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第1部 本
ユーモア
おかしなジパング図版帖(宮田珠己)
『おかしなジパング図版帖 -モンタヌスが描いた驚異の王国』2013/4/10
宮田 珠己 (著)
(感想)
1669年にオランダ人モンタヌスが著した『日本誌』の挿絵を中心に、「日本がフシギの国だった時代」に、外国人が想像で描いた、でたらめでほほえましい日本の地図や日本人の姿を紹介し(笑い飛ばし)てくれる本です。
昔の挿絵中心の本なので、荒唐無稽なイラスト満載で、眺めているだけで笑えます。といっても、もともとは、かなり真面目な意図で著された本のようで、日本に関する知識をもとに書かれて(描かれて)いるのですが……わりと信憑性が感じられる文章に、なにかヘンテコなイラストが添えられているという事態に……どうしようもなく、むずむずした笑いがこみあげてきます。
アルノルドゥス・モンタヌスさんは、1625年アムステルダム生まれのオランダの宣教師で歴史学者。教科書や歴史書など多くの出版物を手掛けたそうで、1669年には、オランダ使節フリシウスの『江戸参府日記』など複数の書物をもとに、『東インド会社遣日使節紀行』(通称『日本誌』)を執筆、出版しました。
この本の画期的なところは、それまで断片的にしか伝わっていなかった日本情報を網羅的に取り上げ、なおかつ基本的に文章によって伝えられていた日本を、90点以上の新しい挿絵とともに紹介したこと……なのですが、モンタヌスさん自身は日本に来たことがなかったため、そこには間違った描写や思い込み、空想に溢れた表現が多くなってしまったそうです(笑)。それでこんなツッコミどころしかないような挿絵満載の本になっちゃったんですね。
この「やっちまった」感に溢れた本を眺めているうちに、これこそが「伝言ゲームが間違った情報を伝えていく視覚的実例」ではないかとか、実はモンタヌスさんは、せいいっぱいの誠意で挿絵を描いたつもりだったのではないかとか、そもそもファンタジー小説の挿絵も、このような方法で描かれているのではないかとか、いろんな妄想が広がりました。
というのも、「もしも私が『江戸参府日記』を渡されて、その挿絵を依頼されたら、どう描くだろうか?」と想像してみたからです。すると……日本は行ったことなくて知らないけど、東洋だということだから東洋の絵が参考になるだろう……だったら『江戸参府日記』の状況に一番似た絵を東洋の絵から探して、それをベースに、文章から読み取ったもので修正してやればいい……という流れになると思われました。そういう視点から再度この本の挿絵を眺めると、まさしくその通りになっているではありませんか! インドや中国っぽい感じの絵を日本風?にカスタマイズしてあるのです(笑)。
なるほど、そうだったか。でも……日本は実在する国でファンタジーじゃないんだから、やっぱりこれは歴史学者としてはマズイですよね。だから、数百年後に「ぷっ、こんなこと書いてるよ~」と笑いものにされてもしかたないと思います。……えーと、今後の数百年後にそうならないよう、お互いに気をつけましょう(汗)。
この本は正直言って何の参考にもなりませんが(汗)、モデルが「昔の日本」なので、すごく気楽に笑えます。いやー、さすがは「世界の果て・日本」、謎の国だわ……(くすくす)。
ちなみに、本書の中で「参考までに比較されている」19世紀に来日したドイツ人博物学者シーボルトさんが描いた日本や日本人の絵と比べると、シーボルトさんの方は圧倒的にリアリティがあるのですが、真実の昔の日本は、あんまり面白くないのでした。暗いし……(汗)。
昔の日本が、(一部の)外国人にどう思われていたのかを知ることが出来る本です。ヘンテコな本が好きな方にだけお勧めします(笑)。
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宮田さんの他の本、『東南アジア四次元日記』、『なみのひとなみのいとなみ』、『だいたい四国八十八ヶ所』、『いい感じの石ころを拾いに』、『四次元温泉日記』、『日本ザンテイ世界遺産に行ってみた。』、『日本全国津々うりゃうりゃ 仕事逃亡編』、『私なりに絶景 ニッポンわがまま観光記』、『東京近郊スペクタクルさんぽ』、『無脊椎水族館』、『ニッポン47都道府県正直観光案内』に関する記事もごらんください。
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宮田さんは、他にも『はるか南の海のかなたに愉快な本の大陸がある』などの本を出しています。
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