ちょき☆ぱたん 紙の豆知識 (chokipatan.com)

10-1 紙の目(折れやすさ裂けやすさ)

 紙(洋紙)を扱う上で最も注意したい性質は「紙の目」です。洋紙には「紙の目(流れ目)」があり、それに沿った方向かどうかで、裂けやすさや伸縮性等が違います。紙を取り扱うときは、この「紙の目」に注意しなければなりません。

10-1-1 紙の目の出来るわけ

 紙は、機械でパルプを一定方向に流しながら製造するため、紙の進行方向に繊維が流れて整列しやすくなり、「紙の目(流れ目)」ができます。
 紙の「流れ目」に沿った方向を「順目」、「流れ目」に垂直な方向を「逆目」と呼ぶこともあります。
 なお、「紙の目」は紙を機械で一定方向に流して抄く時の「流れ目」なので、和紙のように「流しずき」で製造された紙には「紙の目」はありません。「流しずき」は、簀子を揺らしながら漉くので、縦横に関係なく繊維を流せる(繊維の方向がランダムに流れる)からです。

10-1-2 縦目と横目

 ロールの状態では常に紙の目の方向は一定ですが、平判に紙を切る時に縦横どちらの向きでカットするかによって、「縦目(T目)」と「横目(Y目)」の違いができます。
 「縦目 (T目)」とは、「紙の長い辺と平行に紙の目が流れている」という状態の紙のことです。一般的に、サイズは「横寸法×縦寸法」で表示するので、目が記されていなくても「小さい数字×大きい数字」の順でサイズ表記されていたらT目の紙になります。これに対して「横目 (Y目)」とは、紙の短い辺と平行に紙の目が流れている状態の紙のことです。Y目のサイズは、「長い辺の長さ×短い辺」の長さで表記されます。

10-1-3 紙の目の性質(1)裂けやすさ

 紙は流れ目に沿って裂けやすくなっています。流れ目に垂直の方向では反対に裂けにくいのです。

10-1-4 紙の目の性質(2)伸びやすさ

 湿り気を帯びたときには、紙は流れ目の方向だと伸びにくいのに対し、流れ目に垂直の方向だと伸びやすくなります。紙の水分による伸縮は、流れ目に垂直の方向が、流れ目の方向の2~3倍になることもあります。これは植物繊維が水分の増減で伸縮するために起こります。水を吸うと、一本一本のパルプ繊維は、縦方向(長さ方向)には1%程度しか伸びないのですが、横方向(直径方向)には30%以上伸びることがあるからです(乾燥するときには、逆に縮みます)。洋紙の場合、抄紙時に繊維は流れ方向に配列する傾向がありますから、流れ目方向よりも垂直方向のほうが湿度変化による伸縮が大きくなるわけです。
 ところで一本一本の繊維の伸びが30倍も違うのに、紙の縦横伸びの違いが2~3倍にしかならないのはなぜでしょう。
 抄紙の時に、繊維が完全に流れ目の方向に配列していれば、紙の縦横の伸縮比は単繊維の場合と同じ 1:30程度になるかもしれませんが、実際には、繊維は流れ目の方向に比較的多く並んでいる程度で、あらゆる方向に配列しているため、単繊維の時のように大きな違いは出来ずに、一般的に2~3倍くらいになるというわけです。
 このように紙は湿度で伸びるという性質があります(これについてさらに詳しく知りたい方は「紙と水」の項目を参照してください。)これを考慮しないと、印刷のときに絵柄がぼやけたり、画像がダブってしまったりする問題が発生することがあります。


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