ちょき☆ぱたん 紙の豆知識 (chokipatan.com)
10-3 紙と水(湿度)
紙は、水につけるとバラバラになったり、梅雨時に湿気を吸って歪んだりと、水や湿度に敏感な性質があるので、印刷や加工時に注意する必要があります。
10-3-1 紙の親水性
紙は水を吸い取るという性質があります。例えばティッシュは90%ぐらいまで水を含むことができて、自分自身の重さの約8倍もの水を吸い取ることができます。
紙を水の中に入れると、紙をつくっている植物がばらばらにほぐれていきます。植物繊維はセルロースが主成分で、セルロースは水素結合によって結びつく性質があります。紙を構成する植物繊維がくっつき合うのは、主にこの水素結合のためなのです。水素結合は水が入るとすぐ切れるという性質があるため、防水加工していない紙は水濡れに弱く、すぐにばらばらになりやすいのです。
紙を水で軽く濡らした場合、それが洋紙の時には、一般的に、紙の縦方向を軸にしてカールが起こります(これは紙の目の方向を見極めるのに使われます)。繊維の方向性が強くない和紙のような紙の時は、カールが皿状に起こります。
このように、紙をつくっている植物繊維には親水性があり、水を少し吸うと膨張します(固く丸めたティッシュを濡らすと膨らみますよね)。水がなくても空気中の湿度が高いときには水を吸って膨張し、乾燥してくると放湿して収縮します。こういう紙の伸縮は、シートを構成している一本一本の繊維が伸縮するため起こります。繊維の縦(長さ)方向の伸縮はわずかですが、横(太さ)方向の伸縮は二十倍くらいになることがあります。
紙は表面と両面で含水率が変化すると、歪みが生じます。紙を袋から出しておくと、同じ一枚の紙でも、空気にさらされている側と、さらされていない側では、乾燥や加湿されかたが違ってきますので、だんだんカール(反り)が生じてきます。梅雨時に、重ねて置いておいたコピー用紙の一番上の紙が反ったり波打ったりしてくるのは、このためです。
この吸放湿による紙の変化は時間とともに減少するので、湿潤・乾燥のくり返しを行うことで紙のサイズが安定してきます。この作業を「エージング」と言って、紙の製造会社では製品の出荷前に紙の姿勢や寸法を安定させるために行われています。
注)親水性とは、水との間に水素結合を作ることで、水に溶解しやすいか、あるいは水に混ざりやすい性質だということです。