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第1部 本
科学
まじめにエイリアンの姿を想像してみた(カーシェンバウム)
『まじめにエイリアンの姿を想像してみた』2024/4/15
アリク カーシェンバウム (著), 穴水 由紀子 (翻訳)
(感想)
エイリアンを考えることは、結果としてわれわれ地球上の動物とは何かを考えることにもつながっている……物理学や化学の法則は宇宙でも変わらないことを前提に、生物学の見方を元に、もし生き物が地球外に生まれた場合、液体、気体、固体の中の生活スタイルを考えながら、どのような姿形になるか、どのように行動を選ぶか、どのように発展をしていくかを、進化論やゲーム理論をベースにして、地球の動物たちの進化の過程を参考に、エイリアンにもあてはめて考えてみた結果をまとめている本で、内容は次の通りです。
第1章 はじめに
第2章 形態vs機能──すべての惑星に共通するものとは?
第3章 動物とは何か、地球外生命体とは何か
第4章 運動──宇宙を走り、滑空する
第5章 コミュニケーションのチャネル
第6章 知能(それが何であれ)
第7章 社会性──協力、競争、ティータイム
第8章 情報──太古からある商品
第9章 言語──唯一無二のスキル
第10章 人工知能──宇宙はロボットだらけ?
第11章 私たちが知る人間性
第12章 エピローグ
*
「第1章 はじめに」では、生物学の最も重要な法則は「複雑な生命は自然選択によって進化する」だとして、次のように書いてありました。
「(前略)自然選択は、いかなる特定の生物システムや繁殖の有機的形態に関係なく、厳密な数学用語によって定義できる。だからこそ、自然選択は信じられないほど強力な概念であり、その簡潔さと普遍性ゆえに、宇宙の複雑な生命につながりうるどんな道筋にも当てはまるのである。自然選択は、DNAにも、地球に縛られたいかなる種類の生化学的性質にも依存しない。だから私たちは、地球外生命体の生化学的仕組みを厳密にわかっている必要はないのだ。それがどのようにはたらくにせよ、その背景には自然選択があることだろう。」
……この本では、進化論やゲーム理論をベースに、エイリアンの姿をまじめに想像しているのですが、その過程で、地球の生命体がどのように進化してきたのか、そのなかで「他の惑星の生命体」にも当てはまりそうなものは何かを明らかにしていくので、とても説得力がありました。
終盤の「第11章 私たちが知る人間性」に、本書のまとめが書いてありましたので、ちょっと長いですが、その一部を抜粋紹介します。
「人間がどこに住んでいようとも、その進化について説明する普遍的な物語があるとしたら、次のようなものになるのかもしれない。
初期の生命体は単純で、生物以外の資源からエネルギーを得ていた。その大半はおそらく惑星が周回している恒星からのエネルギーだっただろうが、惑星自体の熱やほかの発生源からも得ていたかもしれない。
最初の革新は、一部の生命体(捕食者)が他者(被食者)からエネルギーを得るようになったこと、つまり自然のエネルギーを利用するほかの生命体のはたらきを搾取するようになったことだ(第3章)。タダ乗りは常にひとつの選択肢であり、ゲーム理論によれば、この手の「ズル」の進化はどうやら避けられない。
捕食者も被食者もそれぞれ、食べるという目的と食べられないようにするという目的を達成するために競争する。すると、運動が進化してくる(第4章)。
ひとたび生物が動けるようになると、社会的行動が生まれる(第7章)。捕食される動物は群れることでそのリスクを減らすことができる。これによって、見張り行動や構造物の構築など、より積極的な防御戦略の可能性が開かれる。
もしふたつの個体が一緒に行動するようになれば、少なくとも互いを見つけられるようにコミュニケーションをとる必要が出てくる(第5章)。
この時点で(これより前は無理だとしても)、助け合う生物と競合する生物(似た生物どうし、あるいは捕食者と被食者)の間にある複雑な相互作用によって、知能が進化してくる(第6章)。知能とは世界を予測し、自分に有利な決定を下す能力だ。
コミュニケーション、社会的行動、知能が組み合わさって、大量の情報を伝達できるコミュニケーションシステムの進化へとつながり(第8章)、それはさらに、私たちにとって非常に見覚えのある生態系へとつながっていく。(中略)
ついに、そしておそらく必然的に、言語能力をもつ知的で社会的な生物は複雑なテクノロジーを発達させる。それ以外の成果について知るのは困難だ。ほどなくして彼らは宇宙船を建造し、宇宙を探査するようになるだろう――先にみずからを滅亡させてしまわないかぎりは。」
……おそらく地球外生命体も、私たちと同じように、人工知能のようなものを作り出すだろうとも書いてありました。
エイリアンについては、単純に「想像を超える未知の存在」と考えていたので、このように「進化」や「ゲーム理論」から合理的に考察していることに新鮮な驚きを感じながら、興味津々でどんどん読み進められました。
『まじめにエイリアンの姿を想像してみた』……エイリアンについて書いてあるように見えて……実は私たち自身(地球の生命体)について、新しい視点で、さまざまな角度からじっくり俯瞰している本だと思います。とても面白いだけでなく、勉強になり、考えさせられる本だったので、みなさんも、ぜひ読んでみてください。お勧めです☆
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『まじめにエイリアンの姿を想像してみた』