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第1部 本
社会
テクノ新世(日本経済新聞社)
『テクノ新世 技術は神を超えるか』2024/7/18
日本経済新聞社 (編集)
(感想)
ChatGPTなどの人工知能(AI)が人知を超えて進化したとき、人類はそれを正しく制御できるのか。故人やペットと再会するクローン技術が普及すると、かけがえのない命の重みは揺らぐのか……最先端のテクノロジーが生み出す光と闇に迫っている本で、異色の日経新聞連載「テクノ新世」を書籍化したものだそうです。2人の芥川賞作家、円城塔さん、津村記久子さんによるコラボ小説と、哲学者や思想家のインタビューもあり、主な内容は次の通りです。
第1章 岐路に立つ人類
インタビュー:ニック・ボストロム氏/カール・フレイ氏/小林武彦氏
第2章 「神」の領域へ挑む
インタビュー:シェリー・ケーガン氏/マーク・レイバート氏/スティーブン・ケイブ氏/稲見昌彦氏
第3章 国家サバイバル
インタビュー:アビジット・バナジー氏/ガイア・ヴィンス氏/マーティン・ウィリアムズ氏
第4章 理想を求めて
インタビュー:ジェフリー・ヒントン氏/ジミー・ウェールズ氏/蔡玉玲氏/金井良太氏
コラボ小説
「長い豚の話」 円城塔
「サラと気難しい人間たち」 津村記久子
ビジュアルデータ
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「第1章 岐路に立つ人類」には、驚かされるような新技術が紹介されていました。なんと「10年もすれば人間の男性の細胞からも卵子がつくれる」かもしれないのです。林克彦大阪大学教授は2匹のオスのネズミから子どもをつくる実験に成功したとのことで……
「カギになったのは06年に山中伸弥京都大学教授が作製に成功したiPS細胞だ。オスの尾からiPS細胞を育て、オスの性をつかさどる染色体を消し卵子に変えた。別のオスの精子を受精してメスの子宮に入れると健康な子どもが生まれた。」
……ええっ、そんなことが!
そして……
「(前略)破壊的なイノベーションはヒトの限界を踏み越える。人類に代わりテクノロジーが覇権を握る「テクノ新世」の到来をも予感させる。技術を脅威とみなすか、それとも共生を探るか。人類は地球史の分岐点に立つ。」
……まさしく、その通りですね。
そして「第2章 「神」の領域へ挑む」でも、ヒト型ロボット(ヒューマノイド)や、ペットのクローン、「サイバスロン(生体の電気信号を読み取って動くサイバー義肢など)」や、「ブレイン・マシン・インターフェース(BMI:脳とコンピューターをつなぐ技術)」などが紹介されていました。
今後、「機械と身体の境界は曖昧になっていく」かもしれません。それだけでなく……
「サイバー義肢やBMI技術は障害者の身体能力を補うだけでなく、脳の神経ネットワークを書き換えて眠っていた能力を発現させることも分かってきた。念じるだけで心を通わせるテレパシーや、遠くの出来事を感知する千里眼も夢物語ではない。従来の身体の常識を覆す「超人類」の時代が近づいている。」
……ひゃー……「超人類」なんて、SF世界だけのものかと思っていましたが……。
AIが、チャットやSNSから本人らしさを学んで、顔や声、意思まで似せた「AIデジタル分身」まで誕生しているようです。……凄い時代になっているんですね……。
意外だったのが、「第3章 国家サバイバル」。なんと台湾当局は、中国による台湾侵攻に備えて、「デジタル遷都」で統治機能の維持を図ろうとしているのだとか。
「台湾は24年から3年かけて、税や健康・医療、住民情報などの基盤データを複数の友好国のデータセンターに分散保存する。台湾本土が攻撃されても行政機能をデジタル空間で維持する。
英国とルクセンブルクの衛星通信2社と契約し、ネット接続も確保。友好国に台湾用の通信拠点3ヵ所を設置する。」
実は、第2次世界大戦の時にも……
「第2次世界大戦で英国やフランスは中央銀行の金塊をカナダに移し、ドイツによる占領や戦後の再起に備えた。現代では避難すべき国家財産の筆頭がデータだ。国民の基盤データさえあれば、領土を失っても再建できる。」
……戦争に備えて外国に財産を避難させておく、とても大事なことですね!
他にも……
「欧州随一のデジタル国家、エストニアも動く。米IT(情報技術)企業の力も借り、ルクセンブルクに政府データをバックアップするデータセンター「データ大使館」を設置した。」
……だそうですが、特定の企業に依存しすぎるリスクも忘れてはならないようです。例えばイーロン・マスク氏は、23年9月、通信衛星サービス「スターリンク」へのウクライナの接続要請を自身の判断で拒否したと明かしたそうです。
この他にもAIや不老不死など、神を超えそうな超技術が紹介されていました。
もちろんインタビュー記事にも、参考になる文章がたくさんありました。その一部を抜粋紹介すると次のような感じ。
・「(ウィキペディアの)記事の執筆や編集の過程でエラーやミスが生じるのは避けられない。ウィキペディアのような開かれた編集モデルにとって重要なのは、参加者の手で情報を修正するという発想だ。大勢がチェックを重ねることで情報の誤りを正していくことができる」
・「(AIが偽情報の生成に悪用される)懸念は間違いなく現実になりつつある。生成AIは単に精巧な偽画像をつくり、ウイルスのように拡散するだけではない。より恐ろしいのは、特定の人物を標的として情報を届ける能力を持つことだ」
・「民主的な社会では異なる意見が存在するのが正常な状態だ。いろいろな意見を集めてみんなで公開の場で議論して、合意点を探り、納得してもらうための仕組みがプラットフォームの本質だ」
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『テクノ新世 技術は神を超えるか』……コラボ小説も面白く、技術大好き人間にとって興味津々な内容満載の本でした。超技術とどう「共生」するかを考えるために、とても参考になると思います。みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
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『テクノ新世』