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第1部 本

地質・地理・気象・地球環境

大陸の誕生(田村芳彦)

『大陸の誕生 地球進化の謎を解くマグマ研究最前線 (ブルーバックス B 2259)』2024/4/18
田村 芳彦 (著)


(感想)
 地表の岩石はすべてマグマが冷え固まったもの(火成岩と総称される)で、マグマの大部分は地下の岩石(マントル)が溶けたもの……それでは大陸地殻の安山岩をつくるマグマは、マントルでどのようにして生じるのか? 火成岩研究をライフワークとする岩石学者の田村さんが、その謎を解き明かしてくれる本で、主な内容は次の通りです。
序章 岩石学者なのに“海の研究所”に入ってみた
第1章 大陸とは何だろう?:地球の層構造を知ろう
第2章 地殻の材料はどうやって生まれる?:マグマの生成条件を知ろう
第3章 大陸地殻の材料はどこでできる?:安山岩マグマの生成条件を知ろう
幕間章 溶けるのか、溶けないのか?:岩石の融点について熱力学で考えよう
第4章 西之島は大陸の卵か?:大陸生成モデルを検証しよう
第5章 最初の大陸はいつできたのか?:40億年の歴史を復元しよう
終章 岩石学者が大陸と生命の起源を考えてみた
   *
「序章」で次の6つの謎が問いかけられ、続く各章でこれらの謎への答えが示されていきます。
1)大陸とは何か?
2)マグマはいかにして生じるか?
3)大陸の材料ができる条件は何か?
4)地球ではいま、大陸の材料はつくられているか?
5)最初の大陸はいつ生まれたのか?
6)生命はどこで誕生したか?
   *
「第1章 大陸とは何だろう?:地球の層構造を知ろう」では、地球の地殻が、大陸地殻(主に安山岩からなる厚さ30~50kmの層。質量の60%をシリカが占める)と海洋地殻(主に玄武岩からなる厚さ5~7kmの層。質量の50%をシリカが占める)の二種類で構成されているなど、地球の層構造について詳しく知ることができました。
 地球上で最も多く存在するのは火成岩(マグマが冷え固まってできる岩石)で、地表で急激に冷え固まると火山岩に(シリカ量%が多い順から、流紋岩、デイサイト、安山岩、玄武岩)、地下でゆっくり冷え固まると深成岩に(有色鉱物の割合が少ないと花崗岩、多いと斑れい岩)になるそうです。
 続く「第2章 地殻の材料はどうやって生まれる?:マグマの生成条件を知ろう」では、固体のマントルが溶けて液体のマグマになる条件について、詳しい解説がありました。
 岩石の溶かし方には次の3種類があるそうです。(注:ソリダス=固体の溶けはじめの温度)
1)加熱融解:加熱して岩石の温度をソリダスまで上げる
2)減圧融解:岩石を地下深部から上昇させると融けることがある
3)加水融解:マントルに水が加わるとソリダスが数百℃下がってマグマを発生させやすい
   *
 そしていよいよ「第3章 大陸地殻の材料はどこでできる?:安山岩マグマの生成条件を知ろう」。
 ここでは大陸地殻のもとなる玄武岩マグマと安山岩マグマの生成について……
「(前略)水を含んだマントルが高い圧力で部分融解すると、シリカの少ない玄武岩マグマが生成します。一方で、低い圧力(1GPa以下)で部分融解すると、シリカに富む安山岩マグマが生成します。」
 ……と書いてありました。1GPaになるのは地球内部の深さ30km付近だそうで、これより深いと玄武岩マグマ、浅いと安山岩マグマになるようです。
 そして、マントルダイアピル(マントルウェッジ内の部分融解したマントルのかたまり)が形成され上昇する過程については……
「マントルウェッジは沈み込むプレート(スラブ)から水を受け取り、水の一部は含水鉱物をつくります。含水鉱物は、通常のかんらん岩を形成するかんらん石や輝石よりも小さな密度をもちます。さらに、水をふくんだかんらん岩の融点は劇的に低下するので、部分融解を起こします。含水鉱物を含み、部分融解したマントルは周辺のマントルよりも密度が小さいので、浮力を得ます。それがマントルダイアピルとして上昇します。」
 ……と書いてありました。
 さらに「第4章 西之島は大陸の卵か?:大陸生成モデルを検証しよう」では、西之島が教えてくれた安山岩生成モデルが紹介されています。
 西之島の安山岩は、日本列島上の火山が噴き出すマグマのつくる安山岩とは別物なのだとか。西之島の溶岩のもとになったマグマは、再融解で生じたものでも、マグマだまりで混合されたものでもなく、かんらん石を含むもの(初生マグマ)だそうです。
 これは…‥
1)地殻が薄い(圧力が低い)ところでは、初生マグマ(かんらん石を含む未分化マグマ)として安山岩マグマが生成する。
2)地殻が成長して30km以上の厚さになると、その下のマントルでは玄武岩マグマが生成する。
 ……ということで、深いマントルしかない伊豆弧では玄武岩マグマしか生成しませんが、西之島の下のマントルでは安山岩マグマと玄武岩マグマの両方が生成するそうです。
 そして「第5章 最初の大陸はいつできたのか?:40億年の歴史を復元しよう」では……
「大陸をつくる安山岩は、西之島のように地殻の薄い海底でのみ生成します。その安山岩は、プレートどうしの衝突時にリモービライズし、玄武岩質の下部地殻と分離されて集積します。プレートの衝突帯が、“大陸の完成の場”だったのです。」
 ……と書いてありました。
 さらに「終章 岩石学者が大陸と生命の起源を考えてみた」の最後では、生命誕生の舞台がどうできたかに関する次のような仮説が……
・生命誕生の舞台が整うまで
1)40億年以上前:マントルが熱く厚い海洋地殻が形成
2)約40億年前:マントルが冷めて薄い海洋地殻が形成
3)沈み込み帯で安山岩マグマが生成→海洋島弧の地殻が形成
4)海洋島弧の上部・中部地域が集積→大陸地殻が形成
5)やがて大陸地殻が沈み込もうとするが、浮力を受け停止→上盤プレートが隆起しマントルが噴出
   *
『大陸の誕生 地球進化の謎を解くマグマ研究最前線』……地球には海があるからプレート運動が始まり、マグマから大陸をつくる安山岩が生成された……地球表面を構成する岩石やマントル、マグマについて詳しく学べる本でした。6つの謎に導かれながら、興味津々でどんどん読み進められます。とても面白くて勉強にもなる本だったので、地学が好きな方は、ぜひ読んでみてください☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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『大陸の誕生』