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第1部 本

描画参考資料

ビジュアルアトラス 辺境見聞録(レゲ)

『ビジュアルアトラス 辺境見聞録 世界の果てを見てみたい』2024/3/15
ブルーノ・レゲ (著), 清水 玲奈 (翻訳), ナショナル ジオグラフィック (編集)


(感想)
 東アフリカから旅に出た最初の人類、初めてヨーロッパとアジアを横断した商人……不屈の冒険者たちの歴史や、世界の果てと呼ばれる辺境を見せてくれるビジュアルアトラスで、内容は次の通りです。
1章 世界1周の旅 ホモ・サピエンスの出発からマルコ・ポーロの旅まで、ほか
2章 想像のフロンティア ヘラクレスの柱と地球平面説、ほか
3章 世界の果てから果てへ 陸地から最も遠い岬と海から最も遠い地、ほか
4章 驚異の国境 地獄の舞台イグアスからロストワールド、ロライマまで、ほか
5章 放棄された土地と係争地 主なき土地テラ・ヌリアスと幽霊国家リベルランド、ほか
6章 壁に直撃 黙示録の城壁ゴグとマゴグとペストの壁、ほか
7章 21世紀の知られざる地 海洋の深淵と探査不可能な太陽系外惑星、ほか

「1章 世界1周の旅(ここではないどこか)」は、「ホモ・サピエンスの移住」から始まります。200~20万年前に東アフリカから旅に出た人類が、南米パタゴニア(9000年前)までの移住ルートが世界地図に描かれていました。
 この章では「ビンランド」で、バイキングがコロンブスより少なくとも471年早く大西洋を横断し、ビンランド(現在のカナダ・ニューファンドランドと考えられている)に足跡を残していたことを知りました。
 また「東方見聞録」で有名なマルコ・ポーロと同時代に、中国からヨーロッパへと向かったウイグルのキリスト教僧がいた(ラッバーン・バール・サウマの旅(1280~1294))ことも初めて知りました。
 その他にも中国・鄭和の大艦隊、キャプテン・クックのハワイ上陸など、歴史的大旅行についても解説されています。
 なんと最後は「メタバース」。メタバースは「未来の開拓前線」で、「他者」と「ここではないどこか」の概念をすっかり書き換えてしまう仮想現実なのです(笑)。
 続く「2章 想像のフロンティア(想像上の辺境)」では、未知を語る寓話や神話の世界が始まります。世界の果てに不老不死を夢見た王・ギルガメシュや、「ドラゴンたちのいるところ」が描かれた1枚の絵と1つの地球儀など、興味津々な話題がいっぱい。
 実際には存在しないのに140年もの間、海図に記されていたサンディー島については……
「(前略)一度海図に記されると、何十年にもわたって、繰り返し別の海図にも写されていく。少なくとも、この誤りは意図的なものではない。」
 ……ありがちなことですね(苦笑)。
 そして個人的に一番面白かったのは、「3章 世界の果てから果てへ(世界の果てと世界の辺境)」。その一部を抜粋紹介すると、次のような感じ。
・ポイント・ネモ(南太平洋にある宇宙機の墓場)
「(前略)1971年の時点で宇宙機の残骸投棄場所として選ばれ、科学者の間では「墓地」と呼ばれてきた。2001年のロシアの有名な宇宙ステーション「ミール」をはじめ、ミッションが終わった300機近い宇宙機が、この場所の深い海底に「埋葬」された。」
   *
・トリスタン・ダ・クーニャ島:地球上でもっとも孤立した島(火山島)
「(前略)島には空港がなく、ケープタウンから年間10往復しか出ていない定員10人あまりの小船で7日間の航海を経て行くしかない。」
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・ヌル島(赤道とグリニッジ子午線の交差点にある仮想空間)実際には島はなく、海洋気象ブイ「SOUL」が浮かんでいるだけ。
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「4章 驚異の国境(風変わりな国境線)」では、ブラジルとアルゼンチン国境にある有名な「イグアスの滝」の背後には、世界最悪の犯罪組織(麻薬密売人など)の巣窟が隠されているという驚きの事実を知ることが出来ました。
 とても面白かったのが、米国・カナダの「直線の国境」。
「(前略)現在では、国境は陸上・水上の約8000個の境界標識や基準点に沿って、8891キロにわたって延び、平和に維持されている。1905年に設立された国際境界委員会は、どんな地形であっても、幅6メートルの通路を貫き、2国間の境界を物理的に示す緻密な活動を続け、紛争を未然に防いでいる。」
 という解説とともに、林の間にまっすぐ伸びる直線の通路(境界標識)の風景写真がありました。こういう平和的な国境があるんだ……。ちなみに、国境の町にあるハスケルフリー・ライブラリー・アンド・オペラハウスの床には黒い境界線が走っていて、国境を越え、2国間にまたがる世界でただひとつの文化施設だそうです(写真あり)。
そして「5章 放棄された土地と係争地(放棄された土地、係争中の土地)」、「6章 壁に直撃(分断と閉鎖の象徴)」に続く最後の「7章 21世紀の知られざる地(21世紀に残された未踏の領域)」では、まさに「辺境」に住む人々の次のような話題が……
・ベンガル湾に浮かぶ北センチネル島では、狩猟採集民が近代化の波に対抗し、上陸を試みる人たちに対して矢を放ち続けいている。
・ブラジルとペルーの国境にあるアマゾンのジャバリ谷には、現代文明に触れたことのない先住民族(イゾラド)が、世界で最も多く暮らしている。
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 ……辺境というと、ヒマラヤ山脈のふもととか、絶海の孤島に住む人々の、ゆったりした時間が流れる世界のような気がしていましたが、古代からの時間が凍結しているような辺境の人々もいるんですね……世界は、まだまだ広いようです……。
『ビジュアルアトラス 辺境見聞録 世界の果てを見てみたい』……ナショナル・ジオグラフィックの本らしい、美しい写真やイラスト満載の大型本で、とても見ごたえがありました。ただ……大きな画像にくらべて、解説文の文字がとても小さくて読みにくい感じがしましたので、購入しようと思っている方は、書店などで実際に本を見て確認することをお勧めします。
 それでも、なかなか訪れることが出来ない辺境の貴重な写真をたっぷり眺められ、世界には不思議な場所が、まだまだたくさんあることを知ることができる素敵な本だったので、みなさんも、ぜひ眺めて(読んで)みてください☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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『ビジュアルアトラス 辺境見聞録』