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第1部 本

生物・進化

教養のための植物学図鑑(福田健二)

『教養のための植物学図鑑』2024/7/30
福田 健二 (監修), 久保山 京子 (著)


(感想)
 学術的な観点に基づき撮影した精細な写真とともに、一つ一つの植物種に最新の植物学の知見に基づく確かな解説をつけた植物学図鑑で、主な内容は次の通りです。
第1部 知る
1. 植物の分類体系
(1)生物の分類と分類階級/ (2)学名と和名/ (3)分類体系
2. 植物の生態と生活形
(1)生育環境による分類/ (2)休眠型による分類 / (3)「樹木」と「草」のちがい/ (4)木本の分類/ (5)草本の分類
3. 葉と茎
(1)葉とのつき方(葉序)/ (2)葉のつくり/ (3)葉身の形/ (4)単葉と複葉/ (5)葉脈/ (6)毛(トライコーム)/ (7)葉の付属物/ (8)葉の質感/ (9)変わった形の葉/ (10)特殊化した葉やシュート
4. シュートと樹幹
(1)生育形とシュートの形/ (2)シュートの伸び方,枝の分かれ方/ (3)枝と冬芽の観察/ (4)幹のつくり/ (5)幹の形状変化
5. 花と果実の観察
(1)多様な花序/ (2)花のつくり/ (3)果実/ (4)種子散布/ (5)被子植物の系統関係から見た花や果実の特徴
第2部 観察する
1. 道路沿いの植物
イチョウ/ユリノキ/スズカケノキ/モミジバスズカケノキ/ケヤキ/ソメイヨシノ/ベニバナトチノキ/ハナミズキ/ヤマボウシ/オオムラサキツツジ/コニシキソウ/タチアオイ
2. 公園や庭の植物
ヒマラヤスギ/アカマツ/クロマツ/タイサンボク/マテバシイ/ウメ/ビワ/サルスベリ/ザクロ/ツバキ/トチノキ/イロハモミジ/コノテガシワ/ジンチョウゲ/ガクアジサイ/ヤマブキ/シロヤマブキ/マユミ/ドウダンツツジ/アセビ/キンモクセイ/クチナシ/フジ/マツバボタン/ヒオウギ/ジャノヒゲ
3. 森の植物
コブシ/クヌギ/コナラ/シラカシ/エゴノキ/アオキ/ハナイカダ/ツタ/キヅタ/ノブドウ/ヤブラン/クサギ
4. 空き地、荒地の植物
ドクダミ/ススキ/チガヤ/ツユクサ/ムラサキツユクサ/ラスウリ/ナガミヒナゲシ/ヒナゲシ(ポピー)/キツネノボタン/ヨウシュヤマゴボウ/カタバミ/ヤブガラシ/シロツメクサ/カラスノエンドウ/クズ/ヘビイチゴ/オランダイチゴ/ユウゲショウ/ナズナ/コバノタツナミソウ/ヒヨドリジョウゴ/キキョウソウ/セイタカアワダチソウ/コセンダングサ/キュウリグサ/ワスレナグサ
5. 池や川辺の植物
スイレン類/ヨシ/ヒメガマ/ジュズダマ/ミズカンナ/キショウブ/ハス
   *
 フルカラーの美しい本で、特に「第1部 知る」では、植物の特徴を詳しく解説するための植物の各部のクローズアップ写真が多数掲載されていて、あまり注目したことのなかった部分の写真にとても興味津々でした。
『教養のための植物学図鑑』というタイトルに相応しく、普通の植物図鑑ではあまり見たことのないほど専門的な知識まで解説してくれます(しかも分かりやすい写真とともに)。
 例えば「2. 植物の生態と生活形」では、「樹木」と「草」の違いについて……
「植物学では、樹木を「木本植物」、草を「草本植物」といい、木本植物とは、地上部が何年も生存し(永年性)、幹が「二次組織」を形成して年々太くなる(肥大成長する)植物と定義される。一方、草本植物は地上部の生存期間は通常1年以内と短く、その間に開花、結実して枯死し、肥大成長しない。」
 ……なるほど、そういう分け方だったんですね。
 また「4. シュートと樹幹」では、そもそもシュートって何? と思ってしまいましたが、「1つの葉原基からつくられた茎と葉の全体をシュートという。」そうです。
 よく見られるシュートの形には、次の4種類があるのだとか。
1)ロゼット:地下茎がごく短く、根際から多数の根生葉をつける。根生葉が放射状に集まってつく形をロゼットという。
2)匍匐枝(ストロン):シロツメクサやイチゴのように茎全体が地面を這い、節から葉や根を出すもの
3)走出枝(ランナー):匍匐するシュートの一種で、ストロンのように節ごとに根を下ろさずに匍匐枝を伸ばすもの
4)つる:茎を細く伸ばし、自立せずに他の植物の幹や壁を頼って高所に上り光を受けるシュート
   *
「植物、特に樹木はシュートが伸び、枝分かれをして植物体をつくる。」そうです。
 ここで面白かったのが、「(3)枝と冬芽の観察」。すっかり葉が落ちてしまったあとの1本の枝の写真があり、その枝の下の方にいくつかの凸凹がついているのですが、これは「芽鱗痕」だそうです。
「冬芽を保護する鱗状の芽鱗が脱落した痕を芽鱗痕といい、年枝の境目を知る手がかりとなる。芽鱗痕から次の芽鱗痕までが、1年間の伸びである。」
 ……へえー! 枝の下の方にある凸凹の数で、その枝が何年伸びているのかが分かるんですね!
 こんな感じで、植物について、かなり専門的なレベルの知識が、その特徴をよく示している写真とともに詳しく解説されているので、とても勉強になりました☆
「第2部 観察する」では、都会で普通に見られる85種の植物について、学名、和名の由来、四季折々の姿、花・果実・種子の特徴、人との関わりなどが、カラー写真とともに詳しく解説されています。
 例えば「1. 道路沿いの植物」のハナミズキには……
「基本解説:北アメリカ原産の落葉中高木である。明治期に東京市長の尾崎行雄がアメリカにサクラの苗を寄贈し、ワシントンD.C.のポトマック河畔に桜並木が整備されたが、その返礼として大正元年(1912年)にアメリカから日本にハナミズキ苗が贈られた。以来、各地で街路樹や庭木としてよく植栽されている。」
 ……とありました。ハナミズキは、サクラのお礼にアメリカから贈られた木だったんですね☆
 また「2. 公園や庭の植物」では、クリスマスリースによく使われる、バラの花に似た形をした乾いた木の実「シダーローズ」が、ヒマラヤスギの球果の先端部分だったことを知りました。この球果は、最初に先端部(シダーローズ部分)が落ち、その下に残った成熟した種子を載せた種鱗が、果軸を残して1枚ずつばらばらになって飛散するそうです。
 この他にも、「カエデは「カエルの手」の意」とか、「アジサイは、ガクアジサイをもとに花序全体がほとんど装飾花になるように改良された園芸種」とかの豆知識もたくさんありました。
『教養のための植物学図鑑』……少し重いフルカラーの大型本で、価格が4000円+税もしてしまいますが、充実した内容の素晴らしい図鑑でした。植物やガーデニングが好きな方は、ぜひ読んで(眺めて)みてください。
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 この本には、姉妹編の『教養のための植物学』もあります。
 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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『教養のための植物学図鑑』

『教養のための植物学』