ちょき☆ぱたん 紙の豆知識 (chokipatan.com)
10-7 紙の密度
紙の密度(緊度)は、平滑性、不透明度、光沢度、腰、強度、紙くせなどの品質特性に影響する重要な指標です。
紙の密度は、坪量と紙厚から計算して出す単位容積当たりの質量のことで、その単位はg/cm3(立方センチメートル)で表します。単位体積あたりの物質の質量である密度(g/cm3)は、ふつうは空孔のない物質の密度(真密度)を表しますが、紙は多孔質なので、紙の密度はこの空孔(空気)を含めたものを表しており、いわゆる、見かけ密度(見かけ比重)をいいます。空気が含まれるために一定容積あたりの質量は軽くなり、密度、すなわち比重が低くなるわけです。また紙の密度は緊度といわれるように、紙の締まり具合の程度を表し、数値が大きいほど、緻密で締まり程度が大きくなります。緊度の高い紙のほど空隙率は小さくなります。つまり締まっている紙ほど、紙中に含まれる空気の比率が小さくなるわけです。
密度が低い方が嵩高でフワッとした紙となります。最近は製紙技術の進歩で、従来の印刷適性を保ちながら通常紙に比べて大幅に密度を下げた「嵩高紙」が販売されるようになり、少ないページ数でボリューム感が出るため出版業界で人気が出ています。これは省資源・物流コストの面でも優れています。
紙の密度に大きな影響を与える要因に、叩解があります。叩解による紙の特性変化は、叩解が進むにつれて紙の緊度が増して引き締まった紙質となり、裂断長、破裂強さ、耐折強さが増加しますが、反面、一般的に引裂き強さが低下します。このため適正な原料の叩解処理が重要になってきます。また、密度(緊度)が大きくなるということは、繊維同士の間隔が小さくなるということですので、湿度などが変化した時、繊維1本1本の伸縮が他に波及しやすくなって伸縮程度が大きくなります。このため緊度の高い紙ほど紙くせ・寸法安定性が劣ってくるという面もあります。
また紙は表面塗工の段階でカレンダー処理(加圧)されますが、加圧の程度が大きいほど、緊度が上がり表面の平滑性や光沢度は向上しますが、逆に不透明度は下がるので、そのバランスもまた重要になります。
※カレンダー処理:鏡面仕上げの鉄ロールで紙の表面を潰す処理のことです。