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第1部 本

科学

そうだったのか!身のまわりの流れ(井口學)

『そうだったのか!身のまわりの流れ』2024/6/6
井口 學 (著, 編集), 植田 芳昭 (著, 編集), 植村 知正 (著, 編集), & 4 その他


(感想)
 身のまわりの生物、工学、スポーツなどの分野で見られる興味深い流れや気象現象について、流体力学の知識に基づいて分かりやすく解説してくれる本です。
 流体とは、「小さな力を加えても非常に大きな変形をする物質」で、気体と液体が流体に含まれます。
 そしてその性質は……
1)密度:一般に流体の密度は、圧力を一定にしておいて温度を高くすると小さくなり、温度を一定にしておいて圧力を高くすると大きくなる。
2)圧縮性:流体が圧縮・膨張する性質。気体より液体の方が圧縮されにくいのは、液体の分子間の結合力の方が強いため。圧縮性は音の伝播速度と関係があり、分子間の距離が小さいほど音は速く伝わる。
3)粘性:流体を動かそうとすると抵抗する性質のこと。粘度は流体の温度によって大きく変化する。液体の場合は温度上昇につれて粘度は小さくなるが、気体の場合は温度上昇によって分子間の衝突が激しくなるので粘度は大きくなる。
 ……というものだそうです。

 本書は、全体が、流体に関する疑問とその答え(QA)という構成で出来ていて、例えば「サメの肌はなぜザラザラしているの?」の答えは、「その方が速く泳げるから。」ですが、その解説には、次のように書いてありました。ちょっと長いですが、とても興味深かったので、以下にその一部を紹介します。
「(前略)一般に同じ流れの条件では、流速が小さい場合には層流、流速が大きくなると乱流になる。当然ながら、乱流では流れが乱れているので、層流に比べて流動的に生じる抵抗が大きくなる。この乱流発生のメカニズムだが、物体表面付近近く、例えば、魚の場合でいうと、魚の体表近くの領域から発生する小さな渦が徐々に大きくなり、流れ場全体に広がることで大きな乱れとなり、その結果、乱流状態となることがわかっている。(中略)
 したがって、物体表面近くの層における渦構造の発生や成長を抑制することができれば、流れの状態を変化させ、しいては、乱れを抑制することができることになる。(中略)
 サメの肌のような微細な規則的な流れ方向の溝を工学的にはリブレットと呼ぶ。(中略)
 リブレットの“粗さ”によって摩擦抵抗はたしかに増加するが、それ以上に、リブレットによって流れの乱れの構造が変化すること、すなわち、乱れの増幅を抑制することによって、物体全体としての流動抵抗を減少させる効果があることがわかった。」
 ……2000年のシドニーオリンピックで、このリブレット技術を応用した水着を着用した選手たちが、数多くの世界記録を出したことは有名ですね!
 また「マグロが速く泳げる理由」としては……
1)マグロが流線型をしていること(前から来た水の流れが、きれいに後まで流れる)
2)トムズ効果が働くこと(マグロの体表から分泌されるヌメヌメした成分が水中に混ざると、高分子の鎖が水中の抵抗の元となる水流の乱れの発生・成長を抑える)
 ……などを知ることが出来ました。
 他にも、「ヘンリーの法則:温度と液体の量が一定のとき、液体中に溶解する気体の量は圧力に比例する」とか、「カルマン渦:円柱や角柱などの物体に流れがあたると、その後方に交互の渦の列ができる。」など、「身の回りの流れ」について流体力学的な解説を学ぶことができて、とても勉強になりました。
『そうだったのか!身のまわりの流れ』……数式が多くて敷居が高いというイメージ(私だけの偏見?)の「流体力学」を、身の回りの現象を通して分かりやすく解説してくれる本です。科学が好きな方は、ぜひ読んでみてください☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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『そうだったのか!身のまわりの流れ』