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第1部 本
教育(学習)読書
図書館員の未来カリキュラム(未来の図書館研究所)
『図書館員の未来カリキュラム』2023/10/26
未来の図書館研究所 (編集)
(感想)
「これからの図書館の役割」「そのために必要な知識とスキル」をテーマに毎年開催しているワークショップ「図書館員の未来準備」。その講座内容をもとに、それぞれの分野で新たな地平を切り開いている執筆陣がそろって、「図書館のDX(デジタルトランスフォーメーション)」「新たな図書館情報サービスの展開」「地域への貢献」の3つを柱に、未来を担う図書館員が身に付けておくべき知識やスキルを伝えてくれる本で、主な内容は次の通りです。
まえがき 永田治樹
序章 図書館員に今後求められる知識とスキル 永田治樹
第1部 図書館のDX
第1章 ウェブ技術の深化とサービスの可能性 川嶋 斉/牧野雄二
第2章 デジタルメディア・アーカイブ 牧野雄二
第3章 先駆的技術の図書館サービスへの組み込み 中野良一/牧野雄二
第4章 図書館員の視座と文献到達可能性 宇陀則彦
第2部 新たな図書館・情報サービスの展開
第5章 図書館×メーカースペース――これまでとこれからに向けて 渡辺ゆうか
第6章 デジタルネットワーク時代の著作権法――未来の図書館員の意識改革のために 村井麻衣子
第7章 情報リテラシー支援の取り組み――事例を中心に 磯部ゆき江
第3部 地域への貢献
第8章 まちづくりと図書館 大串夏身
第9章 学校との連携・協働 中山美由紀
第10章 町と人に寄り添う図書館 手塚美希
補章 学び直しの機会と新たな試み 木村 瞳
あとがき 戸田あきら
付録 「ALAコア・コンピテンス2022」
(※2023年にアメリカ図書館協会が「図書館員が職務を遂行するために必要不可欠な知識・スキル」として発表した「ALAコア・コンピテンス」の翻訳)
*
これからの時代を生き残るために図書館員には何が求められるのか……Web-APIの技術を取り入れたウェブサービスや、国内外の図書館でのAIなどの活用事例、図書館蔵書からウェブ上のあらゆる情報源への視座の転換、国内でも広がりを見せているメーカースペースやファブラボといった第三の学びの場の試み、2022年の法改正で一躍話題になった図書館と著作権法をめぐる問題、まちづくりと図書館の関係、地域や学校との連携などの10のトピックを取り上げ、日々の業務に役立てるための学びの指針を示してくれます。
「図書館員の未来カリキュラム」というタイトルだったので、ウェブサービスや電子的資料との連携、図書館でのAIやロボットの活用などIT技術の活用が中心なのかと想像していたのですが、それは主に「第1部 図書館のDX」だけで、「第2部 新たな図書館・情報サービスの展開」や「第3部 地域への貢献」では、それは本当に図書館の仕事なの? と驚かされるようなサービスや活動が紹介されていました。
まず「第2部 新たな図書館・情報サービスの展開」の「第5章 図書館×メーカースペース」では、なんと図書館に「ものづくり」のためのスペースを設置するという活動が紹介されていました。それは……
「海外では、公共図書館や学校図書館などに、ファブラボ、メーカースペース、ハッカースペース、ラーニングラボなどものづくりスペースが設置されることが増えている。これらはそれぞれに異なる特徴があるが、メーカースペースと総称される。これらの施設に共通するのは、一人でコンピューターの前に座っているだけではなく、人々が集まり、実際に手を動かし、協力して何かを作り出すことができるコミュニティであることだ。」
……というもので、アメリカはSTEAM教育分野(科学、技術、工学、数学、芸術)の人材育成支援に積極的な財政支援を行うようになっていて、図書館は二十一世紀に必要なスキルを身につけるための機会を提供する社会的なインフラに変化しているそうです。
そして日本初のファブラボとして2015年に開設された「ファブラボ鎌倉」の事例が紹介されていました。ファブラボ鎌倉での実践を通じて考える、メーカースペースの重要な学びの要素5つとは……
1)多様性があるコミュニティ
2)リソースの共有
3)教育プログラムの提供
4)スキルをシェアして相互理解促進
5)地域連携で課題解決
……だそうです。図書館が「ものづくり」を通じて学ぶ場所にもなっているとは! 驚きでしたが……とても良いですね! IT技術の急速な進展で、一般の人にも一般常識としてのIT知識が求められるようになっているので、「大人の学び直しの場」にもなってくれると、とてもありがたいと思います。
「第7章 情報リテラシー支援の取り組み」には、次のことが書いてありました。
「「IFLA-UNESCO公共図書館宣言2022」では、知識社会での公共図書館の使命として、次のことを掲げている。
・情報に基づいた民主的な社会を整備していくという観点で、(略)あらゆる年齢のすべての人々のメディア・情報リテラシーとデジタルリテラシーの技能の発達を促す。
・デジタル技術を通じて、情報、コレクション、およびプログラムの利用を対面でも遠隔でも可能にして、いつでも可能な限り地域社会にサービスを提供する。」
……これらの活動に期待したいと思います。
そして、さらに驚かされたのが、「第3部 地域への貢献」の「第8章まちづくりと図書館」。図書館には「まちづくり」への役割も期待されているようです。
「図書館がまちづくりに取り組むための準備」として、次のことが書いてありました。
1)まちづくりに関する基本的な文献を読む
2)地域を知り、コミュニティアセットを把握する
3)手書き地図を作成する
4)地図を手に地域を歩く
5)各種計画を調査する
6)全国の取り組みを調べる
7)レファレンスの事例なども調べておく
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そして「新しい図書館の事例」として、とても参考になったのが、「第10章 町と人に寄り添う図書館」の岩手県紫波町図書館の取り組み。この図書館は、「公民連携によるまちづくり」オガールプロジェクトの中心施設(オガールプラザ)に誕生しましたが、しだいにレファレンスに、鳥害対策の相談が増えていったそうです。
あるとき、「ニホンジカの農作物被害を地域で考える機会を設けたいので、シカ対策の「出張としょかん」をしてくれないか」と依頼されたことをきっかけに、勉強会を開催。さらに関係者への聞き取りで被害をマッピング、その対策として電気柵や草刈りを実施するなどの活動を進めていったそうです。
またこの図書館は、「町の歴史の記録を後世へつないでいくこと」のために「聞き書き」の記録もしています。……どれも、とても素晴らしい活動ですね☆
『図書館員の未来カリキュラム』……急激な変化を続ける情報環境に対応し、これからの時代を生き残るために図書館員には何が求められるのか……「未来の図書館」には多角的な活動が求められていくんだなーと、驚きを感じてしまうとともに、勉強にもなる本でした。図書館や地方自治体で働く方にとって、とても参考になると思いますので、ぜひ読んでみてください。
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『図書館員の未来カリキュラム』