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第1部 本

社会

初めて学ぶ 都市計画(第三版)(饗庭伸)

『初めて学ぶ 都市計画(第三版)』2024/3/22
饗庭 伸 (著), 鈴木伸治 (著), 野澤 康 (著)


(感想)
 初めて学ぶ人を対象に、都市計画に携わる専門家となるための知識を基礎から分かりやすく教えてくれる本で、主な内容は次の通りです。
第1章 都市計画を学ぶ
第2章 都市と都市計画
第3章 都市の構成と土地利用計画
第4章 建築物のコントロール
第5章 地区スケールの計画・ルール
第6章 都市の再生と交通システム
第7章 都市と自然
第8章 市街地開発事業と都市再生
第9章 都市と防災
第10章 都市の景観まちづくり
第11章 参加・協働のまちづくり
事例都市(カラー) 25事例
   *
「第1章 都市計画を学ぶ」には、次のように書いてありました。
・「都市計画の仕事は、建築と土木にまたがる専門分野であるが、個々のビルト・エンバイロメントの詳細を設計する仕事ではなく、全体を調和的に統合していく仕事である。」
・「(前略)都市を制御しようとする法や制度が都市計画である。」
・「土地所有者の権利が強いわが国では、土地利用の変化のすべてを細かくコントロール出来るわけではないが、その変化の流れを整え、大まかに方向付けることによって、都市空間を整えていく役割をもっているのが土地利用という制度である。」
 また「第3章 都市の構成と土地利用計画」によると、都市計画をするにあたっては、まず都市の密度、後背地との関係、用途の配置、都市核・都市軸によって都市の構造を把握する必要があるそうです(※後背地=都市施設を利用するお客さんの居住地)。
 そして土地利用計画に関する都市計画制度としては……
1)都市計画区域マスタープラン、都市計画マスタープラン
2)土地区分 開発許可
3)用途地域に代表される地域地区
4)地区計画 特定街区
5)立地適正化計画
 ……などがあるようでした。
 そして「第4章 建築物のコントロール」によると……
「(前略)市街地を構成する要素は都市基盤施設(インフラストラクチャー。以下インフラ)と、建築物に分けることができる。
インフラとしては、道路及び上下水道等のライフライン、公園・緑地、河川・水路、その他の公共施設があげられる。」
 ……ということで、ベースの規制手法として「用途地域」がある他、密度の規制(建蔽率制限、容積率制限、敷地面積最低限度)などがあるようです。
「第6章 都市の再生と交通システム」では、
「都市圏での交通システムの計画では、都市圏の人口規模・分布と交通機関の機能分担を考慮して、最も費用対効果が大きい交通機関の組み合せと、そのネットワーク形状を考えることが重要である。」
 ……ということの他、コラムに次の情報もありました。
「駅前広場は利用客数の予測値に応じてその必要面積を算定するルールがある。しかし、物理的に必要面積を確保できない場合には、例えば仙台駅のようにペデストリアンデッキを設置して二重構造とする場合もある。」
 ……関東でも、駅の出入口に広いペデストリアンデッキのある駅がいくつかありますが、それは利便性の向上だけでなく、こういう事情があったんですね……。
 さらに「第11章 参加・協働のまちづくり」によると……
「(前略)都市計画は、政府が計画を決めて実行する上意下達型のものから、政府、市民、民間が相互にコミュニケーションをはかりながら、それぞれのできることを出し合って実現していくものへと変わってきた。」
 ……という状況に変わってきているようです。
 その「参加・協働型のまちづくり」の意義としては……
1)質の高い都市計画・デザインを行う
2)紛争の回避
3)都市計画に正当性を与える
4)コミュニティをつくる
  *
 そしてその計画プロセスとしては……
1)初動の段階(課題の調査や共有、関連する主体の調査)
2)構想や方針を考える段階
3)実際の事業の計画を考える段階
4)事業を実施する段階
 ……なのだとか。
 この他にも交通システムや自然環境、防災や景観など、都市計画について総合的に学べました。
 しかも、それだけでなく、本書の後半には、かなり詳しい「事例都市(カラー) 25事例」があり、とても楽しい町歩きルートが地図・説明付きで紹介されています(それぞれ2~3時間程度で歩き終われるよう設定)。
 例えば最初の「1)札幌都心部(札幌都心を歩く(札幌駅発、180分))では、
「大通公園は、札幌都心の最も重要なオープンスペースである。明治の札幌建設当初の計画により、北側の官用地と南側の民地を隔てる火防帯として整備された。戦時中は畑にされたこともあるが、常に市民憩いの空間として、またさまざまなイベント空間として活用されている。」
 ……などの「へえー」情報を地図・写真付きで眺められるので、実際に町を歩くときのガイドブックになると同時に、眺めるだけのバーチャル散歩も楽しめます。
 その25事例は次の通りです。
1)札幌都心部
2)函館、小樽
3)弘前、黒石
4)仙台
5)東京都心部:神田・丸の内
6)多摩ニュータウン
7)世田谷:下北沢、梅ケ丘、三軒茶屋
8)横浜都心部
9)川越
10)長岡
11)金沢
12)富山中心部
13)小布施
14)名古屋都心部
15)京都
16)大阪都心部
17)神戸
18)高松
19)広島
20)福山市鞆の浦
21)松江
22)福岡中心部
23)北九州市門司港
24)熊本中心部
25)鹿児島
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 広島のMAZDA Zoom-Zoomスタジアム(広島市民球場)の地下には、防災に備えた「大洲雨水貯留地」が整備されているとか、鹿児島県庁の18階展望ロビーから市街地を一望できるとか、お役立ち情報もたくさんあります。
『初めて学ぶ 都市計画(第三版)』……私たちの生活にも(意外に?)密接に関わっている「都市計画」について総合的に学べる本で、とても勉強になりました。建築・土木に関わっている方はもちろん、一般の方にも、とても参考になると思いますし、町歩きが趣味の方にとっては、ちょっと変わった視点からの散歩が楽しめるステキな教科書です。みなさんもぜひ読んで(眺めて)みてください。お勧めです☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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『初めて学ぶ 都市計画(第三版)』