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第1部 本

ユーモア

夜明けのフロスト(ウィングフィールド、他)

『夜明けのフロスト』2005/12/8
R・D・ウィングフィールド (著), 木村 仁良 (編集), 芹澤 恵 (翻訳)


(感想)
 少女失踪事件に百貨店荒し……平穏無事なクリスマスなど送れるはずもないフロスト警部のデントン警察署の大騒ぎを描いた『夜明けのフロスト』他、「ジャーロ」収録作品のなかから7編を厳選した傑作クリスマス・アンソロジーです。
 全編クリスマス・ストーリーになっている傑作ミステリー短編集。収録作品は以下の通りです。
『クリスマスツリー殺人事件』(エドワード・D・ホック)
 引退したレオポルド警部は、後輩の警部に頼まれて迷宮入りした連続殺人事件(クリスマスツリーを積んだ赤いトラックばかりを狙った事件)を調べるよう依頼され、捜査を始めますが……。
『Dr.カウチ大統領を救う』(ナンシー・ピカード)
 獣医のフランクリン・カウチが孫娘に、第二次大戦を終えた1945年のクリスマスの夜、散歩中にトルーマン大統領に偶然出逢った時の昔話をします。
『あの子は誰なの?』(ダグ・アリン)
 ドラモンド警部補が、父親捜しをしているという包帯男イライジャに出会ったことで、事件が次々に起こり始めて……。
『お宝の猿』(レジナルド・ヒル)
 クリスマス・キャロルの合唱が遠く響く夜、ダルジール警視たちは、美術品奪取とドラッグの取引が疑われる<柊の森>荘へ捜査に向かいます……。
『わかちあう季節』(マーシャ・マラー&ビル・プロンジーニ)
 市の家屋検査指導課の上級職員の収賄に関する調査結果のディスクが盗まれて、探偵マコーンたちは、クリスマスのチャリティー・パーティ会場で、それを探し出そうとします。
『殺しのくちづけ』(ピーター・ラヴゼイ)
 クリスマスのヤドリギの下で、心不全で死亡した会計事務所の共同経営者の老人に、毒殺の疑いが発覚し、クリスマス休暇中のダイヤモンド警視は、捜査の手伝いを始めます……。
『夜明けのフロスト』(R・D・ウィングフィールド)
 そして、待ってました、我らがフロスト警部☆ 真打登場ってことで、ラストを飾ってくれます。
 ……にしても、他の短編が、それなりに「静かに事件を解決する」警察(探偵)モノなのに対して、フロスト警部のデントン署は相変わらずの騒々しさ! ウィングフィールドさんは、フロスト警部に「穏やかなクリスマスの夜」を過ごさせてあげる気はまったくないようです(涙)。
 100ページという短さなのに、長編のフロスト警部物とまったく同じイメージで、せめてクリスマスぐらいはゆっくり静かに家族と一緒に過ごしたいと願っているデントン署の警察官たちには、情け容赦なく、これでもか! とばかりに、さまざまな事件がどんどん押し寄せてきます(笑)。本当に、これ100ページだったの? と驚くばかりの充実っぷり。ウィングフィールドさんの手抜きのない仕事に、頭がくらくらしそうです。
 もっとも……もはや「様式美」と言える感じの「いつも通り」の展開。今回も最重要事件(?)の犯人たちが誰なのか、途中で想像がついてしまいましたが(ドヤ顔)、それを含めて、思いっきり楽しめる作品になっています。上質なユーモア感覚(下品なギャグ?)も光っています。
 なんと今回は、フロスト警部は「休日出勤の特別加算手当」の書類をちゃんと申請しています。ああ、良かった……でも、これでマレット署長のクリスマスもぱあですね(ふふっ)。
「フロスト警部」シリーズは、超面白いけど超長い作品ばかりなので、忙しそうな友達には「読んでみて」と勧めにくい感じがありますが、「布教」の手始めには、この作品を使うといいかもしれません(笑)。逆に言うと、これがダメな人には、フロスト警部シリーズは向かないでしょう。
 この短編集は、クリスマスに発生した事件を描いた警察(探偵)ミステリーを集めたものですが、全体としては、暖かい気持ちになれる読後感のいい作品が多かったと思います。それぞれの作家の持ち味を楽しめます。個人的には、もちろん『夜明けのフロスト』がダントツです! 読んでみてください☆
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 ウィングフィールドさんの他の本『クリスマスのフロスト』、『フロスト日和』、『夜のフロスト』、『フロスト気質』、『冬のフロスト』、『フロスト始末』に関する記事もごらんください。

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