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第1部 本
ユーモア
東京近郊スペクタクルさんぽ(宮田珠己)
『東京近郊スペクタクルさんぽ』2018/4/26
宮田 珠己 (著)
(感想)
東京発、非日常行きの日帰り絶景ガイド『東京近郊スペクタクルさんぽ』の本で、東京近郊のスペクタクルな場所とされたのは、「宇都宮近郊の採石場跡の地底湖」、「利根川水系のダム」などなど。どれもとても魅力的で、しかも意外にお金もかからなそうなものばかり(笑)。
一例をあげると、「湘南モノレール」。江ノ電に乗って江の島には行ったことがあるけれど、これには乗ったことがありませんでした。この本によると、「ジェットコースター・モノレール」とも言えそうな、かなり面白そうな懸垂式モノレール。パンフレットによると、「最高速度75km/h。アップダウンの激しい土地を走るため、トンネルありカーブあり急勾配あり、遊園地のジェットコースターを思わせるアトラクション感がたまらない。」なのだとか(笑)。標高地図もあったのですが、確かにアップダウンが凄い! 一度試してみる価値はあるかも。正直、ジェットコースターは苦手ではあるけど……。
そして絶対に行ってみたくなったのが、「三浦半島の小網代の森」。
「小網代の森には、短い川ではあるが、浦の川という川が流れており、そこに森と湿原、そして干潟が広がっていて、流域全体が保護されている。文字通り都会に残された奇跡の自然なのだ。ありがたいことに、森の中には木道が設けられ、1時間半もあれば流域の生態系を全部みて回れるらしい。流域全部を1時間半!」
流域全部を1時間半! なんかワクワクしてしまいます☆
さらに、千葉県いすみ市の行元寺にある、彫り師「波の伊八」による欄間彫刻「波に宝珠」。残念ながら写真がなく、宮田さんによるホンワカなイラストでしか見られませんでしたが、この彫刻は、あの北斎の名作「神奈川沖浪裏」に着想を与えたものなのだそうです。……イラストを見ると、まさしく構図があの「神奈川沖浪裏」! 波間に見える富士山の部分が丸い宝珠になっているけど、ダイナミックな大波部分がかなり似ています! 北斎の「神奈川沖浪裏」はすごく好きな作品で、とりわけ大迫力の大波のすさまじい躍動感には、こんな構図を思いつける人って本物の天才だなーと感心していたのですが……あれには元ネタがあったのでしょうか……なんかちょっぴりガッカリなような……でも、これも見てみたいですね……。
こんな感じの、ちょっと不思議な観光ガイドです。
なかでも興奮したのは、「本物の砂漠を見に」。なんと伊豆大島の三原山の中腹、標高500メートル付近に、日本に一か所だけの本物の砂漠があるのだそうです!
とはいっても興奮したのは、砂漠ではありません(日本唯一の「砂漠」は、ちょっと狭かったのです)。砂漠ではなくて、そのそばにあった火口探検のゴンドラ!(の、レプリカ)
「1930年代の三原山噴火口」という写真によると、なんと読売新聞社が噴火口の中に有人ゴンドラを入れたのだとか! ゴンドラのレプリカには、次の説明があったそうです。
「三原山火口探検のゴンドラ:昭和初期には三原山火口への自殺者が多かった。読売新聞社は自殺者がいかに悲惨な状態になるかを世に知らせるべく、また、火口内の状態を調査する目的で、有人ゴンドラを火口に入れる計画をたてた。」
これに関して、宮田さんは次のように書いています。
「まず説明書きに添えられた写真がすごい。火口の縁からクレーンが火口上にせり出し、そこから長いワイヤーでゴンドラが吊り下がっている。噴気がクレーン近くまであがっており、ゴンドラ内は相当な暑さだったろう。火山ガスの影響も考えれば、このような密閉されていないものに乗って375メートルも降りて生きて帰れる気がしない。」
写真を見る限り、本当にそういう感じなのですが、読売新聞社は果敢に挑戦しました。岩田社会部次長が、まず火口内を探検、死体を発見するも救助できず。呼吸困難になって危険になり、ゴンドラを引き上げる……。そして第一探検者がそんな状況だったのに、さらに第二探検者の真柄写真課長が、カメラをもって降下を開始。途中、爆発(3、4回も!)が発生するなかで撮影を試みるも、火口内暗黒にて撮影困難、そして呼吸困難……で、やっぱり帰還することになったのだとか。
火口内は暗い上に呼吸困難で危険と知りながら、なんと二人も火口内に! 費用を賭けて大掛かりなゴンドラを作った以上、一人だけで撤退するわけには、いかなかったんでしょうね……このデタラメなほどの無謀さが凄い☆ でも、そもそも構想段階で「危ないからやめましょう」という提案が誰からも出なかったんでしょうか(笑)。まるでヴェルヌの『地底探検』みたい! これこそ、まさに「スペクタクル」ですが……火口に降りるのは危険すぎるから、私はもちろんご遠慮します(もちろん現在は、そんな冒険的過ぎるゴンドラはすでに存在していませんが)。
一般的な観光旅行とは、一味違う不思議なスペクタクル旅の本です。東京から近い場所ばかりですので、東京(関東)の方は、気が向いたら試してみてください(笑)。
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宮田さんの他の本、『東南アジア四次元日記』、『なみのひとなみのいとなみ』、『おかしなジパング図版帖』、『だいたい四国八十八ヶ所』、『いい感じの石ころを拾いに』、『四次元温泉日記』、『日本ザンテイ世界遺産に行ってみた。』、『日本全国津々うりゃうりゃ 仕事逃亡編』、『私なりに絶景 ニッポンわがまま観光記』、『無脊椎水族館』、『ニッポン47都道府県正直観光案内』に関する記事もごらんください。
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