ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)

第1部 本

しかけ絵本(日本の作家)

ふしぎな たね

『ふしぎな たね (美しい数学) 』1992/08
安野 光雅 (著)


(感想)
 この本は、しかけ絵本とは言えないかもしれませんが、普通の絵本とは少し違って、数式についての意識を高められる絵本なので、ここで紹介させていただきます。
 子供の頃、算数(数学)が苦手で、「微積分とか、何の役に立つの」とか「四則演算さえできれば、買い物だってできるし、別に生活に支障ないじゃん」とか思っていました。
 でも大学生になって数学をやり直して、「微分は変化を知るのに、すごく役に立つ数式」だったんだ。そして「積分は全体の量を知るのに、すごく役に立つ数式」だったんだ!ということをはじめて実感として捉えることができました(遅いよ……)。
 この「ふしぎなたね」は、数を式で表現することの素晴らしさ、ありがたさを心の底から思い知らせてくれる、ふしぎな絵本です。
 ひとつ食べれば一年間おなかがいっぱいになり、ひとつ埋めると翌年必ずふたつ実がなる。そんな「ふしぎなたね」を手に入れたなまけものの男が、5年後、そして10年後には……。というお話なのですが、途中から数を数え切れなくなってきて、大人なら誰でも数式(掛け算、足し算、引き算)を書いて理解しようと(なんと自発的に!)したくなる、ミラクルな絵本なのです☆
 混雑した状況を簡潔に美しく整理して表現できるのが、「数式」なのですね。こんな絵本を子供の頃に読んでいたら、もっと算数が得意になっていたのでしょうか?(うーん、どうだろうか(弱気))
 お子さんに「数学なんて生活の役に立たないじゃん」と生意気を言われて、ムッときているお父さん、お母さんがいらっしゃったら、この絵本をお子さんと一緒に読んでみることをお勧めします。ただし……この絵本には残念ながら「数式」の見本は掲載されていません(少なくとも、2011年1月15日第16刷発行の本にはありませんでした)。見本があったら、自分でよく考えずに「ふーん、そうなの」で済ましてしまうという人間の本性を見抜いているからだとは思いますが、袋とじかなんかで、「正解の数式」を入れてくれたら、もっと安心して教えられるんだけどな……。とは言っても、必要な数式は、ぜんぜん難しくないので問題ないでしょう。それに「いくつでしょう」という問題の答えは、ちゃんと絵の中に書いてあります。算数が苦手な方は、たねの数を数えましょう!
 また、この絵本がさらに素晴らしいのは、「数式の大切さが分かる」だけではない、というところです。
 頭を使って自分で考えてみること、努力することで限りなく豊かになれることがあること、他の人にも分けてあげることで、みんなが幸せになれること……さらに……多くのものを失うことがあっても、またきっとやり直せることなど、読み直すたびに(読者の状況や心理状態に合わせて)、いろいろ大切なことを思い出させてくれるのです。
 仙人は、本当に「ふしぎなたね」をくれました。
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 安野光雅さんのその他の本、『旅の絵本』、『きつねがひろったイソップものがたり (1)』、『きつねがひろったイソップものがたり (2)』、『ふしぎなえ』、『空想の絵本』、『安野光雅の世界―1974→2001』に関する記事もごらんください。
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 楽しく数学を教えてくれる安野光雅さんの素敵な絵本は、他にもいろいろ出版されています。「美しい数学シリーズ」の『10人のゆかいなひっこし』、『すうがく博物誌』、『壷の中』、『赤いぼうし』、『3びきのこぶた』、『はじめてであうすうがくの絵本セット 全3巻』の他にも、『かぞえてみよう』などがあります。
 また、遠山啓さんの人気の本『さんすうだいすき 全10巻』でも、安野光雅さんがイラストを担当しています。

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