ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)

第1部 本

ユーモア

フロスト始末(ウィングフィールド)

『フロスト始末〈上〉』2017/6/30
R・D・ウィングフィールド (著), 芹澤 恵 (翻訳)
『フロスト始末〈下〉』2017/6/30
R・D・ウィングフィールド (著), 芹澤 恵 (翻訳)


(感想)
 州警察本部の麻薬摘発合同捜査本部に制服組を応援に出したマレット署長のせいで、またしても人手不足のデントン警察署は、スーパーマーケット脅迫事件、少年少女の行方不明事件、若い女性の惨殺事件、その他もろもろの事件と大忙し……シリーズ全作品が年間ミステリランキング1位に輝いた、超人気警察小説の第6巻です。
(※ここから先は、物語の核心にふれるネタバレを含みますので、結末を知りたくない方は読み飛ばしてください)
 例によって、これら厄介な事件をまとめて担当させられるフロスト警部ですが、そこに偉そうな新任の主任警部スキナーが登場。どうやらこのスキナー主任警部、マレット署長の画策で、フロスト警部の後釜としてデントン警察署にやってきたようなのです。ついにフロスト警部が、デントン署を去る(追い出される)ときが来てしまったのか……(涙)。
 この主任警部スキナー、なんとマレット署長よりも嫌な奴なのです。事件発生で忙しくなった時とか厄介な問題が起こった時には、腹痛を起こして消えてしまうのに、手柄だけは横取りしようとするし、フロスト警部を脅迫して異動願いを書かせるし、自分の気に障る部下にはパワハラしまくるし……ホント最低の嫌な奴!
 なのに、次々発生する事件の解決を任されるのは、デントン署からあと二週間ぐらいで去ることになっているはずのフロスト警部。今回も不眠不休で働きっぱなし(涙)。部下の警察官たちも、もうすぐ田舎警察に飛ばされるはずのフロスト警部にまったく遠慮せず、どんどん仕事を持ち込んでくるのです(涙、涙)。
 今回、フロスト警部は真夜中の廃業した肉屋の店内で殺人犯と大立ち回りの末、負傷してしまっているにも関わらず、ほとんど病院にも行かず事件の解決に奔走しまくり。もっとも、フロスト警部が最も気にかけている事件は、少女の虐待殺人(殺人ビデオ)というむごすぎる事件で、さらに別の少女も行方不明になっているのですが……。でも、転任予定かつ満身創痍のフロスト警部じゃなく、腹痛のスキナー主任警部をもっと働かせろよ! と叫びたくなります。
 シリーズ最後となる今回の事件は、本当に悲惨で救いようがないし(涙)、上司二人にいびり倒されるフロスト警部も気の毒、人手不足にあえぐデントン警察署に追い打ちをかけるように目まぐるしく発生してくる事件を追うフロスト警部たち(+読者)も、どんどん疲れ切っていくのですが、どんなときでも、時と場所をわきまえずに炸裂するフロスト警部の下品なジョーク(またパワーアップしてます)が、悲惨な空気を和らげて(?)くれるのでした。
 いったいこの事件はどうなっていくの? フロスト警部は本当にデントン署から消えてしまうの? こんなボロ雑巾みたいに働かされているのに? とハラハラ、もやもやしながらも、先へ先へと読み進めずにいられません。
 くそう、マレットとスキナーめ。追い払ってしまった後で、デントン署はフロスト警部でもっていたことを、思い知ればいいんだ(でも、考えてみればフロスト警部が働きすぎるために、いつも結果的に何とか解決できてしまったことが、デントン署の深刻な人手不足問題を隠してきたのかもしれませんが……)。
 ……そして今回も、最後の最後には、厄介な事件のほとんどが決着し、フロスト警部はデントン署を……どんな結末になるのかは、読んでのお楽しみです。
 シリーズ累計85万部、全作品が年間ミステリランキング1位に輝いた、超人気警察小説の最終巻。そう、フロスト警部は、これが最終巻なのです(涙)。なぜなら作者のウィングフィールドさんが79歳で亡くなってしまったから……。このシリーズは、フロスト警部と行動を共にする「相棒」たちのキャラクターも本当に魅力的で、なのに結構、1回限りの登場で「使い捨て」にされてきて……彼らともう会えないことも、とても残念です(ただし無能で能天気なイケメン刑事モーガン、てめーは別だ)。
 遺作なのに、いつも通りのスピード感、エピソードもぎっしりの充実作品です。あのフロスト警部に、もう二度と会えないなんて、信じられない気持ちでいっぱいです(涙)。
 と、がっかりしていたら、巻末の「フロスト総括」にちょっとした朗報が。
 なんとウィングフィールドさん亡き後、遺族の許可を得たグーバットさんとサットンさんという二人組が、ジェームズ・ヘンリーというペンネームで、巡査部長時代のフロストを描く長編を発表し始めたそうです。同じぐらい面白いといいですね。
 とにかくウィングフィールドさんのフロスト警部シリーズは、面白いこと間違いなし☆ ぜひ読んでみてださい(ただし、どの作品も下品なジョーク、悲惨な事件がてんこ盛りなことだけは覚悟してください)。
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 ウィングフィールドさんの他の本『クリスマスのフロスト』、『フロスト日和』、『夜のフロスト』、『夜明けのフロスト』、『フロスト気質』、『冬のフロスト』に関する記事もごらんください。

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