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第1部 本
地質・地理・気象・地球環境
地球科学者と巡るジオパーク日本列島(神沼克伊)
『地球科学者と巡るジオパーク日本列島』2021/9/2
神沼 克伊 (著)
(感想)
動的な地球の動きがわかるジオスポットが詰まった日本列島について、火山や湖水などの地形ごとに章を分け、代表的な例と共にその歴史や仕組み、見どころを紹介してくれる本です。
『地球科学者と巡るジオパーク日本列島』というタイトルだったので、日本各地のジオパークの紹介ガイドブック的な内容を期待したのですが、日本列島全体を俯瞰して、各地形ごとに代表的な例をカラー写真とともに紹介してくれる本でした。
「第3章 火山」では、新しい知見についても、次のように紹介されています。
「日本列島の火山は、どの火山もプレートが地球内部に沈み込むときの摩擦熱によって岩石が溶かされて生じた「マグマ」が噴出したものとされていました。しかし、21世紀に入る頃から、沈み込むプレートに含まれる水によって、マントルの岩石が部分溶融してマグマが生じると考えられるようになりました。海溝に沿って存在する火山列を「火山フロント」とよびます。」
……えー、そうだったんだ。マグマは摩擦熱によるものかと思っていました……。また、かつての那須火山帯、富士火山帯という分類は意味がないことがわかってきて、東日本火山フロント、西日本火山フロントの2つに大別されるようになっているそうです。
そして、とても分かりやすかったのが「第4章 山岳地帯」の中央構造線の解説。その一部を紹介すると次のような感じです。
「中央構造線は関東から四国、九州まで日本列島を横断するように延びる長大な断層線です。その原型はおよそ1億4000万年前から1億年前にさかのぼります。もちろん日本列島が形成されるはるか前の話です。当時は日本列島の原型となる地層はユーラシアプレート(アジア大陸)の東の縁に広がる浅い海でした。そこに中央構造線の原型となる断層が出現しました。アジア大陸の原型が乗るユーラシアプレートとその東側のイザナギプレートの間の断層運動です。
約7000万年前イザナギプレートが北上してユーラシアプレートの下に沈み込んでおり左横ずれの断層運動が始まりました。以後、断層運動を繰り返しおよそ1400万年前、日本列島が湾曲を始めたころ、西南日本に中央構造線が形成されました。」
「(前略)長野県の大鹿村は中央構造線が南北に横切っていることはすでに述べました。中央構造線はフォッサマグナと違って文字通り二つの異なる地層の境界を示す数十センチメートルから1メートル程度の幅の「線」です。その線の北側(内陸側)には領家変性帯、南側(海側)には三波川変性帯と呼ばれる地層が存在し、その境界が関東から九州まで1000キロ以上も続いているのです。」
……なんと! 中央構造線の方が、日本列島よりも古い歴史を持っているんですね!
また日本最大の湖・琵琶湖についても……
「琵琶湖が形成されたのは400万~600万年前頃で、現在より南になる三重県西部の上野盆地付近にできたくぼ地に出現した構造湖(地殻の断層運動で出現した湖)でした。湖は次第に北に移動し、100万年前には、その移動が北の比良山系に止められ、現在の位置に定着したようです。その頃は、琵琶湖の南東側に横たわる鈴鹿山脈はまだ出現していませんでした。」
……そうだったんだ……琵琶湖から比良山系を眺める風景がとても美しくて好きでしたが、あの比良山系が琵琶湖を押しとどめていたとは……。
『地球科学者と巡るジオパーク日本列島』……日本列島の成り立ちから、その地形がどうしてできたのかまで幅広く解説してくれる本で、とても興味津々でした。地学が好きな方や旅行好きな方は、ぜひ読んでみてください☆
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