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第1部 本
文学(絵本・児童文学・小説)
絵本・児童書(日本)
きよしこ
『きよしこ (新潮文庫)』2005/6/26
重松 清 (著)
(感想)
吃音のために言いたいことが言えず、家の都合で転校ばかりしているので、いつもひとりぼっちだった「きよし」という名の少年が、悩みながら成長していく珠玉の少年小説(連作短編形式の長編)です☆
「きよし」という名前が著者と同じなので、もしかしたら自伝的な話?と思いながら読み進むうちに、「これ、本当に自伝的な話で、架空の話じゃないといいな」と祈るような気持ちになり、読み終わって調べたら、やっぱり自伝的な話だったので、本当に嬉しくなりました。
だって……どもりがあって、「ちゃんとしゃべれんようじゃと、一生だめになってしまうけん……」と父親に心配されたことのある子が、直木賞、山本周五郎賞など数々の受賞歴のある人気作家になるんですから☆ これは、今まさに吃音に悩んでいる子供たちに、なによりの励ましになるのではないでしょうか。
この小説の「きよし」は、「カ」行と「タ」行が特に駄目で、何か言いたいことがあっても、その行の文字のない言葉を探さずにはいられません。そして……タイミングを逸して何も話さないことも、しょっちゅうです。それが、どれほどの苦難だったことか……そして、ひょっとしたら、成長につれて増加していく言葉の数と選択肢の増加が、いっそうのストレスとなって吃音に悪影響を与えていったのかもしれないなと感じました。
「きよし(重松清さん?)」には、学校の先生になりたいという希望もあったようですが、子供の頃さまざまな苦労をしてきた彼なら、きっと先生になっても多くの子供たちを励まし育てることが出来ただろうと思います。でも、もう一つの希望だったと思われる、作家になってくれて本当にありがとうと言いたいと思います。もっともっと大勢の子供たちに励ましを与えられる仕事ですから……。
ところで、小説のタイトルの『きよしこ』は「きよしこの夜」からきています。聖夜に少年が出会った「きよしこ」の言葉が、胸にしみます。
「ほんとうに伝えたいことだったら、伝わるよ、きっと」
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重松さんの他の本、『くちぶえ番長』、『きみの友だち』に関する記事もごらんください。
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重松さんは、他にも、小学五年生の少年たちを主人公にした短編集『小学五年生 (文春文庫)』などの児童文学を出しています。
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