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第1部 本
地質・地理・気象・地球環境
知っておきたい地球史の重大イベント40(古儀君男)
『現地調査で実感! 知っておきたい地球史の重大イベント40 ~世界自然遺産が伝える地球の成り立ち~ (ビジュアルはてなマップ)』2024/5/7
古儀 君男 (著), 竹内 章 (監修)
(感想)
46億年におよぶ地球が辿ってきた歴史から重大な40のイベントを取り上げて、世界自然遺産に刻まれる地球の成り立ちを写真やイラストで解説。古儀さんが実際に足を運んで調査した地球の奥深さ、魅力についてまとめた本で、主な内容は次の通りです。
第1章 プレートテクトニクス
第2章 大陸の衝突と分裂
第3章 生物の進化
第4章 先カンブリア時代
第5章 古生代
第6章 中生代
第7章 新生代
「はじめに」には、次のように書いてありました。
「本書ではまず、地球のしくみと地球史の重要なイベントをピックアップし、250カ所を超える自然遺産の中からそれらが垣間見える場所62カ所(一部文化遺産を含む)を選んだ。地球最古の岩石や化石、全球凍結など、地球にとって重要なイベントを記録する場所を欠いているとはいえ、世界の自然遺産から多くのことを学ぶことができる。」
……ということで、この本は、海洋プレートが生まれる中央海嶺や、沈み込み帯、進化論を生み出したガラパゴス諸島、20億年前の隕石衝突痕のフレデフォート・ドーム、地球に酸素を大量供給したシアノバクテリアの化石のあるシャーク湾など、地球史をつくってきた重要イベントの「現場」を写真と解説でじっくり見せてくれるのです☆
まず「第1章 プレートテクトニクス」では、「01 海洋プレートが生まれる中央海嶺」として、ほとんどは海底にある中央海嶺を珍しく陸上で見られる「シンクベトリル(アイスランド)」の写真がありました。「北米プレートとユーラシアプレートは1年に2cmの速度で離れていく」そうです。
そして「02 海洋プレートが衝突して沈み込む火山帯」は……
「プレート境界の1つであるプレートの衝突・沈み込み帯では海溝や大山脈が形成される。
海溝は海面下にあり直接の観察は難しいが火山活動を通してプレート衝突のエネルギーを実感することが出来る」
……その現場として、エオリア諸島(イタリア)や知床(日本)などが紹介されていました。なお日本の硫黄山は、「世界的にも珍しいイオウからなるマグマを噴出した山」なのだとか。
さらに「05 プレートテクトニクス理論の発展」では……
「グロス・モーン国立公園(カナダ)はアパラチア山脈の北東延長上に位置する。ここで見られるさまざまな地質現象はプレートテクトニクス理論の発展に貢献した。
公園内では超大陸の形成と分裂の証、地質時代の境界を示す国際模試露頭、U字谷とフィヨルドの美しい氷河地形などが見られる」
……プレート衝突の証の1つが、地表に露出したマントル(かんらん岩)で、北海道日高山脈の南端のアポイ岳でも同じようなことが起きているそうです。
続く「第2章 大陸の衝突と分裂」の「06 大陸どうしの衝突」では、「インド亜大陸とアジア大陸の衝突で出来たヒマラヤ山脈」について……
「これら(ヒマラヤ)の山並みは起源の異なる地層岩石からなり将棋倒しのように積み重なっている。しかもお互いは低角度の逆断層(衝上断層)で接する。そしてそれぞれ、大ヒマラヤは非常に固くて急崖を形成する片麻岩、小ヒマラヤはインド亜大陸に由来する先カンブリア時代の地層とゴンドワナの地層、そしてシュワリーク丘陵はヒマラヤから運ばれてきた砂や泥からなる。」
……とありました。
また「アフリカ大陸とヨーロッパ大陸の衝突でできたアルプス山脈」については……
「アルプス山脈のでき方を紐解く上で欠かせない場所がある。スイス東部のサルドナ地殻変動地域だ。
ここでは延々と続く水平な面を境に地層が上下逆転、地層は下位のものほど古いという法則に反して上位の地層の方が2億年も新しい。(中略)
その結果、チューリヒ工科大学の教授だったエッシャーは、逆転する地層の境界は断層(衝上断層)であり、上位の古い層は遠く離れた断層の上を滑ってきて現在の位置に収まった、と解釈。見事にアルプスの成り立ちを説明した。」
……そうです。なんと「マッターホルンの山体の上半分の片麻岩は遠くアフリカに起源を発し、断層の上を滑ってきたもの」なのだとか!
そして「第4章 先カンブリア時代」からは、地球の歴史に沿って、大イベントの現場(その証拠が残っている場所)が次々紹介されていきます。
そのトップバッターは、「第4章 先カンブリア時代」「13 隕石衝突と原始地球の誕生【冥王代・原生代】」。隕石衝突などで地球は形成されていったようですが……
「地球は46億年前に誕生したが、その当時の様子を探ろうにもその後の地殻変動や浸食作用によって痕跡は失われている。
20億年前の隕石衝突痕のフレデフォート・ドーム(南アフリカ)から原始地球誕生のヒントが得られる。」
……ということで、この「隕石衝突の証拠」は……「シャッターコーンとは衝突に伴う衝撃波で岩石にできる円錐形の条線。この発見によって隕石衝突説が確定した。」なのだとか。
その後の地球は、シアノバクテリアによって酸素が供給されたり、生物が誕生し多様性を広げていったり、隕石が衝突したり、巨大火山が噴火したりと……さまざまな重大事件が起こっていくのでした。そして人類にとっても大事件が……。
「第7章 新生代」の「38 超巨大噴火―人類への脅威【第四紀】」によると……
「世界の人口は今80億に迫りつつある。しかし人類の遺伝子を調べると、人口の割には多様性を欠いているという。その原因は、7万年ほど前に環境が激変し人口がいっ気に減少したことにあるらしい。現代人はその危機をかろうじて生き延びたひと握りの集団の子孫だからではないかというのだ。
ちょうど7万4000年前にスマトラ島のトバ火山で第四紀最大の噴火があった。この噴火で放出された大量の火山灰と火山ガスが日射を遮り、急激に気温が低下。火山の冬とよばれる地球の寒冷化が人類を存亡の危機に追いやったとするとつじつまが合う。」
……えええ! 超巨大火山の噴火で旧人類が絶滅に追いやられた可能性があるんですか!
そしてなんと! 過去に2回も超巨大噴火を起こしてきたイエローストーンは……
「イエローストーンの噴火の休止期間はそれぞれ80万年、66万年だ。最後の噴火は64万年前。現在は次の超巨大噴火がいつ起きてもおかしくない時期にさしかかっている。」
……だそうです。もしかしたら再び人類を絶滅に追い込むほどの超巨大噴火が近づいているのでしょうか?(怖っ)
『現地調査で実感! 知っておきたい地球史の重大イベント40』……地球史の重大イベントが起こった現場のフルカラー写真を眺めながら、解説を読むことができる素晴らしい本でした。分かりやすいイラストでの解説も豊富で、地学や地球史が好きな人にとっては、お宝になるような本だと思います。このような「地学的な現場」は世界中に広がっている上にアクセス困難な場所も多くて、これらの写真は本当に貴重なものだと思います(ありがとうございます☆)
この他にも「エディアカラ動物群の化石が鮮明な状態で残されており、当時の生態系を理解する上で欠かせない場所の「ミステイクン・ポイント(カナダ)」」や、「カンブリア爆発(生物の急激な進化)を見せるバージェス動物群の化石が見られる「カナディアン・ロッキー(カナダ)」」など、地学や進化の本でよく話題になる有名なイベントの現場写真をフルカラーでたくさん見ることが出来ました。
とても興味津々な話題が満載な上に、解説も充実していて勉強にもなるという、素晴らしい本です。みなさんも、ぜひ読んで(眺めて)みてください。お勧めです☆
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『知っておきたい地球史の重大イベント40』