり日が当たれば褪色します。
このように紙の変色(黄ばみ)は、いろいろな原因で起こりますが、この変化を少しでも遅らせるにはどうしたら良いのでしょうか。
一つは、これらの原因自体を減少させること、つまり機械パルプの使用を減らして化学パルプを使って紙を製造することなどです。
もう一つは、紙を置いておく環境を改善することで、直射日光が当たらない涼しい場所で保管するようにすることです。たとえば、博物館や美術館では、絵画・美術工芸品の褪色などを防ぐために、照明を暗くしたり、温度湿度を一定に保つなどの工夫をしています(理想的な温度は20±2℃、湿度は55±5%とされています)。温度が高いほど劣化という化学変化は進みますし、湿度が高くなるほど原因物質が溶け込みやすくなりますので、紙の褪色は速くなります。日光や蛍光灯の光の下では、それらが強いほど黄変化が速くて、時間が経つにつれ目立ってきます。逆に言えば低温で低湿、かつ暗所に保存しておけば色の変化(変色)は少なくなります。