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第1部 本
生物・進化
恐竜たちが見ていた世界(土屋健)
『恐竜たちが見ていた世界―悠久なる時をかけてよみがえる18の物語』2023/10/14
土屋 健 (著), 河部 壮一郎 (その他), 田中 源吾 (その他), ツク之助 (イラスト)
(感想)
遥か昔に絶滅した古生物たちが見ていた世界とは、どんなものだったのか? どのように環境を利用し、生活を営んでいたのか? ……古生物たちの目線に立って、かれらの世界を描き出す、古生物版の「シートン動物記」。主な内容は次の通りです。
第1幕 古無脊椎動物が見ていた世界
Story01 海底の楽園・かつて、世界は平和であふれていた
Story02 最初の覇者たちが見た景色・カンブリア紀の覇者
Story03 地中も安全とは限らない・“探知の狩り”のはじまり
Story04 洗練された泳ぎ・「古い」は「悪い」じゃない
Story05 みんな一緒・1列で並ぶ化石
Story06 煌々と輝く海の中で……・縦に並んだ複眼
Story07 三葉虫のさまざまな生き様・多用な形が物語る
Story08 狩るのはいつか? ・さまざまな複眼のウミサソリ類
Story09 大きな眼の“暗殺者”・謎の動物も、複眼からわかる
Story10 ジュラ紀の夜の音色・ジュラ紀の森で聞こえた音
第2幕 古脊椎動物が見ていた世界
Story11 早起きは三文の得・寒冷期の狩人
Story12 長い首なのに?・常に下を向く独特の平衡感覚
Story13 鼻先で獲物を探す・吻部先端の圧力センサー
Story14 闇夜に虫を狩る・恐竜にもいた、フクロウのような生態
Story15 高音の子、低音の親・音を出す恐竜
Story16 走るのは苦手・走るのは苦手だった角竜
Story17 帝王の子育ては、顎先で・発達した神経
Story18 恐竜時代のウタ・鳥類はいつからウタでコミュニケーションをしたのか
「はじめに」には次のように書いてありました。
「古生物は、化石となって、その姿を現在に伝えています。(中略)
動かないので、古生物がどのように生きていたのかを、私たちは「観察する」ことができません。」
「古生物の行動を推測する手がかりは、大きく分けるとふたつあります。ひとつは、足跡や巣穴などの化石を分析すること。もうひとつは、その“能力”を調べることです。(中略)
この本ではそうした古生物の“能力”に着目し、推測し、古生物たちの物語を綴ってみました。」
……なるほど。生痕化石や、古生物の化石の形から推定できる能力を手がかりに、生きているときの姿を想像して物語にしてみた、ということのようです。
この本では、各時代に生きていた生物それぞれについて、まずその生きざまを物語にしたもの(イラスト付き)があって、次にその簡単な解説があります。
たとえば「Story01 海底の楽園」では、エディアカラ紀(約6億3500万年前~)の平和な世界で、のんびり生きているエルニエッタ、ディッキンソニア、キンベレラなどが描かれていました。
そして続く解説では……
「エディアカラ紀生物群の生物たちの多くは、動物だったようです。彼らには、いくつもの特徴がありました。
まず、「ひれ」や「あし」といった移動手段をもっていません。そのため、素早く動くことは、おそらく苦手だったとみられています。
そして、“攻撃のための武器”をもたない種がほとんどです。獲物を切り裂くための鋭い爪、噛み砕くための歯といった武装を備えていません。」
……など、その化石や生痕化石から、どのようなことが想像できるかが書いてあるのです。古代の生物の生き方を、こうやって科学的に推定しているんだーということが分かって、とても興味津々でした。
続くStory02のカンブリア紀になると、武器を持つ生物たちが生まれ、本格的な生存競争が始まったようです。
「カンブリア紀が始まると、ひれやあし、トゲやハサミや歯のようなつくり、顎のようなつくり、殻のように硬い組織などをもつ種が一気に増えました。」
この後は、複眼レンズの数や、神経と見られる構造、頭部の大きさなどを手がかりに、さまざまな生物の、さまざまな生態が語られていきます。
とても面白かったのが、「Story10 ジュラ紀の夜の音色」。なんとジュラ紀には、昆虫類が、翅と翅を高速擦り合わせして鳴いていたようなのです。次のように書いてありました。
「平和な石炭紀の森で、昆虫類はおおいに繁栄したのです。
そして、この頃からすでに、昆虫類は鳴いていたとみられています。キリギリスに似た風貌をもつオオバッタ類の化石が発見されており、現生のバッタ類の化石との比較から、弾けるような音を出していたことが知られています。」
……ジュラ紀の夜の音が聞こえてきそうで、わくわくしますね☆
そして「第2幕 古脊椎動物が見ていた世界」からは、いよいよ恐竜がたくさん出てきます。
「Story15 高音の子、低音の親」には、音を出す恐竜(パラサウロロフス)が出てきました。パラサウロロフスのトサカの内部は空洞になっていて、その空洞が鼻腔とつながっていることから、空洞に空気を送り込むことで、低い音を出せたと考えられているのだとか! 恐竜というと、のしのし地面を踏みしめる音のイメージはありましたが、低音を響かせていた恐竜もいたんですね……どんな音だったんでしょう……。
この他にも、ティラノサウルスは顎先の神経が発達していて、巣作りや育児に下顎を使っていた可能性があるなど、興味津々な内容がたくさんありました。
『恐竜たちが見ていた世界―悠久なる時をかけてよみがえる18の物語』……学術書というよりは、絵本風の本で、文字も大きく、楽しくどんどん読み進められる本でした。18の物語すべては、古生物学者の協力を得て科学的根拠に基づいて構成されているので、想像だけでは到達できない奥深い内容になっているそうです。古生物や恐竜が好きな方は、ぜひ一度読んでみてください。
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『恐竜たちが見ていた世界』