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第1部 本

ユーモア

日本全国津々うりゃうりゃ 仕事逃亡編(宮田珠己)

『日本全国津々うりゃうりゃ 仕事逃亡編』2015/9/26
宮田 珠己 (著)


(感想)
 旅好きの面白エッセイスト・宮田さんの、日本全国旅行記「日本全国津々うりゃうりゃ」シリーズ第三弾です。
 今回の旅は、「オホーツク」「和歌山」「栃尾又」「立山黒部アルペンルート」「本州横断」「宮崎」「高知・徳島」「都会」。
 オホーツクでは、「流氷に乗る」体験をしています。……え? 日本でも流氷に乗れるの? と思ってしまいました。確かに写真では熊が流氷に乗っているのを見たことがありますが……それはもっと北の方で撮影したものかと……。でも日本のウトロで「流氷ウォーク」ツアーが出来るのだそうです。で、結果はというと、流氷の上に雪が積もっていて……海と陸の境が分からないとか(笑)。なるほど、確かにそうなりますよね(笑)。熊が流氷に乗っている写真みたいに、流氷が「イカダ」状態になるまで行ったら、危険すぎるし(氷の海に落ちそう)。「流氷が接岸すると知床は内陸性気候になる」のだとか。
 そして「和歌山」では「粘菌探索」とか、「栃尾又」では温泉での「文豪的カンズメ」とか、ママチャリでの「本州横断(天橋立付近から瀬戸内海まで)」とか、一味違う旅三昧。さすが宮田さんの旅は、ただの観光旅行ではありません。
 ただ……今回の旅行記、前半ではけっこう愚痴が多かったように思います。編集のテレメンテイコさんに追加されたオプション的な部分に、宮田さんは今いち気乗りがしないまま参加している感がすごくあって……でも、旅行記はバラエティに富んでいないと読み手が楽しめないし、すでに何作も旅行記を出している宮田さんなので、「本人の好み」の旅先が二番煎じになることを懸念して、テレメンテイコさんがオプション追加しているのではと推察されますし……経緯はともかく、いったん決まってしまったなら、旅は楽しんだもん勝ちじゃないでしょうか? まあ、この愚痴っぽい部分も含めて、今回も本音爆発の面白旅行記になっているとは思いますが……。その一方で、宮田さん自身が選んだ旅先は、すごく筆がのっている感じで、やっぱりこの人には、自分の好き勝手にさせた方がいいのかも?(笑)。
 さて個人的に、今回の旅行記で一番面白かったのは「都会」。スカスカした都会に行きたいと考えた宮田さんが選んだのは、「汐留再開発地区(東京)でのホテルのマッサージ・スパ体験」。汐留の再開発地区の案内板で、宮田さんが感じた「来たはいいけど何もすることがないのが、スカスカした都会の現実なのだった」という感想には、爆笑させられました。なぜなら、私自身もその案内板で、まったく同じ感想を抱いたから……どうやら「お洒落な街」というのには縁がない人間なのだなーと、絶望的に痛感させられる場所でした。宮田さんは「アウェー」感を味わいながらも、果敢にセレブ体験に挑戦します。ああー、なんか、わかるわかる、とニヤニヤさせられました。
 現地で感じたことをそのまま書いてくれるので、行ったことのない場所に、一緒に行ったような気にさせてくれるユルーい旅行記です。読んでみてください。
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 宮田さんの他の本、『東南アジア四次元日記』、『なみのひとなみのいとなみ』、『おかしなジパング図版帖』、『だいたい四国八十八ヶ所』、『いい感じの石ころを拾いに』、『四次元温泉日記』、『日本ザンテイ世界遺産に行ってみた。』、『私なりに絶景 ニッポンわがまま観光記』、『東京近郊スペクタクルさんぽ』、『無脊椎水族館』、『ニッポン47都道府県正直観光案内』に関する記事もごらんください。

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