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第1部 本

科学

元素のふるさと図鑑(西山孝)

『元素のふるさと図鑑』2022/5/26
西山 孝 (著)


(感想)
 私たちの生活に欠かせない元素には、金属元素とよばれるグループがあります。これら金属元素は地球上のどこに、どれくらいあるのでしょうか。そして、どのようにして、私たちの手元に届くのでしょうか……元素のふるさとである鉱山から金属元素(メタル)を取りだし、素材として役立つまでの道のりを、図解や写真を使って紹介してくれる本で、主な内容は次の通りです。
はじめに
メタルの元素周期表
本書に登場するおもな鉱山および地名
本書の使い方
第1章 地球の成り立ちと鉱石
第2章 鉱石が素材になるまで
第3章 生活と産業をつくりだす元素――ベースメタルが素材になるまで
第4章 ハイテクを支える元素――レアメタルが製品になるまで
第5章 元素資源の未来――深海底での開発は進むか
コラム 日本の金属鉱山/日本の製鉄業/露天採鉱法から坑内採鉱法へ/熱水鉱床/縞状鉄鉱床/菱刈鉱山/窒素と世界遺産/形状記憶合金/岩石の風化とニッケル鉱床/レアアース危機/ゴールドラッシュ/ブッシュフェルト岩体と白金鉱床/海洋資源はだれのものか
付録 役に立つ用語集

「第1章 地球の成り立ちと鉱石」では、地球と金属元素の生産量との関係などの概要が説明されています。例えば、鉱石の出来かたについては……
「(前略)鉱石ができるには、マグマが冷却するとき(火成鉱床)、熱水が対流を起こすとき(熱水鉱床)、堆積岩ができるとき(堆積鉱床)の3つがあります。いずれもできあがるまでに長時間がかかり、限られた場所に現れます。」
 また鉱石とは……
「鉱石とは、現在の技術でメタルを取り出して利益のでる岩石のことです。」
 そしてメタルの生産は……
「メタルの生産は鉱石を探すこと(探査)から始まり、鉱石→採鉱→破砕・選鉱→精錬・加工という工程をたどって製品になります。そして使用後は廃棄されリサイクルに回されます。」
 ……など、鉱物生産の概要を学ぶことが出来ました(本書ではもっとずっと詳しく説明されています)。
 続く「第2章 鉱石が素材になるまで」では、鉱山で鉱石がどのような工程をへて精鉱になるのか、製錬所でおこなわれている作業や副産物としてでてくるメタルの回収方法などについて、さらに詳しい解説がありました。
 実は一つの鉱山からは、複数のメタルなどが回収されているそうです。次のように書いてありました。
「鉱石にはメタルが1種類だけ含まれていることはまれで、通常は多種類のメタルが混在しています。鉱山では多数のメタルのなかから利益が得られるものだけを回収しています。
 たとえば亜鉛の鉱石鉱物である閃亜鉛鉱(ZnS)には亜鉛だけでなく、インジウムやガリウム、アンチモンも微量に含まれています。技術レベルの高い精錬所では、有害なアンチモンは回収固定し、インジウムやガリウムは採算がとれれば回収します。したがって、液晶に使われるインジウム鉱山は世界地図で探しても見つかりません。インジウムは亜鉛のバイプロダクト(副産物)として、亜鉛・鉛鉱山から回収されているからです。」
 ……そうだったんだ……。
 そして「第3章 生活と産業をつくりだす元素」からは、いよいよ各元素の鉱山からの実際の道のりが、写真で詳しく説明されていきます。
第3章では、現代社会で道路や電線、ダム、鉄道、港湾といった社会基盤をつくる基礎的な構造材料(インフラストラクチャー)で使われ、大量に生産されている、5つのベースメタル(鉄、アルミニウム、銅、亜鉛、鉛)に焦点があてられていました。
 最初は「銅」。鉱石からメタルを取りだしてわたしたちが使う素材になるまでの道のり(鉱石→採鉱→破砕・選鉱→精錬・加工)が具体的に詳しく解説されています。鉱物博物館のような場所での展示を見ているみたいで、すごく興味津々☆ メタルって、こんなふうにして、私たちの使う製品になっていたんだ……。
 続く「第4章 ハイテクをささえる元素」では、ハイテク(最先端技術)を使ったスマホなどの機器には不可欠なレアメタルについて、鉱石がメタルになるまでの流れ、さらに埋蔵量や生産量などの基礎データが、その性質や用途とともに解説されています。
 ここでも、例えば、ベリリウムの鉱石はペグマタイト鉱床から産出するのですが、そこからは緑柱石(エメラルドやアクアマリン)も出ることがあるなど、驚きの情報をいろいろ知ることができました。
 そして最後の「第5章 元素資源の未来」では、資源の枯渇や深海底資源への挑戦などについて、次のようなことが……
「枯渇にもっとも近い位置にあるのは銅と亜鉛、とくに銅だと考えられます。深海底資源には、マンガン団塊、コバルトリッチクラスト、海底熱水鉱床などがあります。」
 このマンガン団塊の資源量は膨大で、銅も多く含まれているそうです。とても有望そうですね!
なお深海底の資源については、1982年に国連海洋法条約が採択されて、深海底を国連の管理下に置き、発展途上国にも配慮した開発を進めるように取り決められているそうです。
『元素のふるさと図鑑』……元素のふるさとである鉱山から金属元素(メタル)を取りだし、素材として役立つまでの道のりを、図解や実際の現場写真を使って具体的に解説してくれる本で、とても興味津々でした。鉱物から金属元素を取りだすまでのキーワードや、 どんな元素がどこにあるのか、 元素はいくらなのかといった、経済との関係もイラストで図解されています。
 他の本では見たことがないような鉱山や貴重な鉱石鉱物の写真が掲載されていて、とても興味津々、読み応えがありました。鉱物や地学好きの方は、ぜひ読んでみてください。お勧めです☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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『元素のふるさと図鑑』