ちょき☆ぱたん 紙の豆知識 (chokipatan.com)
10-3-4 湿度変化と紙の取扱い方法
紙は湿度で歪んだりしやすく、印刷や加工の時にトラブルを引き起こしやすいので、特に梅雨時などは、使う前に、紙の含有水分(紙間湿度)を室内の湿度に合わせておくなどの対策を行うことが必要になる場合があります。
ふつう製紙会社では、日本の年間の平均湿度(50~65%)に合うよう、紙の含有水分を5~7%にコントロールして製造し、吸放湿しないように防湿包装して出荷していますので、紙の梱包を開くのは使う直前がいいと思います。ただし梅雨時や冬場の乾燥時など、平均湿度からかなりかけ離れた湿度の時期には、使用の一日前ぐらいに袋から出して、周辺環境に合わせた方がいいかもしれません。もちろん一番いいのは、空調設備などを整えて、使用場所(印刷する場所など)の温度湿度を適切に保っておくことですが……。
印刷会社では、多色刷りでの色ずれを防ぐため、印刷をする一日前に紙を出して空気に晒しておくことで、紙全体をあらかじめ自然に収縮させてやる(シーズニング)などの対策を行ってから印刷する、ということを行う場合もあるようです。
ところで「紙の親水性」の項目で紹介した「エージング」と、この「シーズニング」の違いって何?と思われた方もいると思われますので、ここで簡単に説明します。
「エージング」とは、一定の期間、空気にさらすことで、紙の水分ムラを平均化させることです。製紙会社で抄紙された直後の用紙には、水分のムラが用紙のあちこちにあります。これを均一化するため、ある程度の期間、出来上がった紙を倉庫に寝かせて、多様な温度湿度の空気にさらし、吸放湿を繰り返させて、紙の水分ムラや歪を減らして安定させます。何度も高・低の湿度状態を繰り返していくうちに、紙の水分変化幅がだんだん小さくなって一定の値に近づくとともに、紙の伸縮程度(伸縮率)も小さくなって、紙は含有水分や伸縮程度が安定した状態になります。この状態になるのには最低でも1週間は必要で、これをエージング(熟成期間)と呼んでいます。
これに対して「シーズニング」とは、紙を一日程度その場の空気にさらして、周囲の環境湿度に合わせる(紙の水分を平衡させる)ことを言います。シーズニングによって、過乾燥の紙は吸湿させ、湿った紙は放湿させることが出来て、紙の伸縮の安定が図れるのです。
このように「エージング」と「シーズニング」はほとんど変わらないことを行っていますが、「シーズニング」は通常、用紙(製紙会社で「エージング」されてから出荷された用紙)を印刷室内の温度・湿度に合せることを言います。
その他、紙は保管する場所にも気をつける必要があります。紙は湿度や温度変化に影響されやすい素材なので、直射日光を受けない場所に置くのはもちろんのこと、浴室や台所の近くなどの湿度の高い場所や、冬場の窓辺など結露しやすい場所も避けた方が良いでしょう。