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第1部 本

地質・地理・気象・地球環境

地球の限界(ガフニー)

『地球の限界 : 温暖化と地球の危機を解決する方法』2022/2/26
オーウェン・ガフニー (著), ヨハン・ロックストローム (著)


(感想)
 グレタ・トゥーンベリさんが序文を、アントニオ・グテーレス国連事務総長がまえがきを寄せている「温暖化」と「地球環境」の教科書です。
「序文」によると、地球の限界は、地球の生命維持システムの限界を意味し、次のような状況にあるようです。
「(前略)地球の生命維持システムとは、地球の氷床、海、森、川、湖、豊かな生物多様性、炭素、水、窒素、リンの巨大な再循環をすべて合わせたものだ。このシステムはいまや、まぎれもなく不安になっている。いつ七八億の人間がもろともに、崖から谷底に落ちてもおかしくない。」
 ……なにしろ大気中の二酸化炭素濃度の限界値は約350ppmと考えられているのに、2020年にはすでに415ppmを超えているのですから(涙)……。
 そして本書は……
「この本は三幕を通して、プラネタリー・スチュワードシップ(責任ある地球管理)に向けた人類の道のりについて述べる。つきつめて言えば、進路の転換、人類の責任と変革の機会、そして成果を出すための新しい基準の設定についてだ。
 第1幕は、地球の生命維持システムについて述べる。(中略)
 第2幕は、過去三〇年間の科学における驚くべき成果の物語だ。(中略)
 第3幕はアースショット構想、つまり私たちのもっとも重要な使命についてである。」
 ……という構成になっています。
 さて、私たちの地球は次のように変化してきました。
アース1.0:絶え間ない隕石の襲来、海はなく、生命もない。
アース2.0:単純な単細胞生物の出現
アース3.0:光合成による酸素の放出
アース4.0:複雑な生物の出現
 その後、完新世の驚異的な気候の安定性と環境の豊かさのなかで、私たちは技術革新と文明の繁栄を進めてきましたが、今やそれが危機的な状況にまで至っています。
「完新世のあいだ、典型的な成人が摂取する食物とエネルギーは、電力に換算すると一日あたり約九〇ワットだった。現在、平均的なアメリカ人は毎日一一〇〇〇ワットのエネルギーを使用している。」
 ……うーん確かに。一日たった九〇ワットでは、スマホを使うことすら出来ないような……。
 それでも、私たちはなんとかして、少なくとも地球の危機を遅らせてやらなければならない状況にあるのです。
 地球を安定させるためには、少なくとも次の九つの限界があるそうです。
 まず三つの巨大な限界(ビッグスリー)としては……
「地球規模で作動するシステムには三つの巨大なものがある。その三つは地球全体の状態を調整し、すでに把握されている転換点を持つ。その三つとは(1)気象システム、(2)オゾン層、(3)海洋である。」
 そして生物圏の四つのバウンダリーとしては……
「生物圏の四つのバウンダリーとは、(1)地球上のすべての生物種とそのつながり、つまり「生物圏の完全性」と呼ばれるもの、(2)熱帯雨林からサバンナ、湿地、北方林、ツンドラまでの、地球上の重要な生物群系または広範な自然生態系、(3)地球規模の水の循環、(4)主要な生物地球化学的循環である窒素とリンの地球規模の循環、である。」
 さらに二つの新たなバウンダリーとして……
「(前略)一つは「新規人工物」――人類が開発して放出した何千もの人工物の総称――であり、もう一つはエアロゾル――大気汚染を引き起こす大気中の微粒子――である。」
 ……これら九つのプラネタリー・バウンダリーの状況は……
「私たちは九つのプラネタリー・バウンダリーのうち、気候、生物多様性、土地、栄養素の使用という四つの項目で限界値を超えた。」
 ……推定八〇〇万種の生物種のうち約一〇〇万種が絶滅の危機にあり、アマゾンの炭素貯蔵量は減っていて、シベリアの永久凍土が融けつつあり、南極とグリーンランドの重要な部分が不安定になっている……大変厳しい状況にあるのです。
 そしてその対策としては……
「(前略)プラネタリー・バウンダリーの範囲内で生活するためには、集団的な行動が、環境崩壊のリスクを食い止める。みんながこのような行動を起こすことで、よりよく、より魅力的で、より安全、公平、現代的な生活への道が拓かれる。」
「(前略)いくつかすぐにでも着手すべきことがある。温室効果ガス排出の抑制、食料生産方法の転換、人口増加の安定化などだ。」
「(前略)気候災害を回避し、人類を養うために、地球の生態系能力を維持する可能性を高めるには、エネルギーについては「カーボンの法則」、自然については「ゼロの法則」に従う必要がある。」
 ……具体的には、食品廃棄物の削減、炭素を吸収、養分を循環、水を節約する農法への変換や、土地を耕すことをやめる(有機物や土壌微生物が蓄積される)、電気自動車など、さまざまな対策が紹介されていました。
 また都市システムとしては……
「(前略)アースショット構想による都市のシステム変革のための四つの優先事項が明らかになった。
 第一に、すべての人が安全な飲料水と適切な下水システムを利用できるようにする必要がある。(中略)
 第二に、都市計画担当者は都市のスプロール化を避け、コンパクトで効率的で緑の多い都市を実現する必要がある。(中略)
 第三の優先事項は、効率的な移動手段である。(中略)
 最後に、未来の都市は、循環と再生を受け入れ、まるで生きた超生命体として機能する必要がある。」
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『地球の限界 : 温暖化と地球の危機を解決する方法』について、総合的・具体的に解説してくれる本でした。暑い夏や激甚化する災害など、地球温暖化が現実化していることをひしひしと痛感させられる毎日……化石燃料から再生可能エネルギーへの転換、共有経済(シェアリング・エコノミー)、エネルギーの節約、食品廃棄物やゴミの削減など、私たち自身に出来ることを少しずつでも実行していこうと、あらためて痛感させられる本でした。みなさんも、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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『地球の限界』