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第１部 本
ビジネス・仕事力向上
究極の判断力を身につけるインバスケット思考（鳥原隆志）
『究極の判断力を身につけるインバスケット思考』2011/6/1
鳥原隆志 (著)
（感想）
問題発見力・意思決定力・分析力・洞察力・創造力・対人スキル・組織活用力などを高める「インバスケット思考」のトレーニング方法を教えてくれる本です。
「インバスケットは、架空の役職になりきり、制限時間内に、未知の、未処理の案件を的確に処理するゲーム」で、「インバスケットとは、管理者の机の上に置かれている、未処理の案件の入った「未処理箱」のこと」だそうです。「インバスケットは、1950年代にアメリカ空軍で生まれたトレーニングツール」で、「短時間での的確な判断」を迫られるというイメージが強かったので、「非常事態発生の緊急時に、手元にある情報だけで最善手を考える（バスケットの中の情報だけで考える）」という意味かと勘違いしていましたが、ふつうに「管理者の未処理箱」という意味だったんですね（汗）。
「インバスケット」は「火事場のバカ力」を鍛えるためのトレーニングで、「架空の役職が緊急事態に遭遇する」想定で行うシミュレーション・ゲームのようです。だから、トレーニングでは、現実にこんな事態に遭遇したら、かなり精神的に厳しいと思われる状況が突きつけられてくるのですが、現実の「火事場」に遭遇する前に、このような仮想環境でのトレーニングを行っておけば、「火事場」での実際の処理能力を高めておけるだけでなく、冷静に判断するための心の余裕も培うことが出来そうな気がしました。「インバスケット」は、一流企業の管理職登用試験にも使われているそうですが、とても大事な技術だと感じます。
さて、この本も、大部分が「インバスケット」のシミュレーション・ゲームです。
「洋菓子店に勤務する23歳の青山みあは、ある日突然、店長の辞令を言い渡された。翌日からの海外研修を前に、60分という時間制限のなかで、未知の20案件を処理しなくてはならない窮地に陥ってしまう」という状況で、『実践問題 みあの「はじめてのインバスケット」』が始まります。
従業員が全員帰宅してしまった誰もいない店で、「ライバル店出現？」など20の案件を処理しなければならないのです。かなり大変ではありますが、回答は「４択」から選べばいいようになっていたので、意外に楽に回答できました。解説もあるので、その選択への評価も自己評価できます（「インバスケット」には正解がないので、どの選択が正しいのかが書いてないこともあります）。
「他人の立てた仮説をそのまま鵜呑みにしない」、「時間管理や安全衛生管理が守られていない可能性がある場合は、リーダーは十分に内容を把握し対策を打たなければならない」、「資料をもとにした分析、判断には陥りやすい罠が潜んでいる」など、納得できる解説がほとんどでしたが、個人的に「厳しすぎでしょ」と感じたのは、「近くにライバル店が出現するかも？」という案件で、「副店長に事実確認をする」と書いてあったこと。「情報を伝えるときには、まず情報の正確さを確認しなければならない」のは当然ですが、60分以内に20案件を処理する時には、副店長と連絡を取りあう時間はないと思います。短時間に処理しなければいけない他の案件が多数ある状態での情報確認は、「ネットで確認」できるものなど「自分一人」で行えるものに限定すべきで、他の人と連絡しあうのは時間がかかるだけでなく、思考を中断されてしまうので、処理スピードががくんと落ちてしまいます。もっとも、この案件の場合は、その場で情報の正確さを確認する必要はなく、副店長に「事実確認の上、速報してもらう」ことすべてを委任すればいいのかもしれませんが……。でも正直に言って、この副店長は、クリスマスケーキの繁忙期に休暇を希望しているのに、クリスマスケーキ予約推進リーダーには立候補するという矛盾が感じられる行動をしているので、ひょっとして「年下の若い女性店長」の失脚を画策しているのでは……という疑いを抱いてしまいました。実際にはそれは杞憂でしたが、この時点で「すべてをお任せ」していいのかまで迷わされる鬼設定には泣かされました（汗）。
ということで、現実に「みあ」の立場になったら、いろいろな意味でかなり厳しい感じがしましたが（汗）、短時間のうちに苦しんで絞り出した「解決策」を、実際の洋菓子店で試してみたいような気もしました（笑）。
現実に「火事場」に遭遇する前に、仮想体験しておくことは、決して無駄にならないと思います。管理職・管理職を目指している方はもちろん、仕事力を向上させたいと思っている方も、ぜひ読んでみてください。
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鳥原さんの他の本、『一瞬で正しい判断ができる インバスケット実践トレーニング』、『たった5秒思考を変えるだけで、仕事の9割はうまくいく』、『マンガでやさしくわかるインバスケット思考』、『いまから、君が社長をしなさい。』に関する記事もごらんください。
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この本には続編の『一瞬の判断力があなたを変えるインバスケット思考2~中級編~』もあります。また鳥原さんは、他にも『図解 究極の判断力を身につける インバスケット思考』、『世界一わかりやすい「インバスケット思考」』、『インバスケット集中講義』、『仕事は8割捨てていい ――インバスケット式「選択と集中」の技術』などの本を出しています。
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