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第1部 本
生物・進化
図説 歯からみた生物の進化(後藤仁敏)
『図説 歯からみた生物の進化』2024/10/4
後藤 仁敏 (著)
(感想)
歯を切り口に、生物の進化の歴史をオールカラーでビジュアル豊かに解説してくれる本で、主な内容は次の通りです。
1 歯の起源――歯はサメのウロコから由来した
2 サメ類の歯――“ジョーズ” の歯の原始性と特殊性
3 サカナ(硬骨魚類)の歯――歯の多様性の実験台
4 両生類の歯から爬虫類の歯へ――歯の上陸史
5 爬虫類の歯から哺乳類の歯へ――捕食から咀嚼へ
6 食虫類の歯から霊長類の歯へ――虫食から果実食へ
7 人類の歯の進化と退化――猿人から新人まで
8 人類の歯の未来――現代人から未来人へ
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「1 歯の起源」によると、「歯は、脊椎動物の顎上にあり、食物摂取の役割をもつ、おもに象牙質からなる器官である」と定義されているそうです。
そして歯の起源を探ると、5.4億年前の古生代初期のコノドントに行き着くようでした。
歯の進化の過程では、新しい形質の獲得により、次のような大きな変化が5つ認められるそうです。
1)無顎類から顎口類(サメ類)への進化:顎と歯の獲得
2)軟骨魚類から硬骨魚類への進化:内部骨格が骨で構成されるように
3)魚類から両生類・爬虫類への進化:水中から陸上に移行するために、歯冠の表層が間葉性のエナメロイドから上皮性のエナメル質になる
4)爬虫類から哺乳類への進化:変温から恒温、卵生から胎生へ。歯に切歯、犬歯、小臼歯、大臼歯の区別が生じる。
5)人類:二足歩行、道具利用。料理によって顎と歯が役割を奪われ、歯が退化し始める
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歯は進化上、大きな役割を果たしてきたようで、次のようにも書いてありました。
「(前略)顎と歯の獲得は脊椎動物を積極的で活動的な動物に変身させ、その後の進化と繁栄の道を切り拓くいしずえを築いたといえよう。」
この本は「歯」だけでなく、生物がどのように進化してきたのかも総合的に解説してくれるので、とても勉強になりました。
ところが私たち人類の歯は、なんと退化しているようです。
「7 人類の歯の進化と退化」によると……
・「(前略)食虫類から霊長類へと進化するにともなって、植物食わけても果実食さらには雑食への適応が起こり、臼歯の形態は昆虫のキチン質の殻を切断するとともにすり潰すのに適応したトリボスフェン型から、植物の草や果実を食べるのに適した鈍頭歯型へと変化した。からだの大型化にともなって、歯の数は減っても歯のサイズは大型化した。」
・「(前略)植物食に適応して大きな臼歯をもつパラントロプス属は120万年前に滅び、石器の使用によって肉食に向かったホモ属は、ハビリスからエルガステル、エレクトクスへと、顎と歯を小さく退化させる方向に進化していった。」
……どうやら私たちは、道具と火の使用で「料理」ができるようになったことで、歯の役割を減らしてしまったようなのです。
さらに「8 人類の歯の未来」では、学生の歯の継続的調査を行ったところ、ほとんどの学生で第三臼歯が欠如していて、今でも退化傾向が見られることが紹介されていました。
でも歯は、脳にとって大事な役割を果たしているようで……
・「(前略)歯で食べ物を咬むことによって食べ物の性質を脳に伝え、脳の発達を促すことも知られている。」
・「(前略)歯の萌出と乳歯から永久歯への歯列の交換とともに、咀嚼機能が発達するだけでなく、脳も発達し、全身が成長するのである。」
……うーん、ちょっと心配になりますね。そして次のようにも書いてありました。
「今、人類が顎と歯を失うことはたんに咀嚼機能を失うだけでなく、生命力さえも失うことになりかねない。歯と顎の健康をまもることは、人類の豊かな食生活と生命力を維持していくためになくてはならないことといえよう。」
……歯は大事にしたいものですね……。
『図説 歯からみた生物の進化』……歯も含めた生物の進化について、イラストや写真をまじえて詳しく解説してくれる本でした。興味がある方は、ぜひ読んでみてください。
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『図説 歯からみた生物の進化』