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第1部 本
文学(絵本・児童文学・小説)
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飛ぶ教室
『飛ぶ教室』2006/10/17
エーリヒ ケストナー (著)
(感想)
クリスマスを前にしたドイツのギムナジウム(中高一貫教育の男子校)で繰り広げられる少年たちの物語です。
『飛ぶ教室』は、物語の中で少年たちが演じるクリスマス劇のタイトルですが、その内容は主要ではなく、芝居の稽古期間中の少年たちのさまざまな行動や感情が、物語の主軸となっています。
この劇の『飛ぶ教室』を作ったのは、ジョニー・トロッツという少年で、父親にニューヨーク港からドイツのハンブルグ行の船に乗せられたのですが、ハンブルグの港に彼を迎えるはずの祖父母はなく(実はすでに亡くなっていて、彼は父親にやっかいばらいされたのでした)、結局、船長の姉に引き取られて、このギムナジウムで生活しているという、ものすごい経歴を持っています。でも、そんな悲惨な過去をものともせず、ジョニーが元気にまっすぐ成長しているということは、言うまでもないことです。なぜなら……意外なことに、作中でもあまり語られないからです、こんな主人公向きの設定なのに(笑)。残念です。
ともかく、主役となるのは、他の少年たち……家庭は貧しいけれどリーダー的な才能を発揮する秀才マルティン、臆病で他の少年たちに馬鹿にされているウーリ、ボクサー志望のマッツ、クールなゼバスティアーンや、彼らに尊敬されている先生などです。
物語はクリスマス劇の稽古中に、仲間のクロイツカムが、敵対する他校(有史以前から対立している学校)の生徒たちに拉致されてしまったことから始まります。
そして彼を救出すべく奮闘する少年たちが頼った大人は、尊敬する先生ではなく「禁煙さん」と呼ばれている男の人でした。なぜ彼らは先生ではなく「禁煙さん」に頼ったのでしょう? そして「禁煙さん」はどうやら少年たちの先生と知り合いのようなのですが、どんな関係なのでしょう? クロイツカムは無事救い出せるのでしょうか? 救出の役に立たなかった臆病なウーリは、何を考えどう行動したのでしょう?……個性あふれる少年たちの織り成す、笑い、悩み、悲しみ、憧れなどの感情が、物語の世界を豊かに形づくっていきます。
この物語が書かれたのは、1933年で、なんとナチス政権下のドイツ。この元気いっぱいの楽しい物語には、実は、命がけの警鐘が含まれてもいたのです。そして、このことは、どんな時代でも、正しいことをしようとする大人がいることを私たちに教えてくれたのでした。
ところで、本編ではあまり語られなかったジョニーについて、ケストナーさんは、「あとがき」で再登場させて、その後の消息を知らせてくれます。それはとても嬉しいことではあったのですが……、この物語に関しては、「まえがき その一、二」と「あとがき」は無くてもよかったんじゃないかなーと感じなくもありませんでした……(汗)。
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ケストナーさんの他の本、『エミールと探偵たち』、『ケストナーの「ほらふき男爵」』、に関する記事もごらんください。
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ケストナーさんは他にも、『五月三十五日 ケストナー少年文学全集(5)』、『わたしが子どもだったころ (ケストナー少年文学全集 (7))』などの本を出しています。
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