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第1部 本

ビジネス・問題解決&トラブル対応

僕らはそれに抵抗できない「依存症ビジネス」のつくられかた(オルター)

『僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた』2019/7/11
アダム・オルター (著), 上原 裕美子 (翻訳)


(感想)
 スマホ、インスタ、ネットフリックス、スマートウォッチ、ゲーム、メールチェック……新時代の依存症「行動嗜癖」のメカニズムと、この「厄介な隣人」とうまく付き合っていく方法を、心理学・行動経済学者のオルターさんが解き明かしている本です。
「プロローグ」には、アップルのスティーブ・ジョブズさんが自分の子どもにはiPadを使わせなかったというエピソードと、依存症は特殊な精神的に弱い人間が陥るものだと思われがちだが、真実は違うということに続いて、次のように書いてありました。
「(前略)依存症は主に環境と状況によって引き起こされるものなのだ。スティーブ・ジョブズはそれをよく心得ていた。自分の子どもにiPadを触らせなかったのは、薬物とは似ても似つかぬ利点が数多くあるとはいっても、iPadの魅力に子どもは流されやすいと知っていたからだ。
 ジョブズをはじめとするテクノロジー起業家たちは、自分が売っているツール――ユーザーが夢中になる、すなわち抵抗できずに流されていくことを意図的に狙ってデザインされたプロダクト――が人を見境なく誘惑することを認識している。依存症患者と一般人を分ける明確な境界線は存在しない。たった1個の製品、たった1回の経験をきっかけに、誰もが依存症に転落する。」
 ……そして次のようにも……
「テクノロジー自体は道徳的に善でも悪でもない。問題は、そのテクノロジーを生み出す企業が、大衆に積極的に消費させることを意図的に狙って開発し、運営していることだ。」
 ……うーん……スマホやネット、ゲームはあまりにも便利で楽しいので、どうしても「ハマり」がちですが、それを狙って開発・運営しているのは困ったものですね……私たち自身が、ちゃんと気をつけないと……。
 さて「行動嗜癖」とは、「何らかの悪癖を常習的に行う行為」です。この「行動嗜癖」は、なんと薬物とほぼ同じものなのだとか!
「薬物やアルコールなど、なんらかのモノを体内に取り込む物質依存症と、有害な行動を繰り返さずにいられない行動嗜癖は、多くの面でよく似ている。脳の同じ領域を活性化させるし、人間としての同じ基本的ニーズによって深みにハマっていく。」
 ……同じように脳を蝕んでいくとしたら……怖いことですね。
 この行動嗜癖には次の6つの要素があり、これらが「依存症テクニック」として使われているようです。
1)目標(ちょっと手を伸ばせば届きそうな魅力的な目標)
2)フィードバック(人は行為に対する即時でランダムな反応に引きつけられる)
3)進歩の実感(段階的に進歩・向上していく感覚)
4)難易度のエスカレート(徐々に難易度を増していくタスク)
5)クリフハンガー(解消したいが解消されていない緊張感があること:人は完了した体験よりも、完了していない体験のほうに、強く心を奪われる(ツァイガルニク効果))
6)社会的相互作用(強い社会的な結びつき)
   *
 ……このうちの「進歩の実感」は私にとって最も魅力的なものの一つで、これが「行動嗜癖」をもたらすなんて……と意外に感じてしまいましたが、実際「行動嗜癖とよい習慣の差は紙一重」なのだとか。向上心があるのは良いことですが、それが自分や社会にとって悪い方向に向かったときに「行動嗜癖」になるそうです。
 また「少し高い目標」も良いものだとばかり思っていましたが、目標が私たちを「慢性的な敗北状態」にすると言われると……なるほど、それもそうだなーと思ってしまいました(笑……単純)。
 さて現在では、フェイスブック、インスタグラム、メール、ネットショッピングのような依存症をもたらすテクノロジーは、すでに一般社会の一部になってしまっています。このことについては、次のように書いてありました。
「これらすべてをシャットアウトするわけにはいかないが、だからといって対策がないわけではない。依存性のある体験を限られた範囲で許容しながら、健全な行動を促すよい習慣を根づかせていけばいい。
 行動嗜癖の仕組みを理解すれば、脅威をできる限り抑えることもできるし、むしろよい方向に活用していくことも可能だ。子どもがゲームをせずにいられなくなる法則を活用して、学校での勉強をしたくなるよう促せるかもしれないし、大人が運動にのめりこむ理由を逆手にとって、老後資金を貯める動機をもたせることができるかもしれない。」
 ……なるほど。
 この後の第1章からは、「スマートフォンは時間を奪うだけでなく、あるだけで私たち人間同士のコミュニケーション(人間関係)へ悪影響を及ぼしている」とか、「ウェアラブル端末の進化が、運動依存を加速させた(数字に縛られてしまう)」などの現状が詳しく紹介されていて……確かにその通りだなーと、ちょっと不安になりました……。
 これらの「行動嗜癖」は薬物依存に近いようですが、薬物依存について、ベトナム帰還兵の事例が紹介されていました。
薬物依存に陥った多数のベトナム帰還兵は、米国に帰ってきたら、意外にも常習から回復できた人が多かったそうです。これは「環境が変わったこと」が大きいようです。
 また依存性は、「薬物などが癒してくれると脳が学習してしまう」ことで、記憶に埋め込まれているようで、それを踏まえた回復プログラムや治療施設も生まれているようでした。
 そして「第3部」では、次のような「新しい依存症に立ち向かうための3つの解決策」が示されています。
1)予防はできるだけ早期に(1歳から操作できるデバイスから子どもを守る)
2)行動アーキテクチャで立ち直る(「依存症を克服できないのは意思が弱いから」は勘違い)
3)ゲーミフィケーション(依存症ビジネスの仕掛けを逆手にとって悪い習慣を捨てる)
   *
 ここでは、例えば「デジタル断食」として、「デジタルデバイスの介在しない体験が感情を読み取る力の向上につながった」などの効果が紹介されています。
 また「行動アーキテクチャで立ち直る」方法には、次の2つがあるそうです。
立ち直りの方法1)誘惑から切り離された環境をデザインする。
立ち直りの方法2)誘惑が避けられないなら、それをごまかす方法を見極める(「まぎらわせる」には効果がある)
 さらに「よい習慣と健全な行動を促す環境のデザインこそ最良の予防策」というアドバイスとともに、「人は、「自分の人生を自分の意思で進めたい(自律性)」、「家族や友人と確かな絆を形成したい(関係性)」そして「周囲に影響力をもっていると感じたい(有能性)」という3つの根幹的なニーズにかかわる場合に、自主的に行動を起こしやすい」とも書いてありました。
 先に「行動嗜癖とよい習慣の差は紙一重」と書きましたが、私たちのこの「依存症へのなりやすさ」を逆手にとって、子どもたちのために「学習をゲームにする」などの試みがなされているそうです(効果をあげているようです)。
『僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた』……スマホやネットなどによる新時代の依存症「行動嗜癖」のメカニズムと、この「厄介な隣人」とうまく付き合っていく方法を教えてくれる本でした。テクノロジーが主導する時代に、豊かで充実した健全な生き方をするために、知っておきたい解決策だと思います。みなさんも、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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『僕らはそれに抵抗できない「依存症ビジネス」のつくられかた』