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第1部 本

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高精度cm級GPS測位キット実験集(高須知二)

『高精度cm級GPS測位キット実験集: 標準GPSとは桁ちがい!自動運転から農業まで注目! (トライアルシリーズ)』2024/5/1
高須知二 (著), 岡本修 (著), 鈴木太郎 (著), 吉田紹一 (著), 高橋賢 (著)


(感想)
 cm級GPS測位は,標準GPSとは桁違いの精度があり、クルマやロボットの自動運転から農業、建築への利用まで期待が高まっています……cm級測位のしくみから、注目キットの実験まで総合的に詳しく解説してくれる本で、内容は次の通りです(なお本書は、トランジスタ技術の2022年1月号特集などをベースに加筆・再編集したものだそうです)。
第1部 cm級GPS衛星測位…実験のための基礎知識
第1章 ドンドン広がる実用化!高精度cm級GPS測位ワールド
第2章 cm級高精度のためのGPS/GNSS受信機
Appendix1 L1/L2/L5/L6と呼ばれるGNSS周波数帯の使い分け
第3章 測位性能を大きく左右するGNSSアンテナ入門
第2部 標準GPSとは別モノ…cm級測位の原理と「基準局」
第1章 標準的なGPSで位置が計算できるメカニズム
第2章 基準局によるcm級測位・基準局いらずのcm級測位
第3章 cm級のスタート地点…基本「RTK」GPS衛星測位
Appendix1 観測で得られる座標「今期」と地図の座標「元期」
第3部 はじめての「基準局いらず」…かんたんcm級測位CLAS
第1章「基準局いらず=単独」でかんたん!cm級衛星測位CLASのしくみ
第2章 cm級測位演算ソフトウェアCLASLIB入門
第3章 実際のcm級CLAS測位システムを見てみる
第4部 かんたんcm級衛星測位CLASキット実験
第1章 かんたんcm級衛星測位CLASキットmosaic入門
第2章 かんたんcm級衛星測位CLAS&3周波キット実験
第3章 みちびきCLAS信号対応300ドル受信機TAU1302キット
第4章 実測CLAS信号から仮想的な基準局データを計算
第5章 計算した仮想基準局データによるcm級RTK測位
第5部 cm級の基本RTK GPS測位ZED-F9Pキット実験
第1章 2周波RTK受信機ZED-F9P活用マニュアル
第2章 ラズパイと定番F9PキットでRTK基準局を作る
第6部 現実解!ネットでつなぐRTK測位入門
第1章 ケータイでつなぐ「基準局いらず」!ネットワーク型RTK測位のしくみ
第2章 M5Stackマイコン用F9Pキット…ネットワーク型RTK実験
第7部 別の基準局いらず…高精度測位MADOCA
第1章 みちびきが提供する高精度測位MADOCA入門
第2章 基準局いらず…みちびきのCLASとMADOCAの実力感
Appendix1 衛星測位をフルモデリング! 高精度測位MADOCA
第8部 高精度測位レベルアップ技術
第1章 性能を決める電波技術…マルチパスとその対策
第2章 自動運転のキモ…途切れないGPS測位
   *
 第1部の第1章には、高精度cm級GPS測位ワールドでは低価格化と高性能化が進んでいるとして、次の記述がありました。
「(前略)GNSS(注:Global Navigation Satellite System)を使って、数cmから数十cm程度の精度で受信機位置を求める高精度GNSS測位技術が開発され、改良されてきました。このうち、現在最も普及している測位方式がRTK(Real-time Kinematic)です。(中略)
 数年前からこれらの機器の低価格化が進み、例えば十年前に数百万円以上した受信機とほぼ同等の機能・性能をもったものが、現在では十万円前後で手に入るようになってきました。」
 ……実際に本書の最後のページでは、「センチメートル衛星評価測位キット」として12万円ぐらいのものが数種類紹介されていました。
 これからの高精度測位の3大方式には、次のものがあるそうです。
1)RTK:短時間で高い精度が得られるが基準局が必要
2)PPP:基準局不要なので世界中どこでも使えるが測位結果が収束するまで時間がかかる
3)PPP-RTK:PPPの収束時間を短く
   *
 この本は雑誌「トランジスタ技術」の記事をベースにしていて、専門家など「ガチ勢」向けなので、私のような素人には歯が立たない内容が多いと感じました(涙……なにしろ、そもそも「cm級GPS測位」や「GNSS」って何?レベルなのに、表紙の「電子工作」感に惹かれて、なんとなく読んでみただけだったので……)。(なおGPS以外の測位システムも含めた呼び方がGNSSで、GPSもGNSSの1つだそうです。)
 それでも「第2部 標準GPSとは別モノ…cm級測位の原理と「基準局」」では、基礎知識の解説もあって、とても勉強になりました。
 例えば、衛星測位の原理は……
「衛星測位は、衛星とユーザの間の距離を測ること(測距)で実現しています。そのために測位衛星が放送している電波を測距信号といいます。測距信号の中には、測位衛星が電波を放送した時刻の情報(tT)が含まれています。受信機は測距信号を受信した時刻(tR)と、測位衛星が電波を放送した時刻との差分を求めます。これに電波の速度=c(光速)を掛けると、測位衛星と受信機(アンテナ)間の距離が求まります。(後略)」
   *
 そしてGPSを構成する3要素は……
1)スペース・セグメント:24のGPS衛星
2)コントロール・セグメント:主管制局、監視局、地上管制局から構成、GPSシステムの管理・運用・制御
3)ユーザ・セグメント:GPS衛星からの信号を受信・処理する受信機
   *
 また単独測位の位置計算の流れは……
1)衛星・受信機間の距離を測定(測距)する
2)衛星の位置を計算する
3)衛星の時計誤差を計算する
4)衛星位置を中心とする複数の球の交点として受信機の位置を求める
   *
 そして本書で、「そんなに大変だったんだー」と驚かされたのが、「誤差の計算」。cm級測位は、誤差との戦いがとても重要なのでした。
 測位誤差の要因としては……
1)衛星起因の誤差:時計・軌道・信号バイアス(航法メッセージの一部として衛星ごとの補正パラメータが放送されているので、これらを用いて衛星の時計誤差修正値を求める)
2)大気起因の誤差:電離圏・対流圏(電離圏遅延は周波数に依存する傾向あり。対流圏では電波が屈折して遅延する)
3)受信環境起因の誤差:マルチパスと熱雑音(マルチパスは、衛星から放送された電波が建物などの障害物に反射して受信機のアンテナに入射する現象。熱雑音は受信機内部の回路の熱によるノイズ)
   *
 ……なにしろ、なんと「平均的なGNSS信号の受信強度は、わずか-130dBm程度」なのだとか!(携帯電話の信号はおよそ-80dBm)。それなのに途中でたくさんの誤差原因の影響を受けてしまうんですね……。GNSSの測位制度を高める技術としては、「他のセンサと複合する」とか「たくさんの衛星・たくさんの周波数を受信する」などの方法があるそうです。
「第8部 高精度測位レベルアップ技術」では、「測位は信頼性が重要」として……
「GNSSをアプリケーションに利用する際に重要なのは、測位精度の信頼性です。GNSSがトンネル内や遮蔽物が多く、衛星数が低下し信号が受信できない環境で使用できないのは自明であり、多くの場合GNSSはジャイロスコープや加速度計などの慣性センサや、カメラや地図などと複合して利用されます。」
 ……自動運転では、どんな場所でも高い測位精度を要求されるので、こんな工夫をしているんですね。ただ……自動運転が本格運用される時には、さらにトンネルなどの中に、位置情報を知らせる装置を設置するという工夫もするべきなのかもしれませんが……。
『高精度cm級GPS測位キット実験集』……cm級GPS測位の基礎知識から、価格が下がって手にいれやすくなった注目のキット(cm級衛星測位CLASキットmosaicなど)についても具体的に詳しく解説してくれる本でした。正直に言って、後半は、よく分からないまま斜め読みしてしまったのですが、cm級GPS測位について学べて、とても有意義だったと思います。
「cm級衛星測位CLASキットmosaic」には、ラズパイ対応のものもあるようなので、位置制御に興味のある方はもちろん、「ガチの電子工作勢」の方も、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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『高精度cm級GPS測位キット実験集』