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第1部 本
文学(絵本・児童文学・小説)
絵本・児童書(日本)
くちぶえ番長
『くちぶえ番長 (新潮文庫) 』2007/6/28
重松 清 (著)
(感想)
誰よりも強く、優しく、友だち思いで、頼りになるやつ(くちぶえ番長)の思い出を描いた物語です。小学四年生の話なので、もちろん子供向けの話なのですが、大人が読んでも、たちまち心が子供時代に戻ってしまう凄いパワーのあるお話です☆
物語は、小学四年生のツヨシ(クラス委員の優等生)のクラスに、一輪車とくちぶえの上手な女の子、マコトがやってきたところから始まります。転校早々「わたし、この学校の番長になる! 」と宣言したマコトに、みんなはびっくり。いじめっこを蹴散らすことが出来るほど一輪車を颯爽と乗りこなし、スポーツ万能のカッコイイ女の子。でも、小さい頃にお父さんを亡くし、お母さんと一緒にお祖母さんの面倒をみているマコトは、誰よりも強くて優しい子でもあったのです。お父さん同士が親友だったツヨシとマコトは、サイコーの相棒になりましたが、その一年後に……。
風が吹き抜けていくような、とても爽やかなお話です。
なんとなく『風の又三郎』を思い出してしまいますが、この物語では、風は、不穏な揺らぎではなく、どこか暖かさのある気持ちのいい風です。
マコトは、肉体的にも精神的にも「凛」としている強い女の子ですが、くちぶえを吹く理由を知って、ますます好きになってしまいました。
この物語は、小説家になったツヨシが、一年だけの相棒で、忘れられない女の子、マコトにあてたラブレターなのです(笑)。
ツヨシは、連絡のとれなくなったマコトのことをとても心配したようですが……、大丈夫だよ、マコトみたいな子は、どこに行っても、たとえどんな状況になっても元気でやっていけるよ、と教えてあげたくなります。
だって彼女は、本当に芯から強い、一匹狼的な性格をしているから。彼女はあらゆる意味で凄すぎて、嫉妬で一時的に苛められることはあるかもしれないけれど、たぶん本人は、苛めるより、苛められる方がずっとマシだと思っているから。そういう子を、苛め続けることなんか誰にも出来ないと思う(思いたい)。彼女の周囲は、きっとそこだけ、いつも暖かいお陽さまの光が漂っているんじゃないかな、と思います☆ (ツヨシも今ではそう思っているようですが。)
こんなに凄い子と会ったことは(残念ながら)ないような気がするけど、読み進めていくうちに、小学校時代に会った、マコトほど強くはないけど、すごく優しかった子や、面白かった子の顔が、次々に浮かんできました。あの頃は、自分なりに、さまざまな悩みを抱えてはいたけれど、その悩みや苦しみも、今の自分の糧になっているような気がします(まあ、今となって振り返れば、まったくつまらない悩みに過ぎなかったんですけどね……笑)。
え? マコトがくちぶえを吹く理由は何かって?
へへへっ、気になる方はぜひ読んでみてください。とても心が温まる素敵な物語(ラブ・ストーリー?)です☆
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重松さんの他の本、『きよしこ』、『きみの友だち』に関する記事もごらんください。
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重松さんは、他にも小学校5、6年生と猫を主人公にした『さすらい猫ノアの伝説 勇気リンリン!の巻』、『さすらい猫ノアの伝説2 転校生は黒猫がお好きの巻』などの本を出しています。
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