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第1部 本
地質・地理・気象・地球環境
備え力がつく! 天気予報の見方聴き方(伊藤みゆき)
『備え力がつく! 天気予報の見方聴き方』2024/1/25
伊藤 みゆき (著)
(感想)
災害から身を守る手段として、空や風のサインを気圧配置や天気予報とともに受け取ることによって今後の気象変化を察知すること、また気象現象や気象情報の経緯を知り正しく理解し上手く使ってもらうことの二点に主眼を置いて、気象予報士の伊藤さんが、ご自身の体験をもとに説明してくれる本で、内容は次の通りです。
気象災害が増えている?
CHAPTER1 備えることができる災害
1 台風
2 急発達する低気圧
3 日本海側の大雪
CHAPTER2 予想が難しい気象現象
1 梅雨前線
2 太平洋側の大雪
3 竜巻
4 局地前線
CHAPTER3 覚えておきたい防災キーワード
1 特別警報
2 記録的短時間大雨情報
3 線状降水帯
4 キキクル
5 降水短時間予報
6 経験したことのない大雨
7 マイ・タイムライン
8 熱中症警戒アラート
9 週間予報の信頼度
10 早期天候情報
11 季節予報
12 いざという時のラジオ
おわりに
*
とりわけ充実していたのが「CHAPTER1 備えることができる災害」の「台風」。実際に起こった台風災害について、たくさん読むことが出来ました。
台風の時に注意すべきこととしては……
1)進路チェック(予報円が大きいうちは不確定なので小さくなるまで要確認)
2)風への備え(台風の進行方向右側に当たる地域は特に強風に注意)
3)雨への備え(雨雲レーダーも見る)
……などがあり、最近は台風の中心から離れた所でも竜巻や突風の恐れがあることや、台風により海岸付近で高潮災害が発生する恐れがあるときは、内陸部でも川の氾濫や浸水に注意が必要、などの注意もありました。
また台風が温帯低気圧に変わったからといって、安心はできないようです。次のように書いてありました。
「温帯低気圧に変わってからの方が、台風の時よりも強い風が広範囲に及ぶ傾向が見られます。エネルギー源が変わって、再び中心の気圧が下がり、温帯低気圧として勢力が強まるのです。エネルギー源である冷たく乾いた空気を遠くからも引き寄せるため、すでに台風が通り過ぎて天気が回復している地域でも強い風が続いたり、低気圧の中心から離れた地域でも風が強まったりすることもあります。
台風の進路予想図で、台風が弱くなってきているのに、逆に暴風域や強風域が広がるのも温帯低気圧に変わりつつある状況です。温帯低気圧に変わると進路予想図がなくなってしまうので、特に北日本では注意する期間の目安が途絶えてしまいます。これは、低気圧に変わると、一般的に中心から離れたところに強風域や降水域のピークが出現するため、進路予想図を目安にすることが不適切とされているからです。」
……なるほど。「温帯低気圧に変わりました」と言われて、「台風」じゃなくなったことに安心していると、なぜかどんどん暴風や大雨になっていったりして、あれ? 台風じゃなくなったはずなのになーと不思議に(不満に)感じることがありましたが……こういうことだったんですか。
また「CHAPTER2 予想が難しい気象現象」では、「太平洋側の大雪」の予報が難しいことの次の理由に納得しました。
「日本海側では大雪と予想されたのに何も降らないということはまずありません。日本海側の雪の要因は上空に流れ込む寒気なので、量や雪質などが違ったとしても高確率で雪は降ります。関東の大雪の主な要因は南岸低気圧で、低気圧が予想よりも陸地から離れた所を進んだ場合は、雨雲(雪雲)は海上を通過し、陸上は曇っただけで何も降ってこなかったということがあるのです。」
……なるほど。日本海側の大雪予想の場合は、太平洋側との間に「山」があることが多いので、必然的に陸上のどこかで雪が降ることになりますが、太平洋側の大雪予想の場合は、「海上で」降ってしまうことがあるんですね……。
そして「CHAPTER3 覚えておきたい防災キーワード」では、「キキクル」という聞きなれないワードがありましたが、これは「危険度分布」で、降った雨によって土砂災害・浸水・洪水(河川の水位)の危険がどのくらい高まっているかが、ひと目で分かる情報だそうです。雨による災害の危険度が地図上にリアルタイム表示されて、10分ごとに更新されるのだとか。
そしてこの「キキクル」の扱い方の注意として……
1)状況が悪化する前、明るいうちに避難をすませる
2)自分や周りの人の体調・状況に応じて所要時間に余裕を
3)土砂災害警戒区域にいたら、ただちに避難
4)大河川は遅れて状況が悪化する。天気回復後も注意
……などのことが書いてありました。
また「いざという時のラジオ」では、ラジオの天気予報を聞き取るコツについて、次のように書いてありました。
・「低気圧が発達」→風が強くなる
・「大気の状態が不安定」→天気の急変で雷雨あるかも
・「冬型」→日本海側と太平洋側で天気が分かれる
・「前線が停滞」「高気圧の圏内」→しばらく天気が変わらない
……こういう意味だったんですね。
『備え力がつく! 天気予報の見方聴き方』……実際に起こった台風などの気象災害の事例とともに、気象現象や気象情報について解説してくれる本で、とても参考になりました。みなさんも、ぜひ読んでみてください。
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『備え力がつく! 天気予報の見方聴き方』