ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)

第1部 本

動く&錯視錯覚の本

錯視錯覚技法

だまし絵のトリック

『だまし絵のトリック―不可能立体を可能にする (DOJIN選書34)』2010/9
杉原厚吉 (著)


(感想)
 不可能立体(へんな立体)の設計方法を教えてくれる本です。杉原厚吉さんは、『だまし絵の描き方入門』や、『へんな立体』、さらにはペーパークラフト本『トリック立体 キットBOOK』などで、不可能立体の描き方や、不可能立体の作り方を教えてくれましたが、この本では、実際に自分で不可能立体の設計を行うための方法を教えてくれます。
 最初に、ペンローズの三角形を例にとって「不可能立体のようなだまし絵に、なぜだまされるのか」などの七つの疑問が提示されます。その後、それらの疑問を足がかりとして、立体にできそうにない立体を可能にする方法や、単に立体化するだけではなく、動きを加えることでさらなる驚きの錯覚現象を生み出す不可能モーションまで、数式をほとんど使わずに紹介してくれます。
 ただし、これは心理学の立場から「だまし絵に、なぜだまされるか」を解明する本ではないので、錯視にまつわる生理的なメカニズムなどの説明は、ほとんどありません。あくまで数理工学者としての立場から、「不可能立体を実現するための設計」を追い求めていく本です。錯視がなぜ起こるかに関しては、『錯視と錯覚の科学 (ニュートンムック Newton別冊)』などを読んだ方が良いと思います。
 えーと、話を戻しますが、Youtubeで「なんでも吸引四方向すべり台」という動画を見たことがある人は多いと思います。あの、ボールが坂を転がり上るという(!)重力無視の不埒なすべり台の動画ですが、杉原厚吉さんはその作者です。この本の終盤の「不可能モーション」には、その解説もあるので、とても興味深いです。
 この「なんでも吸引四方向すべり台」は、アメリカで開かれた錯覚コンテストに応募した作品なのですが、その顛末記が、この本の「あとがきにかえて」に書いてあります。これが……最高に楽しい☆ 実は、だまし絵関連の本はすでに多数持っていたので、「もう、だまし絵の本はいいや。騙されるぐらい買わされた(?)もんね」と、ちょっとお腹いっぱい状態だったのですが、この「錯覚コンテスト参戦記」見たさに、またも、ふらふらとこの本を購入してしまったのでした(笑)。
 コンテストのトップ10に残り、ファイナリストとしてプレゼンの準備中に、主催者側から「このプレゼンは学術発表ではない。エンターティンメントである」と告げられた著者が、知力を尽くして(?)奮闘する様子がいきいきと描かれ、この文章自体が、最高のエンターティンメントになっています。不可能立体を実現しようなどと考える人は、本当に柔軟な発想力を持っているんですね☆ 必見です!
 なお巻末には、「なんでも吸引四方向すべり台」の展開図と組み立て方がありますので、厚紙にコピーして、実際に自分で作ってみることも出来ます。
   *   *   *
 杉原厚吉さんの他の本『トリック迷路』、『だまし絵の描き方入門』、『タイリング描法の基本テクニック』、『わかっていても騙される 錯覚クイズ』、『へんな立体』、『超ふしぎ体験! 立体トリックアート工作』についての記事もごらんください。
   *   *   *
 杉原さんは、他にも『新 錯視図鑑: 脳がだまされる奇妙な世界を楽しむ・解き明かす・つくりだす』などの本を出しています。
 また別の作家の本ですが、形の基本パターンについて、図形科学データ・応用例・描くためのCGデータを解説した本、『かたち創造の百科事典』などもあります。

Amazon商品リンク

興味のある方は、ここをクリックしてAmazonで実際の商品をご覧ください。(クリックすると商品ページが新しいウィンドウで開くので、Amazonの商品を検索・購入できます。)