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第1部 本

脳&心理&人工知能

考えるヒト(養老 孟司)

『考えるヒト (ちくま文庫) 』 2015/10/7
養老 孟司 (著)


(感想)
 意識の本質とは何か。脳と心、意識の関係を探り、無意識に目を向ける……若い読者に向けて書かれた「意識の科学」を自分の頭で考えるための入門書です。
 急速に進展した脳科学は、ヒトの認識と行動を脳の観点から次々に解明しています。しかしそれによって私たちは、ヒトとは何か、それが分かるのでしょうか?
 この本の中で解剖学者の養老さんが、「脳と心」「脳と遺伝子」「知覚と運動」「脳の中の現実」「意識と行動」「意識とことば」「意識と無意識」などの観点から、脳と心の関係について幅広く語ってくれます。
 この本は、『解剖学教室へようこそ』の続編だそうですが、基本的には『唯脳論』の解説に近いそうですし、若い読者に向けて書かれていますので、『唯脳論』はちょっと難しかったな、と感じている方(汗……私もです)にとっては、より読みやすいのではないかと思います。
 また『唯脳論』と同じように、脳の全体像(人間の認識と活動のすべて)への考察がなされていますので、「脳」や「意識」に興味のある方にとっては、すごく参考になると思います。
 内容は、「脳死」についての話や脳の解剖図、「主観である意識をどのように科学の対象にするのか」についての話など、すごく多岐に渡っていますが、個人的に特に面白かったのは、1994年から始まったアメリカの意識学会の話で、意識の問題についてどんな主張があるかを第二回の開催者が分類したものの紹介についてでした。その項目と概要だけを示すと、以下の通りになります。
 1)白衣の軍団(解剖学、生理学などの神経生理学者たち)
 2)問題はむずかしい派(哲学者のダビット・チャルマーズなど)
 3)大問題なんかない派(意識は実際にはいくつもの具体的な部分に分解される)
 4)フロッピーディスクの上の脳派(脳の機能をソフトウェアで実現してみる)
 5)認知学派(実験心理学+神経科学)
 6)炭素中心主義者(哲学者ジョン・サールなど。意識は脳が作り出す特異な性質である)
 7)創発的階層構造派(神経科学的な事象から意識が生じ、意識から分化が生じる)
 8)神秘派(脳の働きをいくら調べても、意識という体験は分からない)
 9)量子神秘派(量子も意識も神秘である。ゆえに「神秘最小限化の法則」により、この二つは同じである)
 10)瞑想派(意識が神秘なら、意識を捉えられるものは内省派であり神秘主義者であるはず)
 11)人文・民族心理派(現実生活にどんな関係があるのか、問題はそれだけである)
 12)超能力派(物質を制御する精神能力にもっと考慮すべき。超常現象が実際にあるなら、意識の研究にはきわめて重要である)
 ……意識の研究者には、かなり色々な立場の方がいるのですね(笑)。
 私個人としては、「意識」とは何かを「脳の構造」だけから解明することは出来ないと思っていますが、「意識」の研究は、人間全般への理解につながり、それを通じて、より望ましい社会や未来のあり方を考えるヒントも得られるのではないかと思います。今後も、注目していきたいです☆
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 養老さんの他の本、『バカの壁』、『「自分」の壁』、『唯脳論』、『解剖学教室へようこそ』、に関する記事もごらんください。
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 養老さんは、他にも『世につまらない本はない』、『バカなおとなにならない脳』、『DVD付 昆虫 (講談社の動く図鑑MOVE)』、『虫眼とアニ眼』などの本を出しています。

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