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第1部 本

ユーモア

人みな眠りて(ヴォネガット)

『人みな眠りて』2017/4/27
カート ヴォネガット (著), Kurt Vonnegut (原著), 大森 望 (翻訳)


(感想)
「ジェニー(冷蔵庫型の彼女と旅する天才科学者)」、「スロットル全開(鉄道模型オタク)」などヴォネガットさんの珠玉の短編16篇。
 没後に初公開された未発表原稿集のうちの一冊で、ボーイ・ミーツ・ガールのロマンスや、O・ヘンリー風の人間ドラマなどを中心に収録されています。ヴォネガットさん30代の頃の1950年代のアメリカの物語という古い作品で、しかも「没後に初公開された未発表原稿」ばかりだというので、正直あまり期待していなかったのですが(汗)、人間ドラマが多いせいか、時代をあまり感じさせない佳作ぞろいで、どうしてこれを発表せずに残していたんだろう?と不思議に思うほどでした。(やっぱりネタ切れに困った時のために隠し持っていたのかな?)
(※ここから先は、物語の核心にふれるネタバレを含みますので、結末を知りたくない方は読み飛ばしてください)
 今回の短編集は、ほのぼのとした読後感の作品が多いのですが、個人的にすごく楽しめたのは、もちろん鉄道模型オタクが主人公の「スロットル全開」。社会的に成功している30代半ばの主人公は、地下室でHOゲージの鉄道模型の世界を思う存分楽しんでいます、それはもう家族をかえりみないほど……。そこに実家から母親が訪れて……「わああああ!」という展開になります。このお母さん……最高なんですが……最低(最凶)です(涙)。みなさんご想像通りの展開になるわけですが、最後の持ち直し方もリアルですごく笑えます。鉄道模型ファンの方には特にお勧めです☆ ……趣味は節度をもって楽しみましょう(えー?)。
 そして心に余韻を残してくれたのが、最後の「ペテン師たち」。作風の違う二人の画家の対立を描いた作品ですが、芸術家たちの苦悩がO・ヘンリー風に描き出されていて、心にしみじみ沁みました。苦難は芸術家を育てる、のかもしれません……。
   *   *   *
 ヴォネガットさんの他の本、『プレイヤー・ピアノ』、『タイタンの妖女』、『スローターハウス5』、『ガラパゴスの箱舟』、『はい、チーズ』に関する記事もごらんください。

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