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第1部 本
描画参考資料
総説 博物館を学ぶ(駒見和夫)
『総説 博物館を学ぶ』2024/3/14
駒見 和夫 (編集)
(感想)
大きく変わりつつある博物館について、その基礎知識を整理し、マネジメントや社会連携の実情をわかりやすく解説してくれる本です。
「はじめに」によると、なんと「日本の博物館は、博物館類似施設と呼ばれるものも含めると5,771館を数える。」そうです。……そんなにたくさんあったんですね!
実は、博物館は、意外に簡単に作れるようです。次のようにも書いてありました。
「(前略)博物館を設置しようとする者は、所在の教育委員会(都道府県もしくは政令都市)の登録を受けることが第11条で規定されているが、登録申請は任意であり、博物館の名称使用に制限もない。」
……そうだったんだ……。
「我が国における博物館は、博物館法により、設置者(博物館を管理・運営の主体)、目的、登録の有無の3点で、「登録博物館」「博物館指定(相当)施設」「博物館類似施設」に分類される。」ということで、このうち最後の「博物館類似施設」は、博物館活動を担保するための行政からの審査を受けていないので、学芸員が不在でもよく、観光客をターゲットとした博物館が多いそうです。
そして博物館の目的と機能は、「研究・収集・保存・解釈と展示の機能により、人びとに対する教養・愉しみ・省察と知識共有といったさまざまな経験を提供(幅ひろい意味で学習経験)」ことだそうです。
そんな博物館の起源は、古代ギリシアのムセイオン(紀元前3世紀にエジプト王が首都アレクサンドリアに設立。図書館、天文観測所、動物園・植物園、薬草・解剖研究所を備えた自然科学や文献学研究を中心とする総合学術機関)に由来するようです。
また日本における博物館の源流としては、古代から寺院や神社(奈良時代の東大寺正倉院など)が収集・保管機能を担ってきたことが紹介されていました。権力者による祈願のために刀剣・甲冑・経典・絵画・工芸品などが奉納され、虫干しや開帳などは、現在の博物館の展示機能に近かった……なるほど確かに……。
そして明治期の博覧会の時代を経て、明治政府による内務省系博物館(のちに東京国立博物館)、文部省系博物館(のちに国立科学博物館)や、上野動物園が作られたようです。
さて、博物館の学芸員になるための資格を修得するためには、次の3つの方法があります。
1)学士の学位を有し、大学で文部科学省の定める博物館に関する科目の単位を修得した場合
2)短期大学学士の学位と同等の学士を有し、博物館に関する科目の単位を含めて62単位以上を修得したもので、3年以上学芸員補の職にあったもの
3)学芸員資格認定を合格したもの、審査認定など
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そして博物館に関する科目とは、「生涯学習概論」2単位、「博物館概論」2単位、「博物館経営論」2単位、「博物館資料論」2単位、「博物館資料保存論」2単位、「博物館展示論」2単位、「博物館教育論」2単位、「博物館情報・メディア論」2単位、「博物館実習」3単位の合計9科目、すべての科目19単位を修得する必要があるのだとか。
「歴史、芸術、民俗、産業、自然科学など、多種多様な博物館資料に関連する専門領域の専門家であると同時に、それらの資料を収集、整理・保存、調査・研究、展示・教育といった博物館の基本的な活動を行い、博物館の設置目的(ミッション)に沿った博物館資料によるコレクションづくりに携わるために求められる知見をもった者が学芸員である。」
……ということですが、なんと、ちゃんとした「博物館(登録・相当1305館)」でも、半数以上の博物館は、学芸員の配置ができていないそうです(専任の割合は半数を切っています)。……学芸員に求められることはかなり多いようなのに……現実はかなり厳しいんですね……。
この他にも「博物館の資料収集方法」とか、「資料整理の方法」とか、「リスク・マネジメント」などについても解説があり、参考になりました。
そして近年では、博物館は、観光やまちづくりの面でも期待されているようです。
「博物館は観光施設として、また地域の文化観光推進のための新たな資源を調査・研究を通じてつくる存在としての役割も期待されているといえる。」
例えば「博物館が基点となるまちづくり」の例として、青森県八戸市(八戸ポータルミュージアムはっち)、石川県金沢市(金沢21世紀美術館)、青森県十和田市(十和田市現代美術館)などが紹介されていました。
また博物館による廃校復活(廃校を博物館として再活用する)の例も多数あるようです。資料の保管場所が不足しつつある博物館も多いようなので、そういう意味でも廃校の活用には期待が持てそうな気がします。
『総説 博物館を学ぶ』……博物館について、総合的に解説してくれる本でした。写真やイラストがあまりなくて文章による解説が多く、教科書的な本なので、一般向けというよりは、学芸員志望者や博物館愛好家に向けた本のように感じました。興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
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『総説 博物館を学ぶ』