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第1部 本
ビジネス・経営
全員経営(野中郁次郎)
『全員経営 ハイパフォーマンスを生む現場 13のケーススタディ』2017/11/2
野中 郁次郎 (著), 勝見 明 (著)
(感想)
「ハイパフォーマンスを生む現場」13例から成功の本質を学ぶことが出来る本です。
その13の事例とは、「JAL―稲盛経営に「全員経営」の神髄を見る」、「ヤマト運輸―企業の全体と部分が相似形になる」、「セブン&アイ―セブン流の「型」の徹底がヒットを生む」、「良品計画―「仕組みで動く風土」に変革して復活」などなど……。
これらの事例は、まずジャーナリストの勝見さんが事例紹介をしてくれて、その後、経営学に詳しい野中さんが解説してくれるという構成になっています。この事例がドキュメンタリー風で読みやすい上に、社員の人たちの現実に即した工夫や活動を具体的に見ることが出来るので、とても参考になり、さらに野中さんの解説によって、この事例から学べることが、より明確にできたように思います。
全体を通して言えることは、これら事例の「V字回復・高収益企業の共通点は、社員1人ひとりの自律的思考にあった」ということ。これが「全員経営」の神髄なのでしょう。
「全員経営」に必要なのは、全員に「実践知」を食み込むことで、「実践知」とは「即興の判断力」だそうです。この実践知に優れた人材には、次の六つの能力があるのだとか。
1)「何がよいことなのか」という判断基準を持ち、「よい目的」をつくる能力を持つ
2)ありのままの現実のなかで本質を直観する能力を持つ
3)「場」をタイムリーにつくる能力を持つ
4)直観した本質を概念化し、物語として伝える能力を持つ
5)あらゆる手段を駆使し概念を実現する政治力を持つ
6)実践知を埋め込み組織化する能力を持つ
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これらの「実践知」に優れた人材は、社会の変化が激しい現代社会(企業)で、最も必要とされるものではないでしょうか。
この本で紹介される13の事例では、企業が「全員経営」に変わっていった経緯をじっくり読むことが出来ます。特に「宅急便ネットワークを活用し、高齢者の生活支援を行っているヤマト運輸」や、「電動バイク日本一のテラモーターズ」の事例には、日本にも、こんなに「やる気のある人びと」が大勢いたんだなーと、なんだか感動してしまいました。
その他にも、「絶体絶命のピンチを克服・小惑星探査機はやぶさ」、「釜石の奇跡・津波防災教育」など、参考になる事例が満載です。
そして最も心に残ったのが、本書の最後に書いてあった「試す人になろう」。ホンダの創業者・本田宗一郎さんは、「おめえ、やってみたのか。ぶっ壊れても直せばいいんだ。やってみもせんで答えを出すな」と常日ごろ、部下を叱っていたのだとか。……「試す人になる」こと、さらには、みんなが自ずと「試す人」になっていく環境を作ることが大事なのだと思います。
野中さんは本書を、次の言葉で締めくくっています。
「「試す人になろう」――日本企業の再創造に向けた集合的実践知経営は、一人ひとりがこの言葉を刻むことから始まるのでしょう。」
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野中さんの他の本『イノベーションの知恵』、『知的機動力の本質』に関する記事もごらんください。
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私が読んだのは単行本版でしたが、この本にはより新しい文庫本版があるので、ここでは文庫本版を紹介させていただきます。
なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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