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第1部 本
文学(絵本・児童文学・小説)
絵本・児童書(海外)
地底旅行
『地底旅行』1997/2/17
ジュール・ヴェルヌ (著)
(感想)
謎のルーン文字の古文書に導かれて、地底を探検する空想科学小説です☆ 現代SFの父といわれるジュール・ヴェルヌさんの驚異的な想像力が生み出した不滅の傑作といわれる作品なので、子供の頃に読んだ方も多いと思います。これが書かれたのは、なんと1864年(江戸時代末期!)なのですが、今、読み返しても、もの凄く面白いです☆
物語は、アクセル青年の叔父で、鉱物学の世界的権威リデンブロック教授が、十六世紀のアイスランドの錬金術師が残した『ヘイムス・クリングラ(ノルウェー王侯の年代記)』を手にいれたところから始まります。その本の間から、暗号が書かれた薄汚れた羊皮紙が、床にすべり落ちました。それを解読すると……アイスランドの死火山の噴火口から、地球の中心まで降りることが出来た、と書いてあったのです。
たちまちこのメモにとりつかれたリデンブロック教授は、アクセルを引き連れてアイスランドへ直行し、そこで案内人のアイスランド人猟師ハンスたちを雇って、アイスランドの死火山の噴火口の底へと降り立ち、地球の中心をめざす旅を始めます。
(※ここから先は、物語の核心にふれるネタバレを含みますので、結末を知りたくない方は読み飛ばしてください)
この50歳代のリデンブロック教授のキャラクターが傑作です☆ 知性と暴走の塊のような人で、かなり賢いのに弱気でへたれな甥の青年アクセルとは、まったく対照的にエネルギッシュな人物です。また案内人のハンスは、寡黙ながら物凄く頼りになる人で、さまざまなピンチを、黙々と冷静に切り抜けてくれます。
彼らが繰り広げる面白くてヘンテコな珍道中、地底のトンネルを滑り降り、地底湖で闘う巨大生物に遭遇し……ユーモラスでスリリングな展開から、目が離せなくなります。
しかもこの旅行は地底の科学的探検なので(笑)、教授たちは地底のあちこちで、鉱物や化石などを調査し、計測装置で位置を確認するなど、随所随所で科学的説明がなされ、笑いながら地学や生物学的な知識まで身についてしまうという嬉しいおまけつきです☆
ただしこの物語は、江戸時代末期の頃の知識で書かれていますので、すべてを鵜呑みにしてはいけません。さまざまな突っ込みどころも満載です(笑)。
それでも、作中のリデンブロック教授の次の言葉が印象に残りました。
「科学というものはね、まちがいから成り立っているんだよ。だが、まちがえるのはいいことなんだよ。なぜなら、それによってすこしずつ真理に近づくのだからな」
この『地底旅行』は幻想の地下世界のはずなのに、具体的な記述や科学的説明が非常に多いので、まるで実際の探検紀行文のような錯覚すら感じてしまいます。それはSFの父、ヴェルヌさんに「間違いを怖れない」潔さがあるからこそ、幻想が、活き活きした現実味の感じられるものにまで昇華できたのでしょう。
突っ込みどころも含め、文句なしに面白い冒険・空想科学小説です☆
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ヴェルヌさんの他の本、『海底二万里』、『神秘の島』、『二年間の休暇(十五少年漂流記)』に関する記事もごらんください。
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ヴェルヌさんは、他にも『八十日間世界一周』、『気球に乗って五週間』などの本を出しています。
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