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第1部 本

ユーモア

プリンセス・トヨトミ(万城目学)

『プリンセス・トヨトミ』2011/4/8
万城目 学 (著)


(感想)
 不思議ワールド、大阪の秘密が明かされる物語です(笑)。
 京阪神では、織田信長の不人気っぷりに対して、豊臣秀吉の凄い人気っぷりを感じていましたが、これはモロ、それです。なにしろプリンセス・トヨトミですから。
 表紙の、大阪城を背景に立つ三人のイラストを見て、「ああ、真ん中の美人がプリンセス・トヨトミね」と思ったのですが……違いました。まあ、彼女もある意味、プリンセスではありますが……。
 この三人は、東京から来た会計検査院の調査官です。
 ええ? 会計検査院だと?
 いつもの若者中心の万城目作品を期待していたので、なんか真面目で地味な感じ……ひょっとして会計検査で不正が発覚して社会不正と戦う企業戦士物? と思ってしまいましたが、このデコボコ・トリオはとてもいい味を出してくれて、ビジネス小説風(?)でも万城目ワールドは健在です。とくに鳥居のキャラクターといったら、最高☆
 彼らが今回、検査をする大阪の社団法人OJOは、鳥居いわく「におうね」、「あやしい、そこ」と断定される組織。
 そして大阪で彼らを待っていたのは……四百年の長きにわたる歴史の封印。誰も知らない大阪の秘密でした。
 プリンセス・トヨトミに危機が迫る時、大阪が全停止する!
(※ここから先は、物語の核心にふれるネタバレを含みますので、結末を知りたくない方は読み飛ばしてください)
 ……彼ら会計検査院調査官三人は、大阪で、OJOの代表の真田幸一と、その息子で女子になりたい中学生・大輔と、彼を守ってきた幼馴染の茶子に出会います。
 彼らが暮らす空堀商店街は、まさに大阪のイメージそのもの。元気でパワフル。
 対する東京から来た三人組は、冷徹に、謎の組織OJOの秘密を解き明かしていきます。
 そして次第に解き明かされてきたのは、とんでもない大阪の歴史でした。
 ……絶対にありえないわ、と思わなくもありませんでした(汗)が、今回も万城目さんお得意の歴史ファンタジーが見事に炸裂します。
 また、正直に言うと、なぜ大輔君に「女の子になりたい男子中学生」という属性をつけなければならなかったのか、(要らないよね、かわいそう)と不満に思いながら読んでいたのですが、終わり頃には、「ああ、そういうことだったの!」と納得しました。
 大輔君によって、大阪の秘密の歴史は、また変わるのでしょうか?
 それはともかく、会計検査院の三人組は、すごくいいキャラクターなので、続編が出るといいなと思います(笑)。
   *   *   *
 万城目さんの他の本、『鴨川ホルモー』、『ホルモー六景』、『鹿男あをによし』、『偉大なる、しゅららぼん』、『とっぴんぱらりの風太郎』、『バベル九朔』に関する記事もごらんください。

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