ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)

第1部 本

教育(学習)読書

武器としての交渉思考(瀧本哲史)

『武器としての交渉思考』2012/6/26
瀧本 哲史 (著)


(感想)
 瀧本さんが京都大学で教えている「交渉の授業」を一冊に凝縮した本で、世の中を動かすための必須スキル「交渉」の仕方を学べます。
 合意を作り出す手段が「交渉」で、複数の人間が話し合って現実を動かしていくためには、このスキルがどうしても必要になります。
「交渉」か……苦手なんだよなと反射的に思ってしまいましたが、この本を読んで、自分の誤解に気がつきました。「交渉」というのは「相手の得=自分の損(ゼロサムゲーム)」のように思っていましたが、そうではないそうです(汗)。この本の中で、瀧本さんは交渉に関する5つの誤解を紹介してくれています。
・交渉の誤解その1:×自分の立場を理解してもらう、○相手の立場(利害関係)を理解する。
・交渉の誤解その2:×自分の主張をたくさん言った方が勝ち、○相手の主張をたくさん聞いた方が勝ち。
・交渉の誤解その3:×限られたパイを奪い合う、○パイという前提自体を見直してみる。
・交渉の誤解その4:×なるべく多く取ったもん価値のゼロサムゲーム、○多すぎもなく、少なすぎもなく、ちょうどいい合意点を探っていく行為。
・交渉の誤解その5:×声が大きくて押しの強い人が勝つ、○静かに相手の話を聞いて、冷静に分析できる人が勝つ。
   *
 両方が「ウィンウィン」にならなければ、そもそも交渉は合意に達しません。だから「損をした」と思う時でも、少なくともスモールウィンを得ているのだそうです(この時、相手はビッグウィン)。なるほど、そうなのかもしれませんね(汗)。
 そして交渉のテクニックとして、「アンカリング(錨)」や「譲歩」の仕方なども教えてもらえます。
「アンカリング」というのは、外国のバザールなどで欲しい商品の値段を聞くと、最初に驚くような高値を示してくるというようなテクニックで、その商品の平均価格をきちんと調べておかないと、たとえ値下げ交渉をしたとしても、最初の「アンカリング」につられて平均以上の金額を支払ってしまうことになるというようなものです。「アンカリングは、できるかぎり「高い目標」で行う」ことが普通なので、「交渉」にあたっては、事前調査を行っておかなければなりません。とにかく「交渉は事前調査が8割」だそうで、交渉対象のものに関する情報だけでなく、自分と相手の立場を事前にしっかり調査することが重要だそうです。
 なるほど……うーん、でもなー、交渉だと、相手が無茶を言うような人の場合もあるもんなーと思ってしまいましたが、この本では、「非合理的な相手との交渉の仕方」も教えてくれます(笑)。
 非合理的な主張をする人には6タイプ(価値理解と共感を求める人、ラポールを重視する人、自律的決定にこだわる人、重要感を重んじる人、ランク主義者の人、動物的な反応をする人)あるそうで、例えばその中の、「価値理解と共感を求める人」には、「共通の敵を設定して共犯関係になる」などの手法を取るとうまくいくそうです。この他にも、タイプ別に対処法を教えてもらえるので、相手の非合理的な主張に困らされた時には、参考にしてみてはいかがでしょうか。
 その他にも、交渉にあたっての注意点をいろいろ教えてもらえました。
 この本を読むと、(少なくとも関係が継続的に続く相手とは、)「交渉は「誠実」が基本」だということがよく分かりました。たとえば先ほど紹介した「アンカリング」ですが、観光客など一度きりの相手には通用するかもしれませんが、何度も交渉することになる相手に下手に使うと、「信頼できない交渉相手」という烙印を押されかねない危険なテクニックだと思います。高値で買った後に「アンカリング」されたことに気づいたら、その相手からは二度と買いたいと思わないのが人情だと思いますし、個人的には、「値下げ交渉」のような面倒な手順がそもそも嫌いなので、本当に必要なものでない限り、日常的に「アンカリング」が使われるようなバザールで絨毯や壷のようなものを買いたいとはまったく思いません。
 交渉は誠実に行いたい、そして相手にも誠実に行わせたいと思います。
「交渉」は生きていく上で、避けて通れない重要な技術です。「相手を騙して自分の取り分を増やす」方法を教えてくれる本ではありませんが、「相手に騙されず、お互いに合意できるポイント」を見つける方法を教えてくれる、とても参考になる本だと思います。ぜひ読んでみてください☆
   *   *   *
 瀧本さんの本、『ミライの授業』、『武器としての決断思考』に関する記事もごらんください。
   *    *    *
 別の作家の本ですが、『本当に賢い人の 丸くおさめる交渉術』、『プロフェッショナル・ネゴシエーターの頭の中』、『グロービスMBAで教えている 交渉術の基本―――7つのストーリーで学ぶ世界標準のスキル』、『ハーバード×MIT流 世界最強の交渉術---信頼関係を壊さずに最大の成果を得る6原則』、『ハーバード流交渉術』、『実践・交渉のセオリー ビジネスパーソン必修の13のコミュニケーションテクニック』、『弁護士が教える気弱なあなたの交渉術』、『マンガでわかる 最高の結果を引き出す心理交渉術』など、交渉力を向上させるのに参考になる本は多数あります。

Amazon商品リンク

興味のある方は、ここをクリックしてAmazonで実際の商品をご覧ください。(クリックすると商品ページが新しいウィンドウで開くので、Amazonの商品を検索・購入できます。)