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第1部 本

描画参考資料

西洋の名建築 解剖図鑑(川向正人)

『西洋の名建築 解剖図鑑』2023/3/26
川向正人 (監修), 海老澤模奈人 (監修), 加藤耕一 (監修)


(感想)
 パルテノン神殿からサグラダ・ファミリアまで、4000年の西洋建築史から厳選した70の名建築をイラストで概説してくれる本で、内容は次の通りです。
1章 古代 オリエント/ギリシア/ローマ/初期キリスト教
クフ王のピラミッド/アメン大神殿/ペルセポリス/パエストゥム/パルテノン神殿/エピダウロスの劇場/アッタロスのストア/ガールの水道橋/コロッセウム/パンテオン/バシリカ・ノウァ/古代ローマの住宅建築/サンタポリナーレ・イン・クラッセ聖堂/サン・ヴィターレ聖堂/ハギア・ソフィア大聖堂
2章 中世 ビザンツ/イスラーム/ロマネスク/ゴシック
ダマスクスの大モスク/コルドバの大モスク/カラーウーン複合施設/アルハンブラ宮殿/イスファハンのバザール/アーヘン宮廷礼拝堂/サン・マルコ聖堂/ピサ大聖堂/サン・セルナン聖堂/シュパイヤー大聖堂/ダラム大聖堂/ル・トロネ修道院/サン・ドニ修道院聖堂/シャルトル大聖堂/サント・シャペル/聖シュテファン大聖堂/シエナの市庁舎・カンポ広場/カンタベリー大聖堂
3章 近世 ルネサンス/マニエリスム/バロック/ロココ
サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂/オスペダーレ・デッリ・インノチェンティ/パラッツォ・メディチ/サンタンドレア聖堂/テンピエット/シュノンソー城・シャンボール城/ラウレンツィアーナ図書館前室/パラッツォ・テ/ヴィラ・ラ・ロトンダ/カンピドリオ広場/サン・ピエトロ大聖堂/サン・カルロ・アッレ・クワトロ・フォンターネ聖堂/ヴェルサイユ宮殿/ラ・シンドネ祭室(トリノ大聖堂)/フィアツェーンハイリゲン巡礼聖堂
4章 近代 新古典主義/歴史主義/モダニズム
パンテオン/アルテス・ムゼウム/ヴァルハラ/ラブルーストの図書館建築/セント・パンクラス駅/パリ・オペラ座/ウィーン・リンクシュトラーセ/ギャランティービル/ヴィクトール・オルタ自邸/ウィーン分離派会館/サグラダ・ファミリア聖堂/フランクラン通り25番bisの集合住宅/ウィーン郵便貯金局/AEGタービンホール/アインシュタイン塔/デッサウのバウハウス校舎/バルセロナ・パヴィリオン/サヴォア邸/ミュラー邸/落水荘/マルセイユのユニテ・ダビタシオン

 ローマ帝国の権威を象徴する西洋建築の模範「パンテオン」や、文化の粋を集めた楽園、イスラーム宮殿建築の至宝「アルハンブラ宮殿」、古代ローマ・フランク王国・ビザンツの3つの文化が出会った「アーヘン宮廷礼拝堂」、狩猟のための小さな城館から華やかな儀礼の場へと改築された「ヴェルサイユ宮殿」、新素材がダイナミックな公共空間を実現した「セント・パンクラス駅」、散策するような動線を実現したモダニズム住宅の最高峰「サヴォア邸」など、有名な西洋の名建築を美しいイラストで眺めることができます。
 例えば「1章 古代 オリエント/ギリシア/ローマ/初期キリスト教」では、「クフ王のピラミッド」などの超有名な建造物の他に、「古代ローマの住宅建築」もあって興味深々。次のように書いてありました。
「古代ローマの住宅建築は、いくつかの類型に分類される。都市住宅で重要なものは、規模の大きな住宅、ドムスである。これに対してインスラは、現代の集合住宅にも通じる中層の建物である。こうしたドムスやインスラは、タベルナという店舗と合わせて建設されることも多かった。
 一方農村部では、ウィッラ(ヴィラ)という邸宅が建設された。これは都市に住む富裕層の別荘として語られることが多いが、農場の中心として使われることもあった。」
 ……このような「住宅」は現代まで継承されてきた作品はほとんどなく、古代ローマの住宅に関する知識はポンペイに代表される遺跡の発掘調査によるところが多いそうですが、現代の住宅にも通じるところがあって驚かされました。下に店舗がある3~6階建ての集合住宅(上は賃貸住宅)の復元図なんかは……本当にこのままの形で現代にもありそう……古代ローマ、恐るべし☆
 また驚いたのが、「3章 近世 ルネサンス/マニエリスム/バロック/ロココ」の「ラウレンツィアーナ図書館前室」。とても美しい建築ですが、なんとあの彫刻家ミケランジェロさんの設計!
「ミケランジェロと言えばイタリアのルネサンスを代表する芸術家の一人だが、彼は彫刻や絵画だけでなく、建築でも独創的なマニエリスムの作品を残している。」
 ……と書いてありました。この図書館前室の「滝となって流れ落ちる流麗な階段(ミケランジェロの模型に基づいてバルトロメオ・アンマナーティによって制作された)」の造形の美しさは……さすがミケランジェロさんですね! この他にも「カンピドリオ広場(ミケランジェロが計画に参加)」とか、なんと「サン・ピエトロ大聖堂(ブラマンテとミケランジェロが、ドームを戴く集中式プランを実現させる)」とかにも、彼が関わっているそうです(やっぱり凄い天才なんですね……)。
 この章では、ミケランジェロさんの作品ではありませんが、「パラッツォ・テ」という規範からの逸脱を楽しむ奇想の館もとても面白かったです。「建物の内部では床や天井の造作と絵画を組み合わせ、時には過剰なまでに各室のテーマを表現している。」そうで、だまし絵も使われています。
 そして「4章 近代 新古典主義/歴史主義/モダニズム」になると、「ラブルーストの図書館建築(繊細な鋳鉄が支える大空間)」など「鉄」を大いに活用した建築が出現。
 この章で最も近代っぽいと思ったのは、「ギャランティービル」という近代的な巨大な四角いビル。丸の内にありそうなビルですが(笑)、外部も内部も装飾で覆われているようです。
 この章には、もちろん建築家アントニ・ガウディの未完の大作「サグラダ・ファミリア聖堂」もありました。彼はなんと31歳の若さでこの聖堂設計の主任建築家に就任したそうです! ……老成した建築家として関わっていたのかと思っていました‥‥…。
『西洋の名建築 解剖図鑑』……多様なスケールの「名建築」をイラストで楽しめる本でした。正直に言って「写真」でも見たかったような気がしましたが……実際には「イラスト」の方が細かい部分が分かりやすいので、この方が、価値が高いのだと思います。西洋建築が好きな方は、ぜひ眺めてみてください☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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『西洋の名建築 解剖図鑑』