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第1部 本

生物・進化

サピエンス前史(土屋健)

『サピエンス前史 脊椎動物の進化から人類に至る5億年の物語 (ブルーバックス)』2024/3/21
土屋 健 (著), 木村 由莉 (監修)


(感想)
 サカナの仲間から始まった脊椎動物の先祖が、どのように体を変え、新しい特徴と能力を手に入れ、サピエンスへ近づいてきたのかを分かりやすく解説してくれる「人類への大進化史」。主な内容は次の通りです。
・序章 最初からもっていた「眼」
・黎明の章(すべてが陸続きの時代/二つの肺の獲得で陸を目指す/耐乾燥卵で内陸に進出/爬虫類と分かれる/単弓類の進化/史上最大の大量絶滅)
・雌伏の章(毛をもつ/哺乳類の登場/聴覚の発達/子を産み、育てる/有胎盤類式繁殖法はいつから?/再び絶滅の危機)
・躍進の章(哺乳類時代の始まり/脳より先に体を大きくする/長い妊娠期間と大きな胎児/アフリカの仲間と分かれる/ローラシアの仲間と分かれる/森林での進化)
・人類の章(真の「猿の惑星」/森から平野へ/尾の消失と二足歩行/氷河時代の始まり/サピエンス以前のホモ属/サピエンスと生きたホモ属)
   *
 最後の「人類の章」に、本書の概要が「サピエンスに至る旅路」にまとめてあったので、ちょっと長いですが、その一部を紹介します。
「私たちホモ・サピエンスは、二つの眼をもっている(第1の特徴)。これは古生代カンブリア紀の祖先から連綿と維持してきた特徴だ。約5億年前のまったく姿かたちのちがう祖先から始まり、一つ一つ特徴を獲得してきたのだ。
 歯や顎は、シルル紀には備えていた可能性がある(第2、第3の特徴)。
 四肢と指をもち、二つの肺は、デボン紀に獲得されたとみられている(第4~第9の特徴)。
 母胎内で胎児を包む羊膜は、遅くても石炭紀には獲得された(第10、第11の特徴)。
 その後、頭骨の側面にそれぞれ一つの穴が空き、脊椎は部位ごとに異なる形となり、四肢は胴体の真下に伸びるようになった。そして、横隔膜や汗腺、異歯性を備え、性的ディスプレイを始めていた可能性がある(第12~第18の特徴)。(中略)
 遅くても新生代のはじまりには胎盤をもつようになった(第36の特徴)。大型化も本格化する(第37の特徴)。大脳新皮質が獲得され、のちの脳の発達の“礎”が築かれた(第38の特徴)。
 両眼は正面を向き、吻部は短くなり、切歯と犬歯が密着するようになった。色覚は3色対応となり、手足の把握能力が向上した(第39~第46の特徴)。(中略)
 人類進化の段になり、犬歯が小さくなり、臼歯は咬頭が低くなり、エナメル質が厚くなる。大後頭孔が頭蓋骨の下を向くことで、頭部の下に首が配置されるようになり、また、大腿骨は二足歩行時の荷重に耐えられるつくりとなった(第53~第55の特徴)。
 背骨はS字に連なり、腰の骨が横方向に幅広になり、足指の関節が上向きに曲がるようになるなど、着々と“二足歩行化”が進んでいく(第56~第58の特徴)。(中略)
 この頃から、脳の容積は急激に増加する。「脳のルビコン」を超えたのだ(第67の特徴)。
 産道が広くなり、回旋分娩が一般化する(第68の特徴)。長距離歩行能力と、耐乾燥性(第69の特徴)を手に入れて、分布域は世界に広がった。
 その過程で、ホモ・ネアンデルターレンシスやデニソワ人などと交雑が進んだ。交雑の中で、ある遺伝子は取り込まれ、ある遺伝子は取り込まれなかった。
 多くの人類が姿を消していく中で、ホモ・サピエンスが生き残った要因として、高い繁殖能力(第70の特徴)があった可能性が指摘されている。(後略)」
   *
 まさに『サピエンス前史 脊椎動物の進化から人類に至る5億年の物語』。私たちヒトが、どのように進化してきたのかを、古生代カンブリア紀の「顎のないサカナ」の時代から始めてくれます。その頃、すでに「眼」があったんですね……脳の中で「視覚」が大きな領域を占めているのは、当然のことなのでしょう。
 全体を通して、とても勉強になる本でした。しかも、すごく学びやすい構成になっています。各章の終わりには必ず「その章の総まとめ」が書いてあるので、そこまでの復習が出来て、最後の章には、ここで紹介した「総まとめ(サピエンスに至る旅路)」があるのです。
 ……なるほど、人類は、脊椎動物がこんなにも長い時間をかけて、徐々に着実に進化してきた末に生まれたんだなーということが実感できました。
 しかも巻末には「脊椎動物のホモ・サピエンスに至る道」として、それまで挿絵のイラストとして使われてきた太古の生物の想像図も一覧表示されているので、画像としての復習も出来てしまいます。二人のサイエンス・ライターの、傑出した力量のおかげですね☆
『サピエンス前史 脊椎動物の進化から人類に至る5億年の物語』。生物や人類に興味のある方は、ぜひ読んでみてください。お勧めです☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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『サピエンス前史』