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第1部 本
最新版 論文の教室(戸田山和久)
『最新版 論文の教室: レポートから卒論まで (NHKブックス 1272)』2022/1/25
戸田山 和久 (著)
(感想)
累計28万部のロングセラー「論文書き方本の最終兵器」を10年ぶりにアップデート。作文のヘタな大学新入生を主人公として、彼が書いたダメ論文を「Aプラス論文」へ改善するまでのプロセスを追いながら、論文の基本からアウトラインの作り方、草稿のまとめ方、仕上げ方までを、分かりやすく具体的に教えてくれます。
さらにこの10年間の環境の変化をふまえて、資料探し・情報検索の方法についての詳しい解説と、明快で読みやすい論文を書くための文章指南パートを大幅に増量したそうで、主な内容は次の通りです。
第1章 論文の宿題が出ちゃった!
第2章 論文には「問いと主張と論証」が必要だ
第3章 論文にはダンドリも必要だ
第4章 論文とは「型にはまった」文章である
第5章 論文の種としてのアウトライン
第6章 そもそも論証ってどういうこと?
第7章 「パラグラフ・ライティング」という考え方
第8章 わかりやすい文章を書くために
第9章 最後の仕上げ
巻末豪華五大付録
A 論文提出直前のチェックリスト
B 論文完成までのフローチャート
C ここだけのインサイダー情報:論文の評価基準
D 「禁句集」――作文ヘタ夫くんの使いがちな表現トップテン+α
E おすすめの図書など
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「はじめに」には、次のように書いてありました。
「本書の基本的な主張は、論文はアウトラインを膨らませて書くものだということ。論文の命は論証にあるということだ。」
……ということで、この本では、論文の書き方だけでなく、主張の説得力を高めるための「論証」のテクニックについても分かりやすく説明してくれます。まさに『最新版 論文の教室: レポートから卒論まで』のタイトルにふさわしい内容で、とても参考になりました。私が学生のころには、このように親切な「論文の書き方」の本はあまりなく(涙)、「門前の小僧」方式で、他の人の論文をたくさん読んで、その書き方の真似をして書いた覚えがあります。今はこんなにも役に立つ本があるんですね……。
この本は論文の基本から仕上げまで、一通りをみっちり教えてくれます。ところどころに論文作成の鉄則が、全部で36個書いてあります。その一部を紹介すると、以下のような感じ。
・鉄則1:自分を高めるための手段として論文書きを位置づけよう
・鉄則2:辞書に投資を惜しんではならない
・鉄則3:剽窃は自分を高めるチャンスを自ら放棄する愚かな行為だ。誇り高く生きたいなら、決して行ってはならない(注:剽窃には、丸写し、自己剽窃(複数の授業に同じ論文を出すなど)、無断借用などがある)
・鉄則5:論文にはつぎの三つの柱がある
1)与えられた問い、あるいは自分で立てた問いに対して、
2)一つの明確な答えを主張し、
3)その主張を論理的に裏づけるための事実的・理論的な根拠を提示して主張を論証する。
・鉄則8:結論の正しさにこだわるな。重要なのは論証の説得力だ。
・鉄則9:論文とは自分の考えを普遍化された形で書いたもののことだ。
・鉄則10:論文は第三者にチェック可能なものでなければならない
・鉄則14:卒論の出来は問題を絞ることができたかで99%決まる
・鉄則16:型を身につけるにはまず真似をするのが一番。
・鉄則27:自分の論証をより説得力のあるものにできるかどうかは、自分で自分にどれだけツッコミを入れることができるかにかかっている。自分の議論が批判されるとしたら、それはどこなのかを見極めて、あらかじめ批判に答えるよう努力しよう
・鉄則28:トピック・センテンスはパラグラフの先頭に置くのがパラグラフ・ライティングの基本である。
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……などなど。このうち鉄則3は、生成AIにもあてはまりそうな気がします。苦手な論文書きを、生成AIに任せてしまいたくなる気持ちは分かりますが、論文書きは「自分を高める」せっかくのチャンスなので、「誇り高く生きるため」にも自分で書きましょう。とくに大学生の方は、社会に出てからもレポートを書く機会はたくさんあるので、能力を高めておく方が有利になると思います。
論文の構成要素とは、次の5つだそうです。
0)タイトル・著者名・著者の所属機関
1)アブストラクト(要約)
2)本体(問題提起・主張・論証)
3)まとめ
4)注、引用・参考文献一覧
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この本は、「論文の書き方」の解説もとても役に立ちますが、論文に必要な「情報の調べ方」についても具体的に教えてくれて参考になります。そのごく一部を紹介すると……
・図書館の利用法:国会図書館のリサーチ・ナビなどのパスファインダーを使う
・百科事典の利用法:関連項目を辿って読む、索引巻を活用する、参考文献を知る
・本格的な資料探しのノウハウ:大学図書館ウェブサイト。OPAC、レファレンスコーナー、CiNii Books、CiNii Articles、国立国会図書館サーチ、Google Scholar、学会誌のアブストラクト、政府統計の総合窓口、教員に聞く、などなど。
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すごく参考になる情報満載で、論文の書き方を良く知らない大学生でも、この本の教えに従って論文を書けば、ぐんとレベルアップした論文に仕上げられること間違いなし!
しかも実践的に学べるよう、随所に練習問題(全部で17題。巻末に解答あり)もあります。
さらに「巻末豪華五大付録」もすべてが役にたつ内容でした。
A 論文提出直前のチェックリスト
B 論文完成までのフローチャート
C ここだけのインサイダー情報:論文の評価基準
D 「禁句集」――作文ヘタ夫くんの使いがちな表現トップテン+α
E おすすめの図書など
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ただ……この「巻末豪華五大付録」という表現でも分かるように……随所にしょうもないユーモアが散りばめられていて……真面目な人ほどイラっとくるかもしれません(苦笑)。でもイラっときて読むのを中止してしまうのは、とてももったいないです!
作文のヘタな大学新入生のダメ論文が、最後には大きく変貌していくのは感動的でした……もっとも、どっちも戸田山さんが(たぶん)書いているんですけどね(苦笑)
『最新版 論文の教室: レポートから卒論まで』……すべての大学生が、持っていて損はない本だと思います。貧乏な学生さんのために、研究室に一冊備えてあると嬉しいと思います。学生のみなさんはもちろん、論文を書く機会がある方も、ぜひ読んでみてください。だんぜん、お勧めです☆
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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『最新版 論文の教室』