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第1部 本

描画参考資料

天気が変えた戦国・近世の城(久保井朝美)

『城好き気象予報士とめぐる名城37 天気が変えた戦国・近世の城』2024/2/22
久保井 朝美 (著)


(感想)
 城好きで知られる気象予報士の久保井朝美さんが、日本の風土と城の工夫、天気を味方にした合戦や武将など、日本全国37の城を題材に「天気×城」の新視点を紹介してくれる本で、主な内容は次の通りです。
気象と築城技術
〔雪〕会津若松城/丸岡城/金沢城
〔雨〕高知城/飫肥城
〔風〕唐津城/鹿児島城・人吉城
美しきかな! 城で楽しむ絶景
〔雲海 秋の霧〕竹田城/備中松山城/越前大野城
〔雲海 春の霧〕今治城〔月見〕松本城
〔絶壁〕知覧城/都於郡城/小田原城/九戸城
〔青石〕和歌山城/徳島城
天気を読んだ名将
徳川家康/毛利元就/豊臣秀吉/伊達政宗/織田信長
対談 千田嘉博×久保井朝美 「天気」が分かれば、城あるきはもっと面白い!

 久保井さんは、気象予報士になってから、お城をめぐるたびに様々な疑問や仮説が浮かんできたといいます。
「寒冷地の屋根には、赤や緑など特徴的な色が多い」
「美しい壁は、台風への備えかもしれない」
「関ヶ原の戦いの勝因のひとつに『天気』があるのでは」
 ……ということで、この本は久保井さんが気づいた「城の気象対策」などを教えてくれるのです。
 まず「雪への対策」としては……
・福島県・会津若松城の赤瓦:瓦に鉄粉入りの釉薬をかけて「凍み割れ」を防いだ
・福井県・丸岡城の石瓦:土の瓦だと凍結して割れるため地元産の「笏谷石」を使った。
・石川県・金沢城の鉛瓦:雪や寒さで割れるリスクを減らす。
        海鼠壁:雪や寒さだけでなく、耐火性にも優れている
「雨や台風への対策」としては……
・高知県・高知城の土佐漆喰:一般的な漆喰と違って糊を使っていないので水に強い
        巨大な石樋:城内の水を排水する
       長押型水切り:建物の壁や塀に見られる出っ張り(雨除け)
・宮崎県・飫肥城の飫肥杉:柱や梁に地元産の水を吸いにくい飫肥杉を利用
「風対策」としては……
・佐賀県・唐津城の虹の松原:強風や潮風から田畑を守る人工の松林(防風防潮林)
 ……などがあげられていました。
 また天気で美しく楽しめる城として、雲海の城(竹田城、備中松山城、越前大野城)なども紹介されています。ちなみに……
「実は、「雲海」という気象用語はありません。その正体は細かい水滴の集まりで「霧」です。」
 ……そうだったんだ……。
 絶景の城としては、他に、「月見の城(松本城)」、「絶壁の城(知覧城)」などが紹介されていました。ちなみに知覧城はシラス台地にありますが……
「シラス台地は、なだらかな斜面になっていると雨で崩れやすく、垂直に切断されることで安定するという特徴があります。このため、土の壁で築かれた、急勾配で深いお堀ができるのです。」
 ……そういう理由で絶壁になっているんですか……勉強になるなあ!
 さらに「戦と天気」についても、例えば「関ヶ原の戦い(徳川家康)」では……
「合戦当日は、明け方に雨は止みましたが、霧が濃くて敵と味方が区別ができないほどだったそうです。」
 ……そんな濃霧の中で、小早川秀明、石田三成が陣を置いた場所よりも、家康の陣の場所の方が一番標高が低かったので、最も早く霧が薄くなり状況を捉えることができたはずなのだとか。
 また「摺上原の戦い(伊達政宗)」では、「梅雨末期特有の風の変化を捉えて勝利した」とありましたが、なんと政宗は、蘆名軍から寝返った武将から風の情報を得ていたのだとか!
「一般的に、梅雨前線がすぐ北にあって、その梅雨前線上を低気圧が進むとき、風向きが西から東に変わります。逆に、梅雨前線が南にあると、東から西に代わります。」
……風向きが西から東に変わるのは、福島県にとっては、この時期の特徴だったそうで……ただの幸運ではなく、ちゃんと風の情報を掴んだうえでの勝利だったんですね!
 さらに「桶狭間の戦い、長篠の戦い(織田信長)」では、急な雷雨となった「桶狭間の戦い」と、梅雨なのに雨が降らなかった「長篠の戦い」が、信長にとっては幸運な天気だったことが書いてありました。「火縄銃には雨は大敵」のはずなのに、長篠の戦いは梅雨時だったんですね……でも、この両方の戦いとも、信長は徹底した情報収集・万端な事前準備をしていたので、天気が味方していなくても勝利していたのでしょう。
「おわりに」には、次のように書いてありました。
「実は、天気予報で使われている「天気図」が作られるきっかけになったのは、「戦」です。
 最初は、1853年に開戦したクリミア戦争でのことでした。ロシアと戦っていたイギリスとフランスの連合艦隊が暴風雨で大打撃を受けました。のちにフランス政府の調査によって、低気圧が原因であり、低気圧は移動することが分かりました。天気を読むことの重要性を実感したフランス政府は、クリミア戦争の終結から7年後、日々の天気図を公開し始めたのです。」
 ……「天気と戦い」には、深い関係があるんですね!
『城好き気象予報士とめぐる名城37 天気が変えた戦国・近世の城』……城の作り方や戦に「気象」が深く関わっていることを教えてくれる本でした。
 丸岡城の「笏谷石」の石瓦は「雨の日」にはより鮮やかな青緑色になるとか、火縄銃での戦いでは城から撃てる防御側の方が、「雨の日」には有利だったとかいう話を知ると、今までよりも、雨の日の城歩きを楽しめそうな気がします。
 この他にも「厳島の戦い(毛利元就)」、「備中高松城の戦い(豊臣秀吉)」などなど、興味深い話がたくさん書いてありました。
 新しい視点で楽しめる『城好き気象予報士とめぐる名城37 天気が変えた戦国・近世の城』。紹介されている城を、カラーや白黒の写真で見ることもできます。みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
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『天気が変えた戦国・近世の城』