ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)
第1部 本
ユーモア
薄紫のレオタード(ゴーリー)
『薄紫のレオタード』2023/4/18
エドワード・ゴーリー (著), 柴田 元幸 (翻訳)
(感想)
ゴーリーさんがこよなく愛したニューヨーク・シティ・バレエへの思いが詰まった幸せな絵本です。
バレエが大好きなことで有名なゴーリーさんについて、「訳者あとがき」には次のように書いてありました。
「(前略)ニューヨーク・シティ・バレエを率いたジョージ・バランシンの振り付けをゴーリーが深く愛し、1950年代なかばから70年代末にかけてNYCBのほぼ全公演を観たことは、ゴーリーの生涯と芸術を語る上でのもっとも基本的な事実のひとつである。」
そして本書の最初のページによると……
「これらの絵は、リンカン・カースティンから、ニューヨーク・シティ・バレエの50シーズン目を記念して何かやってくれないかと頼まれて描いたものである(子供二人も彼のアイデア)。」
……そしてその隣のページには、毛皮のコートをまとったゴーリーさんらしい人が、両手でそれぞれ二人の幼い子供(男女)の手を握って立っている、三人の後姿が描かれています。そこには次のように書いてありました。
「作者、二人の幼い、遠縁の、
歳を超越した、全面的に架空の親戚を、
ニューヨーク・シティ・バレエ
50シーズン分に導く。」
……思わず吹き出してしまいました。
でもこの「二人の幼い、遠縁の、全面的に架空の親戚」は、歳を超越して確かに50シーズン分のバレエに導かれたようで、この次のページからは、いろいろなバレエのシーンがイラストで次々と描かれていきます。もっともそのイラストのそばにあるセリフの方は、失敗を打ち明けていたり、まったく無関係な話だったり、困ったことだったり、ばかりでしたが……(笑)。50シーズンの中には、こんな出来事もあったんだろうなーと想像してしまいました。
ちなみに『薄紫のレオタード』というタイトルは、ニューヨーク・シティ・バレエが設立当初、予算が乏しくて、どういう作品にも使い回せるからという理由で薄紫の衣装を使っていたことを踏まえているそうです(笑)。
この本はニューヨーク・シティ・バレエ側からの依頼で作られているせいか、いつものゴーリーさんより、ずーーっと毒が薄めではありますが……ニューヨーク・シティ・バレエのみなさんはどう受け止めたのかなーとちょっと気になります。でもたぶん、「あるあるネタ」や「あの時の出来事」「あの衣装」などに、心の底から面白がって笑ってくれたことでしょう。
「訳者あとがき」で柴田さんは、次のように言っています。
「大事なこと、価値あるもの自体は言葉にできなくても、その周りを最良の回り方でゆるゆる回ってみせることで、言葉にできない核心への愛を伝えることはできる。『金箔のコウモリ』にせよ、1973年に単行本化された本書『紫色のレオタード』にせよ、結果的に成し遂げているのは、まさにそういうことにちがいない。「50シーズン分」のニューヨーク・シティ・バレエを観た、すれっからしで時に辛辣な子供二人の口を通して、ゴーリーのNYCB賛歌がじわじわ浮かび上がってくる。」
『薄紫のレオタード』……バレエ好きだったゴーリーさんによるバレエのイラストを堪能できる素敵な絵本です。ゴーリーさんのファンの方やバレエ好きの方はもちろん、舞台芸術好きの方も、ぜひ読んで(眺めて)みてください☆
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『薄紫のレオタード』