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第１部　本

天文・宇宙・時空

「はやぶさ２」は何を持ち帰ったのか（橘省吾）

『「はやぶさ２」は何を持ち帰ったのか　リュウグウの石の声を聴く (岩波科学ライブラリー 324) 』2024/2/22
橘　省吾 (著)

（感想）
　小惑星リュウグウに着陸し、試料の入ったカプセルを地球にもたらした探査機「はやぶさ２」。その採取装置の開発を担当し、持ち帰られた試料の初期分析を統括した橘さんが、リュウグウ試料分析の成果を語ってくれる本です。
「はじめに」によると……
「2014年12月3日に地球から打ち上げられた「はやぶさ２」は、2019年2月に小惑星リュウグウへ第1回の着陸をした。その後、同年7月にも着地し、リュウグウの表面から石や砂を採取。それらを入れたサンプル格納室を、直径約40cmの再突入カプセル（中略）に封入し、同年11月にリュウグウを離れた。
　そして2020年12月6日、「はやぶさ２」は地球に帰還し、再突入カプセルを地球に向けて切り離した」
……とのことで、カプセルは、（コロナ禍の）オーストラリアの予定位置に無事着地・回収され、探査機はその後、新たな目的地に向けて旅立ったそうです。
　さて「地球の外」に出て、小惑星の試料を回収することには、次のような大きな意義があるそうです。
・「（前略）実際の試料の観察や分析で得られる情報は、探査機や望遠鏡で取得するデータの解釈に深みを与え、また新たな事実を提供する。」
・「ある鉱物が産出するためには、温度や圧力、化学組成などが、その鉱物が熱力学的に安定となる条件を満たす必要がある。」
・「（前略）同じようなマグマでも、冷やされ方で御影石のようになったり、黒曜石のようになったりするということだ。」
・「（前略）同位体の存在度の違いによって、ある物質の中に異なる起源の物質が混ざっているかどうかや、その混合の程度を調べることもできる。」
・「（前略）鉱物や岩石には、過去に経験した熱力学的な安定条件の記憶が残る場合が多い。」
　……地球の外から飛来する隕石を分析しても多くのことを知ることができますが、残念ながら隕石は、地球の大気で破損したり、化学的影響を受けたりしてしまいます。それに対して「地球の外」で回収した試料は、「なまの情報」を詳細に伝えてくれるそうです。
　ところで私は知らなかったのですが、「はやぶさ２」は小惑星リュウグウに到達して、すぐにサンプルを回収して戻ってきたわけでは、なかったようです。次のように書いてありました。
「2018年6月、「はやぶさ２」はついにリュウグウに到着した。ここでいう「到着」とは、リュグウから距離約20kmの地点に到達した、ということである。」
　それ以降、なんと17カ月間も、距離約20kmの地点でリュウグウと並走しながら観測したそうです。リュウグウは多数の岩石が集まった天体で、１回目、２回目ともサンプル採取に成功（小型カメラで撮影も）したのだとか。（これらの経緯や、分析についても詳しい解説がありました）。
　そして「エピローグ」には、総まとめのような記述があったので、以下に紹介します。
・「リュウグウは小さな天体として誕生した後に、材料に含まれていた水などの氷が融けて、水との化学反応の結果、含水鉱物や炭酸塩、硫化鉄、磁鉄鉱などの鉱物がつくられた。これらの化学反応は、太陽系が誕生してから500万年程度の期間に起こった。つまりリュウグウの石は、地球より古いのだ。さらには、硫化鉄の粒子の中に閉じ込められた、太古の炭酸水も発見された。」
・「そしてリュウグウの石には、期待通り、有機物も含まれていた。太陽系形成前の分子雲の中で起こったであろう、10ケルビンのような低温での化学反応の証拠を示す有機物や、リュウグウの中での水との化学反応の結果、含水鉱物と絡み合うようにして生成した有機物などが観察された。
　リュウグウの石から有機分子を溶かし出して分析すると、２万種を超える有機分子が発見された。その中には、アミノ酸や核酸塩基（ウラシル）も検出された。アミノ酸には地球生命が利用しないものもあり、また、光学異性体が存在するアミノ酸には、右手型と左手型がほぼ１：１の比で検出された。これらのアミノ酸が生物に由来するものではない証拠だ。
　すなわち、リュウグウのような小天体で（もしくはその材料の時点で）、地球生命へとつながりうる分子が準備されていたことが明らかになった。」
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　……リュウグウのような小天体が、もしかしたら地球に生命をもたらす材料を運んできてくれたのかもしれませんね☆　また次のようなことも……
「リュウグウの石は、C型小惑星がその内部で有機分子を複雑化して、初期地球にアミノ酸のような生命材料をもたらす運び屋になりえたことを教えてくれた（含水鉱物を含むこれらの小惑星は、同時に水の運び屋でもある）。C型小惑星が太陽系に豊富に存在することも考え合わせると、C型小惑星は、地球に生命を誕生させるお膳立てをしたのかもしれない。」
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『「はやぶさ２」は何を持ち帰ったのか　リュウグウの石の声を聴く』……リュウグウの石が教えてくれた小惑星と太陽系の歴史、海や生命の材料は地球の外にありえたのかなど、宇宙について新しいことを知ることができて興味津々でした。みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
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　なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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