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第1部 本

地質・地理・気象・地球環境

くらべてわかる 岩石(西本昌司)

『くらべてわかる 岩石 (くらべてわかる図鑑)』2023/8/2
西本 昌司 (著), 中村 英史 (写真)


(感想)
 日本で見られる主な岩石30種を解説し、色や粒のサイズ、含まれる鉱物の違いなどを解説。フルカラーの拡大写真と豊富なバリエーションで、拾った石が比べて分かる『くらべてわかる 岩石 (くらべてわかる図鑑)』で、 内容は次の通りです。
本書の使い方
用語解説
はじめに
岩石観察の道具
岩石観察の5つのポイント
岩石を構成する主な鉱物
岩石の成り立ちと分類
本書で扱う岩石一覧
本書で扱う岩石の検索表
第1章 火成岩
(花崗岩/ペグマタイト/アプライト/花崗閃緑岩~トーナル岩/石英閃緑岩~閃緑岩/斑れい岩/かんらん岩/流紋岩/デイサイト/安山岩/玄武岩)
火成岩の見分け方
第2章 堆積岩
(凝灰岩/礫岩/砂岩/泥岩/石灰岩/チャート)
堆積岩の見分け方
第3章 変成岩
(ホルンフェルス/結晶質石灰岩/粘板岩~千枚岩/片岩/片麻岩/角閃岩/蛇紋岩/マイロナイト/シェードタキライト)
変成岩の見分け方
街中で見かける石材図鑑
全国ジオパークマップ

「はじめに」には次のことが書いてありました。
・「(前略)山に露出している岩にしても、川原に転がっている石にしても、その顔つきはさまざまで、ひとつとして同じものはありません。」
・「(前略)本書では、おおまかな岩石の種類ごとに、見かけが違う標本の写真をいくつか掲載することにしました。これにより、同じ種類の岩石にどんな見かけのバリエーションがあるのかを示すことができて、調べたい岩石と似ている標本写真を見つけやすくなるだろうと考えました。」
 ……まさしく、その通りです。翡翠で有名な糸魚川に行った時、川原に降りてみましたが、どれが翡翠なのか、まったく分かりませんでした。もっともミネラルショーに行っても、「ラベル」が付いていない石は、ほとんど見分けることが出来ないので、当たり前なのですが……(苦笑)。
 えーと、本書には、翡翠のような宝石系の石はほとんど出ていません。花崗岩とか砂岩とか、風景の中でよく見かける、ごく普通の岩の見分け方を教えてもらえる本です。……そういえば、残念ながら花崗岩すら見分ける自信がありません。花崗岩がごろごろしているはずの広島の景勝地(ガイドブックにそう書いてあった)でも、どれが花崗岩なのか(もしかしたら、すべてが花崗岩だったのかもしれませんが)分からなかったのです。花崗岩というのは、白くて、ところどころに黒雲母がゴマ粒のように入っている岩石標本のような花崗岩というイメージがあったのですが、その場所に多かったのはベージュ系の単色っぽい岩ばかりだったので……でも、この本を読んだら、もしかしたらあれは、アプライト(花崗岩の一種)だったのかも、と思ってしまいました……。
 このように、この本では、花崗岩だけでも、たくさんの色や形があることを写真(産地名付)でじっくり見ることが出来ますし、花崗岩がどんな鉱物で構成されているかとか、類似種との違いなどの解説も読むことが出来ます。
 また、冒頭には岩石に関する基礎知識の解説もあるので、それもとても勉強になります。
 岩石観察の5つのポイント、岩石を構成する主な鉱物などの一通りの基礎知識の後に、「岩石の成り立ちと分類」としては、大きく分けて次の3種類があることが書いてありました。
1)火成岩(マグマが固まった岩石)
2)堆積岩(砕屑物や生物の死骸などが堆積した岩石)
3)変成岩(火成岩や堆積岩が熱や圧力で変性した岩石)
  *
 そしてこの3種が各章として、図鑑の本文が始まります。
 まず「第1章 火成岩」のトップバッターは、先ほどの「花崗岩」。
 花崗岩とは、「粒揃いの鉱物が集まった深成岩の代表選手」で、「深成岩の中で、無色鉱物のうち石英の割合が20~60%で、長石(アルカリ長石+斜長石)のうちアルカリ長石が10~65%のもの。通常3~10%の雲母を含む。地下深くにあるマグマだまりがゆっくりと固まってできた岩石」などの解説とともに、10個以上のバリエーションの写真が、拡大写真や、濡らした時の状態なども交えて掲載されていました。これを見ると、自分が川原で拾った石が、どれに近いのかを、じっくり「比べる」ことが出来ると思います。
 ただ……花崗岩(火成岩)に似ている石は、すごく多くて、片麻岩(変成岩)なんか、花崗岩に本当にそっくり……。
 その一方で、同じ流紋岩のグループでも、マグマが流れて縞模様になっているのがはっきり分かる流紋岩だけでなく、なんと黒曜岩(黒曜石)も流紋岩の一種だということを知って……うーん、岩を見分けるのって、とても難しいことなんだなーと痛感させられてしまいました。
 ちなみに「流紋岩(ネバネバのマグマが急冷して固まった火山岩)」には、次のような解説がありました。
「火山岩のうち、シリカ分を70%以上含み、アルカリ分が少ないもの。粘性の高いマグマが固まってできる岩石で、鉱物の割合としては深成岩の花崗岩に相当する。つまり、花崗岩質マグマが地表近くで急冷した火山岩と言える。化学組成からみて「流紋岩」であっても、組織や構造の違いにより軽石、黒曜石、溶結凝灰岩などと呼ばれ、それは成因の違いを反映している。」
 ……うーん、私には、「比べて」も分からないかもしれない……(涙)。
 それでも、花崗岩や斑れい岩、流紋岩、玄武岩、凝灰岩、砂岩など、よく聞く岩の解説と、たくさんのバリエーションを写真で見ることが出来て、地学好きにはお宝になるような素敵な本でした☆
 各章の扉写真にも、火成岩などの岩がつくる絶景写真が使われていて、とても見ごたえがあります。
「第1章 火成岩」は三重県熊野市楯ケ崎の風景、「第2章 堆積岩」は和歌山県すさみ町の風景、「第3章 変成岩」は埼玉県長瀞町の風景の写真で、どれも素晴らしい風景なのですが、なかでも驚かされたのが和歌山県すさみ町の海岸。次のように書いてありました。
「和歌山県すさみ町の海岸にあるフェニックス褶曲と呼ばれる大規模な地層の褶曲」
……これ、本当に布団を折りたたんだように見える地層の写真なのです! プレート運動の力、凄まじいですね!
 また巻末には、「街中の石材図鑑」があって、ビルなどの石材に使われている岩(石材)の写真と、どこで見られるかが書いてありました。
 例えば、「ピンクポリーニョ(スペイン・ガリシア州のピンク色の花崗岩)」という素敵なピンク色の花崗岩は、三茶パティオ(東京都)、横浜美術館(神奈川県)、電気文化会館(愛知県)で見ることが出来るそうです。
 また「蛇紋岩(埼玉県皆野町)」は、日本橋三越本店や旧前田家本邸(東京都)に使われているのだとか……こういう場所なら、お子さんと一緒に見学に行きやすいと思います。
『くらべてわかる 岩石 (くらべてわかる図鑑)』……日本で見られる主な岩石30種を解説し、色や粒のサイズ、含まれる鉱物の違いなどの多様なバリエーションを見せてくれるだけでなく、岩石観察のコツや検索表、石の成り立ち、石を構成する鉱物図鑑など、岩石観察の初心者に役立つ情報も学べる本でした。地学が好きな方は、ぜひ読んで(眺めて)みてください。お勧めです☆
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『くらべてわかる 岩石』