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第1部 本
絵本づくり
ゆるりと、ひとり出版社、はじめました(阿笠透子)
『ゆるりと、ひとり出版社、はじめました』2024/9/26
阿笠透子 (著)
(感想)
ひとり出版社を始めた阿笠さんが、苦労話を含め、そのノウハウを詳しく教えてくれる本です。
出版社をひとりで始めることが出来るとは想像もしなかったので驚きましたが、出版業は、他の専門家の力を借りることが出来る業界のようです。
「出版業は、全てアウトソーシングの優れた業態である。抜群に優秀な編集者、感性豊かなデザイナー、細かなチェックの校正者、熟練の印刷所等(後略)」
……そうだったんですか。
そしてご自分の経験から、本つくりで大変なのは、本のタイトルを決めることと本の装丁だったこと。多忙な校正者への校正依頼や販促も大変だったことなどを明かしてくれます。
本の原価計算についても……
「本の原価計算は、本体価格に発行部数を掛けて、それに取次の掛け率を掛けて、2で割る。利益を確保するためには、売上金額の半分程度を原価とすることが鉄則らしい。」
……すごく具体的で、とても参考になりました。
そして本を売る方法は、一般的には取次と契約して、取次経由で書店等に本が卸されるようですが、この取次との契約が最難関のようで、次のように書いてありました。
「出版科学研究所のデータでは、2023年度の書店数は全国で1万店余り。それらの書店に何冊配本するかを決めるのが取次で、売れ残った場合に書店から本を回収し、出版社に戻す返品の流れも取次が行う。さらに、書店から購入代金を回収して出版社に払うのも取次なのだ。つまり、取次は流通だけでなく、お金の流れまでを含んだシステムを構築している巨大なシステムであり、取次を通さないとこれらの流通は出来ないことになる。」
……取次契約で多くの苦労をした後、阿笠さんは、日販アイ・ピー・エス(出版流通代行事業システム)という会社を見つけ出したそうです。その時の話がとても参考になったので、以下にその一部を抜粋紹介します。
日販アイ・ピー・エスの担当者によると、通常の発売までの流れとしては……
「(前略)まず、本の内容や予想定価、発売時期などを伝え、最適な販路や部数規模を擦り合わせる。この作業に約1~2カ月かけるという。
多くの場合、発売3カ月前には取引条件を協議することになる。諸々の取引条件があるが、まずは個人ではなく法人であること。また一定の部数が見込めそうなことなどが挙げられる。それから、正味(掛率)や、歩戻し(委託販売手数料率)、手数料を決めて、支払サイトを含めた内容を詰めて、契約書を交わす。あとは印刷会社から出来た本を、所定の日時に納品先へ搬入するだけである。出版流通で必要なISBNコード、書籍JANは、出版社の方で取得する。」
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そして販売などは……
「日販アイ・ピー・エスが窓口となることで、グループ会社の日販をはじめとするトーハンや楽天ブックスなどの様々な取次へ納品され、国内約1万の書店や約5万8千店舗のコンビニエンスストア、アマゾンや楽天ブックスなどのオンライン書店へ流通・販売できるようになる。さらに本の内容によっては、東アジアや欧米など海外の販売も可能。取次や書店との窓口対応や書店からの注文の対応も業務の一環であるため、在庫管理から精算業務までの出版流通に関わる全てを運用するシステムを構築していると説明を受けた。」
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……ひとり出版社のような小さい会社の強い味方のようです。
阿笠さんはこの他にも「シェア型書店のパサージュ」なども利用していて、ご自分の経験で「良かったと感じた方法」を惜しげもなく教えてくれるのです。
この「シェア型書店」は、「本を売りたい人に棚を貸し出す方法」なので、「壁に空きスペース」がある喫茶店や飲食店、洋服や雑貨のお店でも、試す価値がある方法のように感じました。
本が好きで自分の出版社を作ってみたい人や、小さな書店を始めたい人には、とても参考になる本だと思います。ぜひ読んでみてください。
なお著者が参考にした本として、『ひとり出版入門: つくって売るということ』(宮後優子:著)が本書内で紹介されていたので、以下の商品リンクでは、この本も合わせて紹介しています。
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『ゆるりと、ひとり出版社、はじめました』
『ひとり出版入門: つくって売るということ』