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第1部 本

天文・宇宙・時空

宇宙災害(片岡龍峰)

『宇宙災害:太陽と共に生きるということ (DOJIN選書)』2016/11/30
片岡 龍峰 (著)


(感想)
 通信障害、衛星墜落、世界停電などの事例から「宇宙災害」とは何かを教えてくれる他、地球と宇宙のつながりを理解する研究の様子を、現場での体験と共に紹介してくれる本で、主な内容は次の通りです(なお冒頭には4ページの美しいカラー写真もあり、2015年に北海道で撮影されたオーロラの写真などを見ることもできます。)
第1章 宇宙災害(通信途絶/衛星墜落/デブリ事故/ほか)
第2章 大地から太陽系の果てまで(第一の槍:宇宙塵/第二の槍:紫外線/第三の槍:宇宙線/ほか)
第3章 宇宙天気予報(太陽に邪魔された実験/宇宙天気予報の現場へ/宇宙の寒冷前線と台風/ほか)
第4章 宇宙と生命(動物と磁場/マウンダー極小期と魔女狩り/大量絶滅/ほか)
第5章 宇宙利用(宇宙就活/スペースデブリの撃墜/月面基地/ほか)
   *
「第1章 宇宙災害」では、核戦争につながる危険すらあった通信途絶(1967年、アラスカ、グリーンランド、イギリスに配置された空軍の弾道ミサイル警報システムのレーダー3つすべての原因不明の機能停止)の事例や、2013年、ロシアのチェリャビンスクで20メートル級の隕石が大気に突入した事例などが紹介されていました。
 驚いたのが、人工衛星どうしの衝突事故の事例で、2009年、アメリカの商用衛星通信システムを構成する衛星<イリジウム33>が、運用を停止していたロシアの通信衛星<コスモス2251>と衝突した宇宙災害があったとか!……そうだったんだ……。
 また最も勉強になったのが、「第2章 大地から太陽系の果てまで」。ここでは、生命に悪い影響を及ぼす三つの槍(宇宙塵、紫外線、宇宙線)と、これらの攻撃から私たちを守る三つの盾(大気、磁気圏、太陽風)について詳しく知ることが出来ました。
 太陽フレアなどで電離圏の電子密度が大きく変わると通信途絶が起こるとか、オーロラ電子の影響で成層圏オゾンが一割程度破壊されているとか、興味津々な話題が多かったのですが、次のような文章も……
「(前略)真っ暗な近場の宇宙空間というのは、基本的には何もない真空だ、という世界観からは、私たち人間は五十年ほど前に脱出した。そこには、風のようなプラズマがあり、流しそうめん的な磁場があった。その空間の中で、宇宙線という荷電粒子が飛び交い、宇宙塵というダストが舞っているのである。」
 ……プラズマや磁場、宇宙線は知っていましたが……宇宙塵の量には驚かされました。なんと宇宙塵の「正体は、太陽系をめぐる天体の欠片で、毎日一〇〇トンというペースで地球に降り注いでいる」そうです! 宇宙は真っ暗で真空……という私が抱いていたイメージは、五〇年以上古いものだったんですね……。
 この他にも、太陽風やオーロラに関して……
・「太陽風と地磁気の相互作用が、磁気圏と電離圏を接続する立体的な電流回路を生み出し、その電流を受け止めた大気が発光するのがオーロラである。この電流を運ぶ電子の一部は、宇宙空間を飛ぶ人工衛星に当たり帯電事故を引き起こし、また一部は磁気圏の深みに入り込んで放射線帯を構成する素になる。このオーロラ電流による激しい磁場の変化は、地上の変電所をダウンさせる。このオーロラの電流が大気を加熱し、膨れ上がった大気との摩擦で人工衛星が墜落する。」
・「オーロラの活動と連動する磁気嵐や放射線帯は、太陽から地球に吹きつける太陽風の性質、つまり太陽風の磁場とスピードによって大きく変化している。(中略)
 太陽活動の基本リズムは、太陽の黒点の数が増えたり減ったりを約11年ごとに繰り返す、「11年周期」というものである。黒点が一番多い年は「極大期」、少ない年は「極小期」と呼ばれる。(中略)
X線や紫外線は、太陽黒点と同じリズムで、11年周期で増えたり減ったりを繰り返す、地球の大気も、これに応じて11年周期で、宇宙に膨らんだり、戻ったりを繰り返している。膨らむとき、つまり極大期には、デブリと大気の摩擦が大きくなり、自然に大気へ落とす効果を生むのだ。(中略)
 もっともトリッキーなのは、太陽風のスピードが最大になるのは極大期から数年後になる、ということだろう。」
 などのことを学べました。
 そして最後の「第5章 宇宙利用」では、たいていの宇宙船を破壊する威力がある10センチのデブリを撃墜するという次のような方法が紹介されていました。
「原理はシンプルだ。宇宙ステーションに搭載したEUSO望遠鏡とレーザーによって即座にデブリの位置と動きを特定し、五〇〇キロワットという高出力のレーザーをデブリに当てて減速させることで大気に落とす。一〇〇キロ離れた場所から一〇秒程度の照射で一〇センチサイズのスペースデブリまで大気に再突入させることができ、五年の運用で大部分のスペースデブリが除去できるという。最大の問題は、その原理や実現性ではなく、予算らしい。」
 ……危険なスペースデブリを除去できるなら素晴らしいですね☆
 地球を取り巻く宇宙空間について、さまざまな観点から解説してくれる本でした。「第3章 宇宙天気予報」では、片岡さん自身が体験してきた宇宙天気予報の研究の現場について詳しく紹介してくれているので、宇宙に関する仕事をしたいと考えている方の参考にもなると思います。宇宙や科学に関心のある方は、ぜひ読んでみてください☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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『宇宙災害』