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第1部 本

地質・地理・気象・地球環境

宮沢賢治の地学実習(柴山元彦)

『宮沢賢治の地学実習』2019/9/18
柴山 元彦 (著)


(感想)
 宮沢賢治さんの作品や生涯のエピソードを引用して、そこに描かれている地学の世界をひもときながら関連する地学の基礎知識を学べる、宮沢賢治さんと柴山元彦さんの地学講座シリーズの第2弾です。第1弾の『宮沢賢治の地学教室』で学んだことを体験的に理解できます。
 宮沢賢治さんは、子どもの頃から「石ッコ賢さん」と呼ばれるほどの石好きで、岩手山に登って好物を集めたり、イギリス海岸と名付けた北上川の河床で化石の観察をしたり、故郷周辺の地質調査をしたりしていました。そうして得た地学の知識や、厳しい自然に直面して感じた畏敬や素直な驚きを、多くの作品に織り込んでいます。彼の文学が持つ深遠な世界観は、地学を通して世の中を見つめた結果、生まれたと言っても過言ではないかもしれません。
 この本は、宮沢賢治さんがさまざまな作品に埋め込んだ地学の知識を発掘しながら、それを体験的に学べる新感覚の参考書です。
 第1章は、「賢治と地学ゆかりの地を訪ねよう」。宮沢賢治さんの生涯や、ゆかりの場所が写真やイラストで解説されています。宮沢賢治さんの聖地のような場所をまとめて見ることが出来て、とても嬉しかったです。この章にも、ちゃんと「地学実習:岩手山の地形を調べよう」があって、国土地理院地図の地形図(地理院地図:電子国土web)での、岩手山の立体地形図の見方が解説されていました。
 宮沢賢治さんは、学校で地学を教えたり地学の技術者として働いていたりしたので、地学にとても造詣が深く、『銀河鉄道の夜』などの作品にも地学の知識がたくさん散りばめられています。
 第2章からは、「化石」、「岩石」、「大地の活動」、「気象と災害」、「夜空」に関する高校の基礎地学の解説とともに、実習方法(実習できる場所の紹介)があり、宮沢賢治さんの文学作品で、それに関連する記述のある箇所が、紹介(物語の一部の抜粋紹介)されています。
 例えば、「化石」の場合は、「大野市化石発掘体験センターHOROSSA(福井県)」、「瑞浪市化石博物館野外学習地(岐阜県)」、「元気村かみくげ化石発掘体験コーナー(兵庫県丹波市)」、「石川河川敷の足跡化石(大阪府富田林市)」、「久慈琥珀博物館(岩手県)」での「実習」が写真で紹介されていました。その他、化石レプリカ作りの方法の解説もあります。宮沢賢治さんの文学作品としては、『イギリス海岸』、『銀河鉄道の夜』、『楢ノ木大学士の野宿』が取り上げられていました。
『宮沢賢治の地学実習』というタイトルにふさわしく、各章のテーマごとに、全国の地学学習施設や身近な道具でできる実習の方法が数多く紹介されているので、体験学習を計画する地学教員の方には、特に役に立つと思います。「断層見学」や「地震体験」「暴風体験」など、一般の人が「地学実習」を楽しめる全国の施設や場所の紹介が多数あるので、地学好きの一般の方にとっても、すごく参考になる情報が満載だと思います。
 また宮沢賢治さんのファンの方にとっても、作品にいかに多くの地学知識が取り込まれているかを知ることで、『銀河鉄道の夜』などの作品に、これまでと違った発見や味わいを感じることが出来るのではないでしょうか。
 面白くて勉強にもなる本でした。ぜひ読んでみてください。
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 柴山さんの他の本『3D地形図で歩く日本の活断層』、『宮沢賢治の地学教室』、『宮沢賢治の地学読本』に関する記事もごらんください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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